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ネット時代の“コマース”スタイル(1)

同じ航空券でも安くなる――旅行予約の新常識“ダイナミックパッケージ”とは

2007年07月10日 17時30分更新

文● 吉田彰男

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 夏休みには旅行に出かけたい。でも、お金もそんなにかけたくないし、できたら簡単かつ、わがままに旅程も決めたい。そんなふうに考えているなら、オンライン旅行サイトを使うのがお勧めだ。

 いま旅行会社のオンライン予約サイトを利用するなら、ぜひ検討してほしいサービスがある。“ダイナミックパッケージ”と呼ばれる、新しいタイプの旅行商品だ。

 海外旅行と言うと、まず最初に“パッケージ旅行”を思い浮かべる人が多いだろう。旅行会社が企画した団体旅行で、泊まるホテルや利用する航空便は旅行会社が用意してくれる。出発から解散までの旅程や訪問地なども最初からお膳立てされている。

 航空券や宿泊施設などをパッケージ化して一括購入するという点では、ダイナミックパッケージも“パッケージ”旅行の一種である。ただし、団体旅行ではなく個人旅行をターゲットにしている点、旅程の自由度や、選べる選択肢が従来のパッケージ旅行とは比べものにならないほど豊富である点などが新しい。



ダイナミックかつ自由に旅を設計できる


 ダイナミックパッケージの“ダイナミック”は動的という意味だ。

 ユーザーが条件を指定すると、それに合った個人旅行のプランがシステムによって自動的に作られる。もちろん、予約申し込みから支払いまで、旅行会社の窓口に足を運ばずに、すべてがネット上で完結する。休日や祝日でも、24時間すぐに予約が行なえ、直前の出発でも問題ない。例えば、海外旅行に出発する4日前まで予約を受け付けてくれるサイトもあるぐらいだ。

 ダイナミックパッケージに対応した旅行サイトでは、出発地、目的地、日程、人数など必要な情報を入力すると、自動的に旅行会社のシステムが航空券やホテルの空き室情報を検索し、条件にあった選択肢を提示してくる。顧客は、リスト化されたこれらの選択肢の中から、自分の希望に近いものを選ぶだけだ。往復が同じ路線でなければならなかった航空路線で、往路と復路で発着空港を変えたり、泊まるホテルを1泊目と2泊目を別にするといったことも可能だ。

 このように、思いたったその場で旅を設計できる“自由設計旅行”と呼べるものがダイナミックパッケージなのである。



欧米ではすでに一般化、日本でもようやくその波が


 欧米では1997年ごろからインターネットで旅行商品が取引されるようになった。当初は航空券とホテルの予約を単独で行なうタイプのサービスしかなかったが、2001年ごろから両者を組み合わせ、トータルの料金を比較しながら、購入や予約が行なえるサービスが登場した。米国のオンライン旅行サイト最大手のエクスぺディアなどが始めたのが、ダイナミックパッケージの走りである。

 現在アメリカで、インターネット上で販売される旅行商品の約90%がダイナミックパッケージだという。国内旅行・海外旅行を問わず、格安の航空券とホテルの組み合わせが主流になっている。

GTOのサイト

日本でいち早くダイナミックパッケージのサービスを始めたGTOのサイト

 ダイナミックパッケージを扱う旅行サイトは、日本でも相次いで登場している。2005年秋に国内で先陣を切ってサービスを始めたのは海外専門のネット専業旅行会社・グローバルトラベルオンライン(GTO)。それを皮切りに、海外旅行では“旅作”(ANAセールス)や“海外自由組立パック”(スカイゲート。ソネットエンターテイメントグループの総合旅行サイト)が続いた。

 一方、国内旅行にも“組み立て旅行”(JTB)、“ANA楽パック”(楽天ANAトラベルオンライン)といったサービスが登場。

 日本航空(JALグループ)も、リクルートの国内宿泊予約サイト“じゃらんnet”と提携し、“JALダイナミックパッケージ”を扱っている。



価格は日々刻々と変化──余り物には福がある?


 ダイナミックパッケージを上手に利用すれば、利用者は自分の希望にほぼ近いプランをリーズナブルな価格で組み立てることができる。

 上に挙げた旅行会社のサイトのうち、GTOの例をとると、各種仲介料などが節約できて、通常のパッケージツアーに比べて1~3割程度、場合によっては半額程度の価格で提供できる場合もあるという。

 掘り出し物に出会うチャンスがあるというのも魅力のひとつだ。

 例えば、航空券やホテルの料金は、季節の変動や経済情勢、気象状況などそのときどきの要因で刻々と変化している。航空会社やホテルなどの供給側は、利益確保のため、閑散期や予定した枠が埋まらない場合には価格を下げてでも席や部屋を埋めようとするのは自明の理だ。料金は需要と供給のバランスで決まるものだからである。

 とはいえ、ダイナミックパッケージで組んだ旅が、常に最安値というわけではない。時期や組み立て方次第では、通常のパッケージツアーに比べて割高になるケースもある。

 日本の旅行業界を長く支えてきたパッケージツアーは、料金を安く仕上げるための知恵とノウハウの結晶といえるものだ。もちろん、すべてを旅行者自身が手配する個人旅行よりは安くなるが、ダイナミックパッケージは、利用者が、割高なパーツで旅を組めば、その分価格は上がってしまうのである。



自分で設計する旅というメリットを生かすのが成功のコツ


 今後は、自分オリジナルの旅を設計したい、行きたいように旅に行きたいと願う人が、今以上に増えていくだろう。特に、旅行好きと言われる団塊世代は“こだわりの旅を志向する人が多いという。旅行各社が企業努力を重ね、行き先はもちろん航空会社やホテルのネットワークがさらに広げる、旅行者の選択肢をもっと増やしていけば、ダイナミックパッケージはこれからの旅行業界で確固としたひとつのトレンドになっていくことだろう。

 ダイナミックパッケージの魅力は、まさに“自分の希望を優先して選ぶ”ことにあり、そこが通常のパッケージツアーとの大きな違いである。安くて便利で楽なパッケージツアーには、航空機やホテル、コースなどの不満が常につきまとう。パッケージツアーには“行くか、行かないかの選択肢しかないからだ。

 旅の満足度で比較すれば、“自由設計旅行”であるダイナミックパッケージのほうが、間違いなく上を行く。

(後編に続く)

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