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山谷剛史の「アジアIT小話」 第42回

黒歴史となるか? 中国でGoogleが受けた仕打ち

2013年03月05日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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「もう我慢できない」とフィルタリングを解除

 雲行きが怪しくなったのは2009年だ。6月に中国当局は「Googleがわいせつな画像を流している」として処罰。さらに国営テレビ「中央電視台」の権威あるゴールデンタイムのニュース「新聞聯播」「焦点訪淡」の2番組がそれを非難した。

 このニュースの後、GmailやPicasaなど海外のGoogleのサービスが利用できなくなる。この番組放映1週間前から北京から普段の60倍のポルノ的な検索ワードが集中的に入力されたことが判明して物議となった(谷歌渉黄事件)。

 翌2010年1月、Googleは大きな方針転換となる「A new approach to China」をオフィシャルブログで発表。2009年12月から人権運動家のGmailアカウントをハッキングしようとする動きと、Twitter、Facebook、YouTube、Bloggerなどへのアクセス禁止などの中国の動きにもう我慢できないとし、フィルタリングを解除した。

 中国本土の検索サーバーを停止し、現状のGoogle中国同様、香港での検索サーバーに誘導するサイトとなった。このとき、古くからGoogleを使い続けている中国のユーザーは中国政府を暗に非難。特にヘビーユーザーが集中する中関村ではGoogle中国総本部ビルに献花する行動が見られた。

ついにサービスを続々と終了
そんな中で発売される会長著書

 2012年6月からは、検索サービスでどういう検索ワードを入れると検索できなくなるかというのを丁寧に提示する機能を追加した(たとえば「江東区」と入れると「江」が問題だと表示する)。

 中国メディアはGoogleを敵扱いするような記事を並べ、さらに同年5月には「GoogleEarthが国家の軍事秘密を漏洩しているのではないか」というネット世論を紹介し、多くのネットユーザーが非難しているという番組を前述の「焦点訪淡」で放映した(後日、ひとりで何役もネットユーザーをこなし、非難したという内部告発があった)。

 Googleはこの年より地場サイトと提携したサービスを次々に終了させていく。音楽サービスも終了した。

 また検索サービスが終了したことから、Googleに出稿している中国の広告主とのトラブルが増加。GoogleMapやGoogleEarthなどの地図サービスは許可証がないので運営できないと連日圧力をかけるニュースが報じられた(現在まだ利用できる)。代わりに中国政府からは「天地図」というGoogleEarthによく似たサービスがリリースされた(関連記事)。

 Androidに関しては、搭載製品が中国でリリースされているが、冒頭で書いた通りGooglePlayやGmailなど、Googleのサービスは入っていない。Googleアカウントを作ることなく中国製サービスのみで不自由ない利用が可能であり、「阿里雲OS」などGoogleアカウントを一切利用しないOSのAndroid非互換端末もリリースされている。

 そしてGoogleは、ACERなどのOHA(Androidの開発・推進を目的としたアライアンス)メンバーに働きかけ、Android非互換端末の販売中止を要求した。

 以上、ざっと振り返ってみた。シュミット会長の著書で、どういったことがさらに明るみになるのか、興味は尽きない。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。書籍では「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)を執筆。最新著作は「日本人が知らない中国インターネット市場[2011.11-2012.10] 現地発ITジャーナリストが報告する5億人市場の真実」(インプレスR&D)。

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