デジタルマーケティングの国際カンファレンス「ad:tech Tokyo 2012」が10月30日、東京国際フォーラムで開幕した。初日のキーノートには、米フェイスブックのグローバル・クリエイティブ・ソリューション・ディレクターであるマーク・ダーシー氏が登壇。Facebookを使ったこれからのデジタルマーケティングのあり方について語った。
すべてのビジネスはローカルビジネスへ
月間利用者が10億人を超え、毎日3億枚もの写真がアップロードされているFacebook。いまや超巨大なプラットフォームに成長したFacebookだが、当初のコンセプトは「現実社会の不変的な人間の営みをWebに持ち込む」というシンプルなものだった。
「Facebookは複雑だと言われるが、『あいさつをする』『会話を交わす』といった行為は人間社会そのもの。本来の自分の姿のままオンラインでつながれる場がFacebookの考え方だ」(ダーシー氏)
だが、国境のない大規模な「社会」をWeb上に作ることで、Facebookは企業と消費者との関係に大きな変化を与えた。企業と消費者とを対等の立場で結ぶ双方向のコミュニケーションプラットフォーム――それもキャンペーンのような一時的な場ではなく、継続的な関係を築く場としての役割をFacebookが担うようになっている。
ダーシー氏は「すべてのビジネスの基本はローカルビジネスだ」と語る。近所のレストランや本屋を選ぶのはオーナーを知っているからであり、彼らとのつながりを感じられるからだという。「Facebookではローカルビジネスの考え方が生きてくる。どんなに大きな企業であっても、個人と同じ土俵でつながるソーシャルメディアでは、個人1人ひとりのニーズになるべく応えていく、考え方の大転換が必要だ」
マーケティングの手法もFacebookでは大きく変わる。長年、広告の役割はキャンペーンを実施して瞬発的に注目を集めることだったが、これからは継続が重要であり、人々がつながっていくことに価値が生まれる。広告のクリエイティブもライトウェイトなものへと変化していくという。
「クリエイターは複雑なものを好み、長いストーリーを経て効果が上がると考えているが、消費者は忙しく、私たちが期待するほどクリエイティブを見てくれない。クリエイターは自分たちだけでなく、消費者の時間の価値も尊重するべきだ」
Facebookマーケティングで大切な6つのこと
Facebookはもともとリアルの人たちと実名でつながるための場であり、企業のために用意されたわけではない。ダーシー氏はFacebookで消費者と対話したいマーケターやクリエイターに対して、「なぜ対話に参加する資格があるのか? 何を貢献できるのか? 慎重に問いかけることが大切だ」という。その上で、次の6つのことを心がけるべきだと話した。
- 1.本心(オーセンティック)であること
- もっとも大事なことだ。言っていることとやっていることが企業は嫌われる。人々は嘘が嫌いなのだ。多くの人がつながっているFacebookの世界では嘘はすぐにばれる。たとえば、環境問題に対して特別な想いを持っていない企業であれば、何も語るべきではないだろう。
- 2.役立つものであること
- これまでの広告では長いストーリーを作って「なぜこのブランドがあなたの役に立つのか?」と訴えてきた。だがFacebookでは言葉を使うよりも道具を提供することで行動を示せる。ユーザーにとって便利なアプリを作ってソーシャルと組み合わせれば、強力なストーリーエンジンになるだろう。
- 3.おもしろいこと
- どんなにがんばって戦略を考えても、おもしろみがなければ誰も見てくれない。説得力のある写真、ストーリー、ウィットがあってこそユーザーは共有したくなるものだ。
- 4.関連があること
- 関連性がなければリターンは期待できない。ターゲットとする特定の人たちに対して適切なメッセージを伝えることで彼らとの濃密な関係を作れる。米ウォルマートは店舗ごとのFacebookページを作り、「My Local Walmart」というアプリで統合している。
- 5.タイムリーであること
- Facebookは24時間365日動いているメディアだ。「リアルタイム」が重要なキーワードになる。1週間後に話すのではなくいま投稿して参加してもらうことが大切だ。
- 6.聞くこと
- Facebookが提供できるもっともパワフルな能力だ。一方的に話すのではなく耳を傾けること。メモをとるのではなくアクションをとること。米フリトリーのポテトチップスブランド「Lay’s」はFacebookで新しいフレーバーを募集し、100万人から300万ものフレーバーが寄せられた。
ダーシー氏はFacebookを活用するマーケターに「共有する前に次の2つの質問を自身に投げかけてほしい」と話す。
「なぜそれに関心を持つのか? なぜそれを共有するのか? この方程式だけは外してはいけない」