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【直撃! 話題の企業】広告エンジンで日本に進出するオーバーチュア

2002年10月08日 16時28分更新

文● 編集部 佐々木俊尚

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鈴木茂人(すずき・しげひと)・オーバーチュア(株)代表取締役社長
鈴木茂人(すずき・しげひと)・オーバーチュア(株)代表取締役社長。京都大工学部卒。丸紅を経て、米AT&T副社長、日本AT&Tパラダイン(株社長、シャープ(株)マルチメディア事業開発推進本部統括、インテュイット(株)代表取締役社長、(株)ダイジョブ・ドットコム代表取締役兼CEOなどを歴任

米オーバーチュア(Overture)が100%出資する日本法人、オーバーチュア(株)が今年1月に設立された。同社の事業の柱“スポンサード・サーチ・サービス”は、提携する検索サイトの検索結果に、同社のクライアント企業のサイトを検索結果として表示するというビジネス。どのようなキーワードの組み合わせに対し、どの企業サイトのURLを表示するかは、オークションで入札して決められる。高い値段を提示した企業が、より上位の検索結果ランキングに表示されるというわけだ。

検索エンジンを利用したこの新たなビジネスモデルは米国で大成功をおさめ、現在ではオーバーチュア1社だけでなんと6万7000社ものクライアント企業を獲得している。この躍進ぶりに、検索エンジン業界のガリバー的存在、グーグル(Google)もアドワーズ(Adwords)という同種のビジネスを展開し、オーバーチュアを追っている。

オーバーチュア日本法人は、米国と同様の成功を日本でも手にするのか。鈴木茂人社長に、話を聞いた。

[ASCII24] オーバーチュアは検索エンジンの世界に新しいビジネスモデルを提示したわけですが、最初にそのビジネスに触れたときの印象は?
[鈴木社長] 非常に興味深い現象が昨年、米国で起きました。9.11同時多発テロの直後、米国の景気が暗転し、それに伴って広告業界も売り上げが落ち込んでいったのですが、その中でなぜか米オーバーチュアの売り上げだけが上がったのです。これは広告予算がどんどん絞られていく中で、ROI(投資回収率)を高めなければいけないという気運が高まった。そんな状況の中で、オーバーチュアのビジネスが注目される結果となったということなんです。その時期、オーバーチュアの株価も急上昇しました。9月前には10ドル(約1200円)前後だったのが、ピークには40ドル(約4800円)にまで達しています。
[ASCII24] 検索エンジンに注目したビジネス、というのがユニークですね。
[鈴木社長] 検索をビジネスにしようという発想はこれまでなかった。ポータルサイト側から見れば、これまで検索というのはあくまでコストを発生させるもので、できればサイトの中の目立たない位置にレイアウトしようという程度。ところがオーバーチュアの登場で、そうした考え方が完全にひっくり返るほどのインパクトを市場に与えることになったわけです。
[ASCII24] そのビジネスをこれから日本市場に持ってこようとしているわけですが、日米の文化やビジネスの差は影響しませんか。
[鈴木社長] 検索の方法が日米では若干違いますね。米国では、みんなとにかくたくさんのキーワードを入れて絞り込んでいく。たとえば旅行の情報を探しているのなら、“旅行”“ハワイ”“ツアー”とキーワードを並べて検索するわけです。日本ではまだそこまで検索の使い方が定着しておらず、“旅行”1語だけで検索するような使い方がまだ一般的です。これは今後、サービスが定着していけば、的確な情報を得るためにもっとキーワードを入れよう、という形に変わっていくと思います。
それともう1点、米国ではオンラインサインアップにあまり抵抗がなく、広告主の数も過去2四半期で、1四半期ごとに7000社も増えています。この多くは、中小の企業さんがオンラインサインアップでオーバーチュアと契約していただいた数なんです。それに対して、日本ではオンラインサインアップへの慣れの問題もあり、定着するにはもう少し時間がかかるのではないかと思っています。
[ASCII24] となると、当初は大企業中心に営業活動を進めることになるのでしょうか。
[鈴木社長] というよりも、大企業さんと中小さんでイーブンでしょう。皆さんご存じのような大きな会社とまず契約させていただき、それで安心してもらってということを考えています。
[ASCII24] 中小企業やSOHO企業へのアピールはどのように?
[鈴木社長] インターネットの広告は、中小企業にとっては決して安くない。たとえばバナーにしても、3ヵ月契約で1ヵ月30万円、最低90万円なんていうオーダーなわけです。こんな高額な広告料金は自分には関係ない世界だと思っていた会社に、たとえば月々5000円でも3000円でもかまわないから、ひとつのキーワードを選ぶっていうこともできますよ、というのをわたしたちは提案できます。たとえば山形県で地酒を造っている人が、“山形”“地酒”という2つのキーワードの組み合わせを使うというようなやり方です。予算的には数千円から数万円程度で十分やっていけてしまう。そこのところの理解が得られれば、わたしどものビジネスは飛躍的に広まるのではないかと思っています。
実際、米国ではそれが現実に起き、中小を中心に6万7000社もの広告主さんが集まったわけですから。
[ASCII24] オーバーチュアのスポンサード・サーチ・サービスをはじめとする広告エンジンには、「適正な検索結果が表示されなくなるんじゃないか」という批判も起きています。
[鈴木社長] 実は、そこがオーバーチュアの優れているところなんです。どういう意味か、説明しましょうか。
弊社日本法人にはいま、社員が30数人います。年内には50人程度にまで増やす予定です。立ち上がったばかりの会社に、なぜそんなに人数が必要なのか?と思われる方もいるでしょう。人件費のコストばかりかけているんじゃないか、って。でも、その社員のうち実は半数はカスタマーオペレーションなんです。しかもその多くは、エディターチーム。編集作業をする部署を抱えているのです。
たとえば検索結果を見ると、URLとタイトルの下に2行か3行のサマリーが出ますね。でも普通のロボット型検索エンジンでは、あの部分は意味不明の文章になっていることが多く、あまり読まれていない。しかしここは非常に貴重な情報源なんです。ここの情報量を充実させるために、エディターチームが必要なのです。
あるいはURLにしても普通はケアしないけれど、オーバーチュアでは広告主と相談し、非常に注意深く掲載している。たとえば“旅行”で検索した場合は旅行会社のトップページに行くけれど、“旅行”“ハワイ”だったら下の階層のハワイ旅行のキャンペーンのページに飛ぶようにする、といった具合です。
弊社のエディターチームは金融保険やエンターテインメント、コンピューターなどカテゴリー別に分け、それぞれの知識の深い人に集まってもらっています。
[ASCII24] 広告エンジンのビジネスは、どこの検索ポータルサイトと提携できるかがカギとなりそうです。今後の展開は?
[鈴木社長] おかげさまでインフォシーク(Infoseek)gooライコス(Lycos)の3社と契約することができ、近くサービスインする予定です。今後は、当然みなさんの注目はヤフー(Yahoo!)MSNに集まっていると思います。他社も当然狙っているでしょうね。米国ではオーバーチュアは今年、MSNとは2年契約、ヤフーとは3年の契約を結びました。そうした実績をもとに展開を進めたいと考えています。
[ASCII24] 料金はどうなるのでしょうか。ライバル社であるグーグルのアドワーズはミニマムチャージを50円に設定しました。オーバーチュアは設立会見時に25円とコメントされましたが。
[鈴木社長] いま検討しているところです。あまりに安かろうというイメージになるのも残念なので、もう少し考えたい。グーグルよりは高くならない料金に設定するつもりです。
[ASCII24] グーグルとは料金を含めたサービスのシステムが若干異なりますね。
[鈴木社長] グーグルは入札価格にクリックスルーレートをかけ、その最も高い数字のものを検索結果ランキングの最上位に出すという仕組みのようです。それに対して、オーバーチュアではクリックスルーレートは使わず、エディターチームがスクリーニングをする仕組みを取っています。たとえばコンピューターバッグの販売サイトから、“コンピューター”というキーワードでランキング1位にしたいという申し込みがあったとします。うちはエディターチームがスクリーニングし、そうした申し込みはお断りすることにしています。「“コンピューター”のキーワードでは無理ですが、“コンピューター”“バッグ”といったキーワードの組み合わせではいかがでしょうか」とお願いするわけです。そのかわり、スクリーニングを通過した場合は、高い値段をつけたところを無条件で上位に上げます。これは広告主から見れば、とてもフェアなシステムではないかと思っています。

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