米4D MATRIX(フォー・ディー・マトリックス)社は29日、音楽や動画などを組み合わせた、独自のリッチメディア広告を配信するサービス“ClickReaction(クリック・リアクション)”を、12月3日に開始すると発表した。
“クリック・リアクション”で配信するリッチメディア広告の画面 |
同社によれば、これまで行なわれてきた電子メールによる広告配信は、テキストが主体であり、イメージの伝達が難しいという。また、ストリーミング・ビデオのフォーマットである米リアルネットワークス社の“Real Media”やマイクロソフト社の“Windows Media”による映画の予告編などのストリーミング広告や、ウェブ用のアニメーション作成ツールである米マクロメディア社のFlashを用いた広告など、映像や音楽などで演出するリッチメディア広告を配信しても、プラグインや専用のプレーヤーが必要なために、受信者に負担がかかってしまうという。
さらに同社は、電子メールによる広告配信が、不特定多数に対しての一方的な広告になっていることを指摘した。これを成功させるためには、顧客の輪を広げていくこと、顧客のリアクションを反映させていくことが必要だとしている。
4D MATRIXプロダクトマネージャーのミドリ・ルーカス氏 |
このことについて、同社プロダクトマネージャーのミドリ・ルーカス(Midori Lucas)氏は「電子メールによる広告配信は、現状ではほとんどスパムメールと同等であると、ネガティブな見方をされている。しかし、広告の内容を、顧客一人一人が必要としているものしていけば、見方も変わってくる。そして、顧客の個性を理解した上で広告を打つことによって、さらに広告効果は上がるだろう」と語った。
同社が提供するサービス“クリック・リアクション”は、リッチメディアによる広告配信と、ユーザーの反応を集計してマーケティングのためのデータ作成を行なうというもの。クライアントからの要求があれば、分析・レポート作成も行なう。具体的には、動画や音声、URLリンクなどを1つのウィンドウにまとめ、独自の圧縮技術で実行形式のファイル(EXEファイル)に変換したコンテンツを、ダウンロードさせる形で配信する。そのため、対象はWindowsユーザーのみとなる。ユーザーは、URLを記載した電子メールを受信し、ダウンロードして視聴する。15~30秒の動画を含んでいても、約500KB程度に圧縮可能なので、ナローバンドを利用しているユーザーにも配信できるという。
また、“ライブアップデート機能”によって、ユーザーごとに異なるコンテンツを提示することも可能。友人・知人へコンテンツを紹介するリンクによって、他人にメールを配信した場合のみ閲覧可能なコンテンツを用意するなど、ユーザーの条件に応じてコンテンツを変更できるようになっている。
そして、ユーザーがコンテンツを視聴している間、ユーザーの視聴時間や回数、どのURLリンクを何回クリックしたかなどを、独自のトラッキング技術によって集計し、データベース化する。
同社が提供するサービスの概略図 |
これによって、低コストでマーケットリサーチを行なえるだけでなく、効果的なプロモーションを行なえるという。また、友人・知人への紹介によって、口コミのような広告効果を得られるとしている。
4D MATRIXセールスマネージャーの仲井暁氏 |
同社セールスマネージャーの仲井暁氏は「現在、メール配信広告をネガティブなものにしている“壁”が何であるのかを把握した上で、それを超えて行かなくてはならない。同サービスは、双方向的な要素が強く、トラッキングによってパーソナライゼーションも行なえることから、今まで話したクライアントには、興味を持ってもらっている」と語った。
記者発表会の中、質疑応答の時間において、EXEファイルは、ウイルスやワームと勘違いされてユーザーに警戒されないだろうか、と聞いてみたところ、ルーカス氏は「大手企業から配信されるものであれば、ユーザーの心理にそれほど影響を与えないだろう。しかし、最近のOSやブラウザーはセキュリティー機能が高いので、警告などが出てしまうのは仕方ないと思っている」と答えた。また、トラッキングを行なうことについては「ユーザーには事前に通知するし、クライアントにデータを提示する以外の用途には用いない」と答えている。
同社は、ISPや自動車産業などをターゲットにして、2002年度には20社から25社との契約を結ぶことを目標としている。また、同年度に2~3億円の売り上げを見込んでいる。