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「銀塩プリントに匹敵する画質を追及する」――オリンパス、新製品発表会

2001年09月14日 18時22分更新

文● 編集部 佐々木千之/田口敏之

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オリンパス光学工業(株)は13日、都内のホテルでデジタルカメラ『CAMEDIA』シリーズの新製品発表会を開催した。『CAMEDIA E-20』『CAMEDIA C-40ZOOM』『CAMEDIA C-2』などの新製品を紹介するとともに、同社のデジタルカメラ事業への取り組みについて説明した。

取締役社長の菊川剛氏
取締役社長の菊川剛氏

同社の取締役社長の菊川剛氏は「'96年に私は、3年以内に100億円の売り上げを持つ事業にしたいと思っていた。当時デジタルカメラ事業を取り仕切っていた小島事業部長は『それでは不足。新しいオリンパスをデジタルカメラで作るんだ』と息まいていたが、社の内外で信用されなかった」と前置きをした上で、「しかし、'97年秋に発売した『CAMEDIA C-1400L』がヒットして '98年3月期には230億円の売り上げを達成、 オリンパスのデジタルカメラ事業の当期(2002年3月期)予想は、連結で1400億円(単独で1100億円)で、オリンパス全体の27%を占め、新しいオリンパス(売り上げ50%)までの半ばを過ぎた」と大きな事業に育ったことを振り返った。

同氏は「今後とも、オリンパスの大黒柱として(デジタルカメラ事業を)育てていきたい」と、デジタルカメラ事業に力を入れていくことを改めてアピールした。同社はカンパニー制を取るが、映像機器を扱う“映像システムカンパニー”においてデジタルカメラを扱う“DI事業部”と、コンパクトカメラや一眼レフカメラを扱う“カメラ事業部”、これら2つのグループを、10月1日付けで“映像事業部”として統合し、デジタルカメラと銀塩カメラの垣根を超えた事業展開を行なっていくという。さらに、自社で開発している、デジタルカメラの心臓部であるシステムLSIの開発を、外販も視野に入れ、投資や要員の増員等を行なって強化していくと述べた。

DI事業部長の小島祐介氏
DI事業部長の小島祐介氏

また、DI事業部長の小島氏は「昨年、国内では売り上げベースでデジタルカメラが銀塩カメラを上回ったが、今年に入って台数ベースでもデジタルカメラが銀塩カメラより多くなった。2001年前半の統計を見ると、一眼レフと交換レンズカメラ、コンパクトカメラを合わせた台数は153万台、これに対してデジタルカメラは206万台で、4対6の割合でデジタルカメラのほうが多くなった。世界では銀塩カメラの合計1344万台に対してデジタルカメラは591万台だが、売り上げベースで見ると、世界でも逆転する。日本においては売上金額の比率は3対7にまでなり、銀塩全部合わせてもデジタルカメラの半分にも満たない状況だ」とデジタルカメラが銀塩カメラ市場を飲み込みつつある現状を報告した。

2001年1~6月の金額出荷統計。デジタルカメラと銀塩カメラの比率は、約7対3
2001年1~6月の金額出荷統計。デジタルカメラと銀塩カメラの比率は、約7対3

さらに今後の伸びについて「2000年に1000万台を超えた、世界のデジタルカメラの需要は、2005年には4000万台に達すると考えている」という予測を披露した。また、日本市場は、オリンパスのほか、富士写真フイルム(株)、コダック(株)、ソニー(株)の4社が大きなシェアを占めてきたが、昨年キヤノン(株)が加わって競争が激化したという。これらの大手5社が売り上げの75%を占めており、さらに80%に達しそうだとしている。

月別台数の出荷合計。400万画素クラスの成長が著しい
月別台数の出荷合計。400万画素クラスの成長が著しい
2000年以降の市場予測。2005年には、4000万台に達する見込み
2000年以降の市場予測。2005年には、4000万台に達する見込み

そして、同社独自の市場調査結果として、デジタルカメラユーザーの8割は、プリントが大切であると考えているということを発表した。特に、女性はプリントへの高い関心と、強いこだわりを持っているという。オリンパスは、このプリントに対するニーズに応えて、デジタルカメラ画像の高画質化によって、銀塩に匹敵するプリントを可能とすることに目標を置くという。

デジタルカメラにプリントは重要であるかを問うたアンケートの結果。重要であると考える人が多い
デジタルカメラにプリントは重要であるかを問うたアンケートの結果。重要であると考える人が多い

同氏は「オリンパスが画素数にこだわるのは、銀塩に匹敵するプリントを実現するためだ。画質がいいだけ、小さいだけではなく、常に最新技術を取り込みながら、コストを削減し、新しく、使いやすいデザインを求め、市場に新しい提案を行なってゆく」と、オリンパスのデジタルカメラの方向性を明らかにした。

DI事業部、商品企画グループ次長、松下博英氏
DI事業部、商品企画グループ次長、松下博英氏

新製品の発表には、DI事業部、商品企画グループ次長の松下博英氏が登場し、ユーザーのデジタルカメラの使用頻度について、米国においてオリンパスのデジカメを購入したユーザーの追跡調査した結果を発表した。それによると、ユーザーは、年に平均38回デジタルカメラを使っていて、全ユーザーの13%が、ほぼ毎週使用しているのだという。

デジタルカメラユーザーに、過去12ヵ月のデジタルカメラの使用頻度を聞いたアンケートの結果。7~12回が、18.1%と多い
デジタルカメラユーザーに、過去12ヵ月のデジタルカメラの使用頻度を聞いたアンケートの結果。7~12回が、18.1%と多い

松下氏は「中には購入したのに使わないという例もあり、今後、操作性や持ちやすさなどの使い心地を、もっと改善していかなければならない」と述べ、今回の新製品である『CAMEDIA C-40ZOOM』や、『CAMEDIA C-2』を、操作性と持ちやすさにポイントをおいて開発したと紹介した。

広告写真家の小森修氏(左)と、石丸諭氏(右)
広告写真家の小森修氏(左)と、石丸諭氏(右)

同社の新最上位機種となる『CAMEDIA E-20』の紹介時には、広告写真家の小森修氏と石丸諭氏による、ミニトークショーも行なわれた。両氏は、従来機種である『CAMEDIA E-10』を広告写真の仕事に用いており、今回のリリースに合わせて、オリンパスの要請によって、『CAMEDIA E-20』を試験的に使用したのだという。

小森氏の作品
小森氏の作品
石丸氏の作品
石丸氏の作品

石丸氏は、「銀塩と同じようなライティングで使用できるかどうかのテストをやってみた。カラー写真とモノクロ写真ではライティングの仕方が異なるが、『E-10』にはそれが掴めていた。今回の『E-20』で、それがより銀塩に近くなってきている」と述べ、小森氏は「デジタルはハイライト部分と中間部分が弱いが、暗部をどこまで表現できるかということを試してみた。結果として、銀塩に近い感触を得られた。現在では90%以上の仕事にデジタルカメラを用いているが、ライティングや撮影が非常に楽だ。特にスタジオ撮影でそれははっきりと言える」と、デジタルカメラが、普通のフィルムに近い状態で撮影できるようになってきていることを強調した。


デジタルカメラメーカー各社から、秋冬の新製品の発表が相次いでいる。デジタルカメラへの一般の人たちの関心は高まる一方で、大手販売店のデジタルカメラ売り場はいつも賑わっている。以前と違うのは、デジタルカメラを見ているのが若い男性サラリーマンだけでなく、初老の男性や中年の主婦、高校生など多様な層に広がっていることだ。こうした“新しい”デジタルカメラユーザーは画素数をそれほど重視せず、使いやすさや価格に購買のポイントを置いているという。

こうした新しいデジタルカメラユーザーに訴求するべく、200万画素CCDを搭載した中級機のラインアップに力を入れ、また、インターネット上の写真アルバムやホームページサービスなどと組み合わせた商品展開をするメーカーが増えつつある。そうした中で、サイズが売り物の1つである“タブレット”デジタルカメラ『C-40ZOOM』においても400万画素CCDを搭載するほど、画素数の高さとそれをベースとした画質を最優先した製品にこだわり続けるオリンパスの姿勢は際だっている。

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