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SPBの最新動向をアバイア担当者に聞く

Ethernetをクラウド時代でも!SPBの存在意義とは?

2011年11月29日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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VLANやSTP(Spanning Tree Protocol)などの技術的な限界を克服し、高い拡張性と耐障害性を実現するのがSPB(Shortest Path Bridging)だ。SPBの標準化にも携わっているアバイアのスイッチ製品の担当者に、SPBの最新動向を聞いた。

SPBの魅力はシンプルさと拡張性

 SPBはL2レベルでマルチパスを実現するための技術。経路が複数ある場合は、自動的に負荷分散して、フレームを転送するため、高い可用性と拡張性を持つ。従来Ethernetで経路の冗長化を司ってきたSTPを用いずとも、Ethernetをメッシュ型ネットワークとして利用できるため、特にデータセンターのファブリック構築において基盤的なプロトコルになると言われている。このSPBをネットワーク仮想化技術「VENA(Virtual Enterprise Network Architecture)」として取り込んでいるのが、アバイアである。

米アバイア イーサネットスイッチ製品群 プロダクトライン・マネジメント総責任者 ポール・アンベヘイゲン氏

 アバイアでスイッチ製品を担当し、自身もSPBの共同発明者であるポール・アンベヘイゲン氏は、SPBの魅力を「シンプルさと拡張性」と表現する。今までMPLSと複数のプロトコルを組み合わせないと実現できなかったマルチパスネットワークを容易に構築できる。また、エッジからコアまでVLAN設定を行なう必要もなく、設定も1ヶ所でOKだ。「SPBにより、今後20年に渡ってEthernetを活用するための拡張性と耐障害性を得ることになる。また、どれだけノードが増えてもシンプルな管理をキープできる」(アンベヘイゲン氏)。サービスIDも最大1600万までふれるので、拡張性もきわめて高い。同氏はリンク数の増加に沿って、VLAN、SMLT、SPBなどの設定にどれだけ時間がかかるかというグラフを挙げ、SPBではシンプルさをきちんと維持できる点を強調した。

リンク数とプロビジョニングの工数をVLAN、SMLT、SPBで比較したグラフ

 SPBは、すでに相互接続テストも4回目を終了し、十分実用レベルに至っていると説明する。「4回目のテストは弊社に加え、アルカテル・ルーセント、ファーウェイ、ソラナネットワークス、スピレントなどのベンダーが参加した。200ノード、400リンクという大規模なベンダーネットワークを想定し、エミュレーションだけではなく、実トラフィックも流してみた」(アンベヘイゲン氏)とのこと。この環境で、仮想マシンのVMotionを動作させたり、既存のツールでトラブルシューティングを行なったり、Ethernet管理機能であるOAMを動作させたり、かなりハイレベルな検証が実現したという。

 また標準化作業は、IEEEではIEEE802.1aq最終投票が完了し、IETFでもRFC6329が割り当てられているとのこと。両者のドキュメントは相互に反映され、同期されており、検証でも矛盾がないという。

ネットワーク仮想化の進化はまだ続く

 SPBのような試みは、ここ数年で始まったわけではない。「IEEEはこの20年かけてネットワークの仮想化に取り組んできた。最初はVLANで、次にQinQ、そしてMAC in MAC。そしてSPBでEthernetのコントロールをよりうまくできるようにしている」(アンベヘイゲン氏)。この後には、仮想化対応を強化したIEEE802.1QbgといわれるEdge Virtual Bridgingも控えており、データセンターのネットワークはますます進化するという。

VLANをはじめとするネットワーク仮想化のプロトコル

 一方、アバイアのVENAはSPBをベースに、同社ならではのイノベーションを追加したアーキテクチャという位置づけだ。「アプリケーションインフラを作るため、お客様はネットワークを仮想化したいと考えている。その点、VENAでは1つの物理インフラで、異なるL2/L3の仮想ネットワークを構築できる」(アンベヘイゲン氏)。また、レイヤ3との親和性も高く、SPBのインフラ上に仮想ルーティング環境を構築し、他のネットワークに対しても、容易に拡張できる。通信事業者やISPならず、エンタープライズ環境でも大きなメリットがある技術ということで、今後も対応製品を増やしていく予定だ。

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