月刊アスキー 2007年2月号掲載記事
―― タイトルには「ほんとに格差社会?」とありますが、テーマは多岐にわたっていますね。
以前から、世間一般で言われてる「思いこみ」というものに対する疑問は数多く持っていて、それをまとめて検証してみたいと思っていました。そこにタイミング良く編集者からの企画の提案をもらったのがきっかけです。
最初にだいたい40から50のテーマを挙げ、最終的に30に絞っています。政治、経済、社会の話題からなるべく広くピックアップしたいと思いましたし、今まさに問題になっているテーマを選んだつもりです。
例えばタイトルにも入れた「格差社会」。実は昔から格差はあった、日本は昔から結構な格差社会だったんだ、ということがデータからわかる。「日本の生徒の学力は低下している」という「常識」も、元になっている国際調査の参加国が増加して、相対的に順位が下がったのが原因でした。
元々優れた学力の国が参加して順位が下がってしまっただけなのに、それを「日本の学力が低下した証拠」と考えるのはその人自身の学力が心配になってしまいますよ(笑)。
本を書きながら、私自身も定説にとらわれていた部分に気づかされましたね。自分にとっても改めて勉強になりました。
―― 日頃からニュースに対して疑問を持つことは多いのでしょうか?
元々あまのじゃくなので、良きジャーナリストと言うだけでなく良き社会人として、「健全な懐疑心」を持ちたいと思っています。すべて疑っていたら性格が悪いですが(笑)、ニュースを見ていても、すぐに納得しないで疑った方がいいんじゃないか? ということなんです。
ニュースキャスターをやっていた時に「怖いな」と思ったのは、その気になればどんなコメントも言えて、必要な根拠も示すことができる、ということです。データにもいろんな側面があって、いろんな見方が可能だということを伝えることが大事だ、と思いました。
そういうメディアを読み解く力、メディアに対する健全な懐疑心、そういうことにこの本を読んで気がついてもらえればうれしいです。ひとつひとつのテーマについて、自分はどういう常識を持っていたかをこの本を読みながら検証していく、「常識の棚卸し」をぜひやってほしいですね。
この本は特に若い人に読んでもらいたいです。就職活動中の学生さんなどに「社会を見る目」を伸ばしてもらいたい。本を書くときは、いつも高校生以上なら理解できる内容にしたいと思ってやっています。
―― たまに本論とは直接関係しないが関連のあるエピソードや指摘が入るのが面白いですね。
ついついトリビアを入れたくなるんですよ(笑)。「週刊こどもニュース」の時に経験したのですが、ちょっとした雑学を入れると大人が喜んでくれるんです。テレビでの経験は本の中に活かしています。
タイトルに「つかみ」になる要素をいれたり、どんどん読みたくなる工夫がやっぱり必要なんだ、とだんだん分かってきました。そのためにどうしたらいいか、ということを毎回考えながら作っています。