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ソニー、2005年度経営方針説明会を開催――エレクトロニクス事業の復活に注力し、カンパニー制を廃止。人員削減は全世界で1万人

2005年09月22日 20時57分更新

文● 編集部 小西利明

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経営再建策についての説明を行なう、ソニー 代表執行役会長兼CEOのハワード・ストリンガー氏(中央) “Sony United”と記された、ソニーと有力グループ企業。全グループをあげてソニー再生に取り組む
経営再建策についての説明を行なう、ソニー 代表執行役会長兼CEOのハワード・ストリンガー氏(中央)“Sony United”と記された、ソニーと有力グループ企業。全グループをあげてソニー再生に取り組む

ソニー(株)は22日、東京都内のホテルにて“2005年度 ソニーグループ経営方針説明会”を開催した。2005年度から2007年度にかけての中期経営方針により、コア事業であるエレクトロニクス事業の復活に向けて、社内カンパニー制の廃止やエレクトロニクス事業を担当するエレクトロニクスCEOの権限強化を行なう。また2007年度末までに2000億円のコスト削減、1200億円の資産売却を行なうとともに、15カテゴリーの不採算事業の整理、国内外で1万人の人員削減、生産拠点を11ヵ所削減などのリストラも行なう。これらの改革により、2007年度にはグループの連結営業利益率5%(エレクトロニクス部門は4%)、連結売上高8兆円以上を目指す。

再生プランで示された、ソニーの3つのコア事業。特にエレクトロニクス事業の復活が重点課題である
再生プランで示された、ソニーの3つのコア事業。特にエレクトロニクス事業の復活が重点課題である

ソニー再生を託されて今年6月に同社代表執行役会長兼CEOに就任したハワード・ストリンガー(Howard Stringer)氏の掲げる、ソニー再生のプランがついに示された。その骨子は“エレクトロニクス、ゲーム、映画/音楽などのエンターテインメントの、3つのコア事業に集中すること”と、“縦割り体質を解消し、事業本部ごとの横断的連携の強化”にある。ストリンガー氏は説明の中で、まずソニーグループの強み(エレクトロニクス業界をリード、ゲームや映画事業などでは世界一位)や、「エクセレンスなもの以外は受け付けない」というソニースピリットなどについて触れたうえで、改善すべきチャレンジとして、以下のようなポイントを挙げた。

     
  • カンパニー・部門間の連携を阻害する個別最適化志向の“サイロ”体質の解消
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  • 事業領域を絞りこみ、経営資源を集中することで、価格競争化での利益を確保
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  • 業界標準技術の積極的な採用
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  • ソフトウェア・サービス面での競争力向上
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  • 戦略的重要性の低い資産の売却
エレクトロニクスとゲーム事業でのヒット商品。ソニーが今後経営資源を集中していく分野とされた ストリンガー氏らは先頃発表されたウォークマンAを掲げてみせた。iPodに押され続けたソニーのポータブルオーディオ復権を担う製品である
エレクトロニクスとゲーム事業でのヒット商品。ソニーが今後経営資源を集中していく分野とされたストリンガー氏らは先頃発表されたウォークマンAを掲げてみせた。iPodに押され続けたソニーのポータブルオーディオ復権を担う製品である

特にストリンガー氏は“ヒット商品への集中”を協調し、先日発表されたHDD内蔵型のポータブルオーディオプレーヤー“ウォークマンA”シリーズを手に掲げて、ウォークマンやハイビジョンハンディカム、PlayStation Portable(PSP)やPLAYSTAION 3(PS3)などをその例として挙げた。また就任以来100日間で、組織や事業内容、市場環境についてのレビューを行ない、顧客や販売店、サプライヤーや投資家などから意見を集めるとともに、2000を超える従業員からの提案も検討したうえで、再生プランを策定したと述べた。

エレクトロニクス事業の再生案について説明する、ソニー 代表執行役社長兼エレクトロニクスCEOの中鉢良治氏(右)
エレクトロニクス事業の再生案について説明する、ソニー 代表執行役社長兼エレクトロニクスCEOの中鉢良治氏(右)

再生プランで最も重要なのが、屋台骨でありながら低迷の続くエレクトロニクス事業の復活である。これについては同社代表執行役社長兼エレクトロニクスCEOの中鉢良治(ちゅうばちりょうじ)氏により、詳細な説明が行なわれた。まず現在はカンパニー制が取られている組織体制を改革し、カンパニー制を廃止するとともに、全社横断的な商品戦略会議をエレクトロニクスCEOの下に設置。“チャンピオンプロダクツ”と呼ぶ競争力の高い商品を推進するとともに、従来のソニーで多々見られた、部門ごとの重複商品の排除や、自社製品間での相互接続性、互換性の強化を図る。また事業部門を4事業本部+1部門に統合し、TV、ビデオ、デジタルイメージング、オーディオを重点において、No.1のポジションを追求するとした。VAIOシリーズのパソコンを手がける部門については、事業本部とは別のVAIO事業部門となる。加えてソフトウェア開発体制の強化を目指して“技術開発本部”を、有機ELディスプレーに集中した次世代ディスプレーデバイス開発強化を進める“ディスプレイデバイス開発本部”の2つを新設する。またホームおよびモバイルプラットフォームのアーキテクチャー共通化を進め、同社のキーコンポーネントである“Cellプロセッサー”の応用も進める。半導体投資については、Cellの立ち上げに2003年から2年間で、5000億円の投資があり、これは一段落してゲーム部門で回収が可能として、2006~2007年度は3400億円を、ディスプレーデバイスやイメージングデバイス、Blu-rayディスク(BD)関連の半導体やデバイスに投資するとした。



ソニー本社エレクトロニクス事業の新事業体制。従来のカンパニーは廃止され、事業部の上の階層も整理される。これにより事業部間の縦割り構造(サイロ構造)を打破する 今後のエレクトロニクス事業の成長に向けた施策案。ディスプレー関連の差異化技術としては、モバイル機器などで利用が始まった有機ELディスプレーを重視する
ソニー本社エレクトロニクス事業の新事業体制。従来のカンパニーは廃止され、事業部の上の階層も整理される。これにより事業部間の縦割り構造(サイロ構造)を打破する今後のエレクトロニクス事業の成長に向けた施策案。ディスプレー関連の差異化技術としては、モバイル機器などで利用が始まった有機ELディスプレーを重視する

特に、過去にはソニーを代表する商品であり、現在では不振の象徴ともなっているTV事業再建には力を入れ、14日に発表された新ブランド“BRAVIA”で、液晶TVと液晶リアプロジェクションTVに注力する。液晶パネルは韓国サムスン電子との合弁会社から、“最もコスト競争力の高いパネル”を供給して製品化を行ない、リアプロTVも生産拠点の中国で部品調達も行ない、普及価格帯への投入を目指すとした。また“HD(High Definition) World”を推進するとして、販売好調なハイビジョンハンディカム『HDR-HC1』を例として、撮影から視聴/鑑賞、コンテンツ(映像とゲーム)、さらに編集まで、カムコーダーやTV、PS3やBD/HD対応スゴ録など、関連する製品に力を入れるとした。

TV事業の再編プラン。液晶TVとリアプロTVに集中し、基本設計を国内に集約することで、世界同時での製品投入を目指す。ブラウン管TVはニーズのある地域内での生産に止める HD品質の映像を扱う機器を推進し、入力から出力まで幅広く取りそろえるとしている
TV事業の再編プラン。液晶TVとリアプロTVに集中し、基本設計を国内に集約することで、世界同時での製品投入を目指す。ブラウン管TVはニーズのある地域内での生産に止めるHD品質の映像を扱う機器を推進し、入力から出力まで幅広く取りそろえるとしている

その一方で、大規模な事業の絞り込みや人員削減も行なわれる。事業の絞り込みについては2007年度末までに、エレクトロニクス事業から15カテゴリーの不採算事業を整理する。また商品のモデル数を削減し、2005年度比で20%を減らす。また製造拠点の統廃合を世界で進め、現在65ヵ所ある拠点から11ヵ所を削減するとした。これらにより2007年度末までで1300億円のコスト削減を行なうほか、本社および間接部門の効率化により700億円、計2000億円のコスト削減を行なうとした。また人員についても2007年末までに、国内4000人、海外6000人の計1万人の人員削減も実施する。ただし、具体的にどの事業が削減対象となるのかについては明かされず、順次発表されると述べられたに止まった。また発表後の質疑応答で、高級AVブランド“QUALIA”やAIBOに代表されるロボット事業については、ロボット事業の研究開発は縮小し、その技術はAIに活用する、QUALIAのビジネスは続行するものの、新規開発は停止し、プライオリティーは下げていると、中鉢氏から述べられた。

ソニー本社以外のグループ会社については、稼ぎ頭であるソニー・コンピュータエンタテインメント(株)(SCE)のゲーム部門については、PS3の円滑な立ち上げに向けて、半導体やBD関連デバイスの供給、ソフトウェア設計面でのサポートで協力する。(株)ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントや米SonyBMG Music Entertainment社なども、コンテンツやアプリケーション面でのサポートを行なうとした。さらにエレクトロニクス部門やエンターテインメント部門との連携も強化する。なおCellプロセッサーについては、PS3に搭載するほか、ソニーの家電アーキテクチャーに利用したり、リアルタイムHDメディア編集、革新的な情報処理システムへの利用などが行なわれるとした。SCEのCTO(最高技術責任者)である茶谷公之氏をリーダーとした“Cell Development Center”を創設され、Cellの技術や応用商品、アプリケーション開発を推進するという。

2006年に登場するPLAYSTATION 3の立ち上げにむけて、ソニー本社だけでなくグループ会社も加えた協力体制で取り組む
2006年に登場するPLAYSTATION 3の立ち上げにむけて、ソニー本社だけでなくグループ会社も加えた協力体制で取り組む

米Sony Pictures Entertainment社が担う映画部門や、SonyBMGや(株)ソニー・ミュージックエンタテインメントの音楽部門などは、デジタル配信やBD、UMDなどの新パッケージメディアによる販売促進を行なうとした。またソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ(株)が担当する携帯電話事業についても、AV製品との融合を打ち出した他社と差別化された商品を提案するほか、エンターテインメント事業各社と連携して、エンターテインメント関連機能を拡充するとした。一方で高収益ながらコア事業ではないため、“売却されるのでは”の憶測も流れた金融事業(ソニー生命保険(株)、ソニー損害保険(株)、ソニー銀行(株)の3社)については、株式公開こそ2007年度以降に延期されたものの、引き続きグループ会社としてビジネスを続けるとされた。

最後にストリンガー氏は、再生プランの進捗状況について、四半期ごとの決算で進捗を開示することを表明。再生プランを断固実行して、ソニー再生を実現し、よりスピーディーな会社に変革するとした。

         

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