W杯ブラジル大会、1次リーグF組アルゼンチンとボスニア・ヘルツェゴビナの試合は、2対1でアルゼンチンが勝利した。追加点を挙げたのはエースのリオネル・メッシだ。彼のスーパープレーに、一瞬「何が起こったか分からない」感覚を覚えた視聴者も多いことだろう。
フィールド上の選手の位置や速度をリアルタイムで視覚的に把握できれば、よりサッカーを楽しめるはず。実はイタリアのベンチャー企業が、サービスの開発に取り組んでいる。その名もズバリ「MESSI」(メッシ)だ。
「メッシ」は「Monitoring Evolution with Soccer Satnav Innovation」(M.E.S.S.I.)の略。「Satnav」は「Satellite Navigation」を意味する。要は衛星測位技術を応用した、サッカー選手のモニタリングサービスだ。
開発したのはイタリアのスペースエクゼ社。メンバーは10人程度のベンチャー企業だが、2012年の欧州宇宙機関(ESA)特別賞でファイナリストになり、2013年の欧州衛星測位大会(ESNC 2013)でも入賞している。
「メッシ」は選手のすね当てに衛星測位ユニットやバッテリーを組み込み、専用の衛星受信機で選手の動きを把握、モニター上に可視化する仕組み。ユニット自体は500円玉程度のサイズで、すね当ては防水加工されており丸洗いも可能だ。
計測できるのは、選手のスピードや移動距離、試合中にどのポジションに最も多く位置していたか、といった情報。これを使えば、例えばどの選手のパフォーマンスがどれくらい落ちているかも一目瞭然だ。
同様のシステムは、実はすでにミランやエバートン、リバプール、バルセロナといったクラブチームで導入されている。
しかし、伊スペースエクゼ社のコラード・チェルヴェラーティ氏は「私たちの製品ならリアルタイムに分析できるし、小型で精度も高い。競合他社は5mの範囲しか計測できないが、『メッシ』なら約50cmまで測定できる」と話す。将来的には、欧州が運用予定の測位衛星「ガリレオ」と「イグノス」を使い、誤差30cm以内の測位精度を目指すという。
課題はバッテリー性能だ。「現状で3時間しかもたないので、サッカーで試合前からセットアップするには心許ない。まずはクラブチームでの練習で使うよう、トレーナーなどに売り込むつもりだ」(チェルヴェラーティ氏)。すでにローマとラツィオでのトレーニングに導入されており、セリエBでも実証実験中だ。
「日本市場にも興味がある。実際、日本のサッカーはものすごく伸びているしね」(チェルヴェラーティ氏)
現在はB to B向けのサービスだが、いずれB to C市場にも参入したいとチェルヴェラーティ氏は意気込みを見せる。いつの日か我々のスマホやタブレットに試合中の選手の情報がリアルタイムストリーミングされる日が来るかもしれない。