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Windows Azureとクラウド対応CMSを活用して2.5ヵ月で実現!

被災地をパノラマ写真で再現したMSN産経フォトの裏側

2011年05月02日 12時00分更新

文● ASCII.jp編集部

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 それまでの常識を覆すほどの大災害――東日本大震災から1ヵ月半が過ぎても、その爪痕は今も生々しく残っている。そんな現地の様子を数多くの写真とコメント、さらに360度のパノラマ写真で再現したサイト「MSN産経フォト」が、国内外から注目を集めている。

MSN産経フォトのトップページ

MSN産経フォトのトップページ

Microsoft Platform Readyのイベント

Microsoft Platform Readyのイベント開催当日の様子

 MSN産経フォトがオープンしたのは1月17日。その開発は2010年後半に着手し、実際のサイト制作期間はわずか2ヵ月半でオープンまでこぎつけたという。豊富な写真を関連付けて見せるインターフェースや読者投稿型サービスなどが口づてに話題に登り、3月の月間ページビューは1200万を超える急成長を遂げた。

 その猛烈に早い開発スピードと急成長を支えたのは、産経新聞が日々の取材で集めてくる豊富な報道写真やニュースソースに加えて、Windows Azureとクラウド対応CMS「Sitecore CMS」が大きな役割を果たしたという。今回その裏側を紹介するMicrosoft Platform Readyのイベントが開催されたので、レポートしよう。

MSN産経フォトって?

産経新聞社の写真報道局部次長の後藤徹二氏

産経新聞社の写真報道局部次長の後藤徹二氏

 そもそも、MSN産経フォトがどうして始まった(サイトリニューアルした)のか。「毎日3000枚以上入電してくる写真の中から優れた写真を抽出しているが、新聞ではスペースが限られ、使われなかった写真が数多くある。そんな写真の中にも読者に伝えたい思いは込められている。なんとかうまく見せるアイデアを具現化したかった」と、産経新聞社の写真報道局部次長の後藤徹二氏は経緯を語る。

 さらにデジカメや一眼レフカメラの普及で、写真好きなアマチュアカメラマンの腕も目を見張るほどになり、そんなハイアマチュアやカメラ女子が自分たちの思いを伝える場を提供する「ユーザー投稿コーナー」も併せて実現するべく、サイトの開発はスタートした。

写真中心の報道サイトを2.5ヵ月の短納期で実現

産経新聞社と産経デジタル、マイクロソフトの三社で写真中心の報道サイトを手がけ、2.5ヵ月の短納期で実現したという

 といっても、産経新聞社には報道やカメラのプロフェッショナルこそ多くてもサイト運営やインターネットの扱いに関しては素人ばかり。そこでマイクロソフトと産経デジタル、産経新聞社の三社が、Windows Azureをベースにサイト構築を始めたのが2010年も押し迫った頃。

カテゴリーや撮影者で写真を絞り込める“万華鏡”サービス

pivotテクノロジーとSilverlightにより、カテゴリーや撮影者で写真を絞り込める“万華鏡”サービス

 そこから、クラウド対応のCMSパッケージ(Sitecore CMS)を採用して、サイト設計やパソコン操作に疎い記者、カメラマンでも容易に記事の登録や編集ができるようUIを開発するためにシグマコンサルティングの手を借りた。その結果、2011年が開けてまもない1月17日にはサイトがオープン。豊富な写真をテーマやキーワードで絞り込みながら関連する写真をまとめて閲覧できるサービス“万華鏡”(pivotテクノロジーを使用)により、マウスの左クリックだけで次々に写真と関連する記事を眺められる読者に使いやすいインターフェースが実現した。

3月11日の大震災後

3月11日の大震災後は、報道カメラマンが多数現地入りして、今も連日写真や情報を報じている

 そして3月11日の大震災発生後、東京と大阪から40人体制でカメラマンが現地に入り、その想像以上に激しい津波や地震の傷跡や現地での救出活動の様子が、写真と記事によって次々にMSN産経フォトへ登録されていった。中でも注目を集めたのがパノラマ写真だ。産経デジタルでは2年以上前から400本以上のパノラマコンテンツを掲載してきた。360度一周ぶんの景色を20枚の写真で撮影してソフトウェアで組み合わせたり、魚眼レンズで前後左右上下の6枚の映像を組み合わせて足下から真上まで、その場にいるような景色を再現する。

国内のみならず海外からの高い評価を得た“パノラマ写真館”。マウスのドラッグで360度見渡すことができ、現地の様子が単なる写真以上に伝わってくる

 このパノラマ写真によって被災地の様子が手に取るように伝わり、国内のみならず米国MSNBCやシンガポール、ドイツ、インドなど各国のMSNでも紹介され、未曾有の大災害を世界中に知らせることになった。

 (次ページ「Windows Azureとクラウド対応CMSを使うメリットとは?」に続く)

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