サイバーリンク(株)は24日、BD再生にも対応したDVD再生ソフト「PowerDVD」シリーズの最新版「PowerDVD8」のリテールパッケージ版を発表した。パッケージ版の発売は6月下旬。ダウンロード版はすでに発売中である。
同日開催された記者説明会では、単なるBD/DVD再生ソフトという枠から脱皮して、動画SNS的機能を取り込む方向への進化が示された。PowerDVDが目指す動画SNSとは、いったいどのようなものだろうか?
PowerDVD8シリーズは、BD-VideoやBD-J(BDソフト上でのJava実行環境)の再生に対応。NVIDIA GeForceシリーズやATI Radeon HDシリーズが備えるHDビデオ再生支援機能にも対応する。
これらの機能は再生ソフトとして重要ではあるものの、例えばBDドライブ搭載パソコンや単体のBDドライブ製品に付属するBD/DVD再生ソフトにも(ある程度)備わっている機能である。こうした基本部分の強化には限界があり、そこを強化していくだけでは、「新たにBD/DVD再生ソフトを購入したい」という消費者を増やすことはできない。
そこでサイバーリンクが着目したのが、動画SNSとの連携という新しい要素だ。
サイバーリンクはPowerDVD8の発売に合わせて、動画SNSサイト「MoovieLive.com」を開設した。PowerDVD8のユーザーはMoovieLiveで、PowerDVD8で見たDVDの情報に評価を付けて投稿する「Movie Collection」や、DVDの映像を自分なりにリミックスした「Movie Remix」といった機能を利用できる。
MoovieLiveのトップページからは、多くのユーザーがコレクションしているDVDタイトルが列挙されるほか、他のユーザーが作ったMovie Remixの参照もできる。投稿はPowerDVD8上から簡単に行なえる。動画SNSとBD/DVD再生ソフトが密接に連携しているわけだ。
Movie Remixというのは、市販のDVDビデオソフトを素材に、独自のリミックス映像を作り、MoovieLive上で共有する面白い機能だ。独自のプレイリストを作って、DVDビデオの中から見たいシーンだけを抽出したり、映像の上に字幕や画像を加えたり、さらには独自の音声/映像を付けることも可能という。
簡単に言えば、市販のDVDビデオを使ってオリジナルビデオクリップを作り、それを他のユーザーにSNSを通じて配信できる、というのがMovie Remixなのだ。
Movie Remixのポイントは、配信するのはあくまでリミックス用データだけという点にある。DVDビデオから映像をリッピングして、リミックスデータを合成して新しいビデオファイルを作り出すわけではない。故に、公開されたリミックス映像を見たければ、見る側のユーザーも同じDVDビデオを用意しておく必要がある。
この方法によって、DVDビデオソフトの著作権を侵害せずにすむ。技術的には、リッピングしてリミックス映像を作ることも可能だろうが、他者の権利を侵害せずに動画で遊ぶ楽しみを提供するというMovie Remixのコンセプトからすれば、妥当な落としどころと言えるだろう。
MoovieLiveに投稿された情報は、今のところ海外で販売されているDVDビデオの情報ばかりであるが、日本で販売されているDVDビデオの情報も扱えるように、サイバーリンクは外部のデータベースと提携しているという。PowerDVDを使って視聴された映画の一覧なども参照できて、なかなか面白いSNSとなっている。
BD/DVD再生ソフトと動画SNSの連携という手法が、消費者にどう評価されるかは未知数だ。しかし、機能や性能面での強化が難しいBD/DVD再生ソフトが見つけた新しい方向性としては、動画SNSとの連携というのは興味深い試みと言える。難しいとは思うが、ニコニコ動画などとの連携が実現できれば、日本でも多くの消費者に受け入れられるのではないだろうか。