インテュイット(株)は15日、報道関係者を集め、同社の新製品の発表と、今後の事業展開についての説明会“Intuit DAY”を開催した。発表した新製品は、事業者向けの財務会計処理ソフト『弥生』シリーズの最新バージョンである『弥生会計 02』と、販売仕入在庫管理ソフト『弥生販売 02』、および給与計算処理ソフト『弥生給与 02』。
上に載っているのが『弥生販売 02』、下の列の手前が『弥生会計 02』、奥が『弥生給与 02』 |
『弥生会計 02』と『弥生販売 02』には、基本機能に絞ってウィザードやサポートを充実させたという初心者向けの“Standard”と、管理機能および分析機能を備え、高度な経営戦略を立てられるという中・上級者向けの“Professional”の2ラインアップを用意している。前バージョンからの変更点としては、全製品ともWindows XPに対応したことや、インクジェットプリンターでの印刷が可能になったこと、インターネットとの連携機能を備えたことなどが挙げられる。
価格と発売日は、『弥生会計 02』と『弥生販売 02』の“Professional”が8万円、“Standard”が4万円で、4製品とも12月7日発売。『弥生給与02』は8万円で、11月16日発売となっている。
『弥生会計 02』
『弥生会計 02 Professional』 |
『弥生会計 02 Standard』は、個人事業種や小規模企業向けの財務会計処理ソフト。固定資産の管理や手形の管理、運営資金管理や決算処理などを行なうことができ、これによりサービス業から小売業、農業までの個人事業主・小規模法人の会計業務を、スムーズに効率化できるという。1度帳簿に入力すれば、関連資料にデータを自動転記・自動集計できる。また決算に必要な帳票類がすべて揃っており、一般・不動産・農業の青色申告決算書にも対応している。決算書に必要な項目を直接入力して管理でき、税務署指定の各申告用OCR用紙へのプリントアウトも可能となっている。
また初心者へのサポート機能として、各種の仕訳を、あらかじめ用意された1000以上の事例を参考にしながらテンプレートによって行ない、伝票も作成できる“仕訳アドバイザー”や、売掛金や買掛金などの定期的な入出金を設定して、2ヵ月先までの資金の状態を予測し、資金繰りを支援する“資金繰りシミュレーター”などがある。
“仕訳アドバイザー”。複数のキーワードから事例を検索できる |
“資金繰りシミュレーター” |
『弥生会計 02 Professional』ではこれらの機能に加え、残高試算表と予算実績管理による部門別管理や、資金の実態を把握する預貯金/借入金管理などの管理機能を強化した。経営戦略に役立つという財務表やグラフは、日々の入力から自動的に作成できる。また過去の数字の推移を確認できるキャッシュフロー計算書で、資金の流れを的確に掴むことができるなど、経営戦略を立てるための分析機能も備えている。Excelへのデータの転送も可能で、さらに法人決算書の勘定科目内訳書16種類に対応している。
『弥生販売 02』
『弥生販売 02 Professional』 |
『弥生販売 02 Standard』は、販売を基本とする中小企業向けの販売仕入在庫管理ソフト。販売業務の基本である、見積/受注/売上/請求/回収の各業務をスムーズに行なえるという。伝票のイメージを再現したインターフェースによって、入力作業が直観的に行なえる。また、関連する帳票にデータを自動転記して集計を行なうため、ミスの無い伝票処理を行なえるという。納品書や請求書といった、送り状のための宛名ラベルが作成できるほか、入力した売上や請求、回収のデータを集計して、レポートとして出力することもできる。
見積書などの各書面は、印刷できるだけでなく、レイアウトを壊さずテキスト形式に自動変換して、電子メールで送信することもできる。通常のテキストとして送信するので、文章やメモ、添付ファイルなども追加できる。対応するメールソフトはOutlook、Outlook Express(4以降)、Netscape Messenger (4.05以降)。また『弥生販売02』自身にアドレス帳を備えているため、シームレスな送信が行なえるという。
見積依頼書。上部に“メール”アイコンがある |
“メール”ボタンを押すとメールソフトが立ち上がり、見積依頼書のレイアウトに沿った形でテキストが生成される |
『弥生販売 02 Professional』では、販売業務のほか、仕入業務と在庫管理業務を総合的に管理できる。入力したデータを自動集計して、予算実績管理や売上推移など、売上管理資料やグラフの作成が行なえるほか、得意先別・商品別の分析表も作成でき、Excelとのデータの連携も可能。また帳票をユーザーが自由に設計できる“帳票レイアウタ”機能を備えている。さらにマルチユーザーに対応しており、最大5台のネットワーク環境でデータ共有を行なって、同時入力や異なる業務の並行処理が可能となっている。この機能に対応して、5ユーザー分のライセンスが付属する『弥生販売 02 Professional 5Users』も、25万円で販売する。
また、『弥生販売 02 Professional』だけの機能として、得意先別・商品別・担当者別にそれぞれ予算の設定が可能な“予算実績管理”機能を備えている。過去の実績をもとに比率を入力するだけで自動的に予算を設定できるほか、予算と実績を対比させて、比較検討ができるようになっている。
予算実績推移表。通常の数字表示 |
予算実績推移表をグラフで表わした様子。グラフの種類もいくつか用意されている |
『弥生給与 02』
『弥生給与 02』は、給与計算、賞与計算、社会保険、年末調整などの給与業務をサポートする給与計算処理ソフト。アルバイトや嘱託、契約社員などといった、さまざまな雇用形態に対応しており、一度設定すれば、月ごとの勤怠データを入力するだけで自動集計された給与明細書を作成できる。またExcelへ出力して、集計データを再利用できる。給与明細書は、罫線の入っている用紙に印刷できるが、社会保険料算定基礎届/月額変更届および源泉徴収票を、白紙にカラー印刷することも可能となっている。
また、従業員の日々の勤怠データもタイムカード形式で入力できるが、集計・転記の処理を簡略化するために、マックス(株)のタイムレコーダー『タイムロボ』から、直接データを取り込むことが可能となっている。具体的には『タイムロボ』のデータ記録用コンパクトフラッシュを、取り込みウィザード“タイムカードデータインポートウィザード”に従って取り込むかたちとなる。
マックス(株)のタイムレコーダー『タイムロボ』を手に取る、インテュイット プロダクトマーケティンググループの上村寿勝氏。左手の親指の所に、コンパクトフラッシュスロットがある |
“タイムカードデータインポートウィザード”。取り込みをシームレスに行なえる |
『弥生 02』シリーズの対応OSはWindows 95/98/Me/NT 4.0(SP3以上)/2000/XP。動作環境として、メモリーがWindows 95/98/Meは32MB以上、Windows NT 4.0は64MB以上、Windows 2000/XPは128MB以上必要。また空きHDD容量が、『弥生会計 02』と『弥生販売 02』は70MB以上、『弥生会計 02』は100MB以上必要となっている。
これらの製品を購入後、ユーザー登録を行なうと、インテュイットの有償ユーザーサポートサービス“i-ケア”を、無料で3ヵ月間受けられる“i-ケア トライアルサポート”が開始する。“i-ケア”は、電話サポートサービスのほか、データ復元サービス、破損CD-ROM交換サービス、法令改訂時のプログラム配布、無償バージョンアップ、Eメールマガジンの配布、情報誌“Enjoy it”の配布、およびサプライ用品の10%割り引きサービスを受けることができる。また今後、ネット上に20MBのバックアップスペースを提供するサービスや、ウェブ申し込みによる、社名入りサプライ用品・各種事務用品の提供サービス、およびDiners Club・JCB提携のクレジットカード発行サービスなどを提供していく予定だという。
インテュイット、会計ソフトからマネジメントソフトの提供へ
インテュイット代表取締役社長兼CEOの平松庚三氏 |
今後の事業展開について、インテュイット代表取締役社長兼CEOの平松庚三氏は、「われわれが製品を提供する目的は、事業主を成功に導くためだ。これまで、会計・販売・給与といった、服のサイズで言えば“1サイズフィットオール”のように、どんな事業者にも対応できるソフトを提供していたが、これからはもっと、会計事務所や建設業、開業医など、業種に製品の機能を特化していきたい。いずれは、小規模事業主の単なる会計ソフトから、中規模企業まで見込んだ、業務のマネジメントを行なえるソフトやソリューションを提供してゆくのが目標だ」と述べた。
また同社は、今回の『弥生 02』シリーズの発表にともなって、経理ソフト『QuickBooks』シリーズの販売を、12月6日で終了すると発表した。現ユーザーには、『弥生 02』シリーズへの移行プログラムを、来年予定しているという。なお、『QuickBooks』シリーズの電話サポートについては、2003年6月末まで継続する予定。
インテュイットは、今回発売した『弥生会計 02』シリーズや、同社が販売しているパッケージソフト、およびサポートなどによって、年240億円のマーケットを達成することを目標としているという。