前回まではApple TVがMac OS XをベースとしたOSで動作していること、GUIは『Front Row』を用いていることなどを述べてきた。
さてMac OS Xでは、プレインストールされているマルチメディア再生環境『QuickTime』にプラグインを追加することで、WMVやDivX、flv(フラッシュビデオ)といった様々な動画を再生することができる。
一方、AppleTVがサポートしているのは、MPEG-4やH.264といったiTunesがサポートするフォーマットだけ。AppleTVではWMVなどを再生できないのだろうか? 今回はこの点を追求した。
再生に関わる2つの問題
DivXをAppleTVで再生するためには、2つの問題が立ちはだかる。1つは、先ほども述べたように、AppleTVがDivXなどのコーデックを内蔵しておらず、そもそも再生するソフトウェアがないという点。
そしてもう1つは、Apple TVとムービーを同期するときに使う『iTunes』が、これらのムービーを受け付けないため、そもそもムービーをApple TVに転送できないという点だ。
前者については、AppleTVもMac OS Xも同じQuickTimeを動画再生エンジンに使っているため、QuickTimeのプラグインを組み込むことで解決できる。おススメのプラグインは、DivXやflvなど多種のコーデックを1つのコンポーネントにまとめたオープンソースの『Perian』だ(http://perian.org/)。
後者は少々面倒だが、こちらもプラグインをApple TVに組み込むことで解決できる。海外のハッカー、ericIII氏が手掛ける『ATVFiles.frappliance』というプラグインをAppleTVのFront Rowに組み込もう(http://wiki.awkwardtv.org/wiki/ATVFiles)。
通常、Apple TVで再生するためのコンテンツは、“Media”パーティション内に保存されるが、ATVFiles.frapplianceを組み込んだあとは、“ホーム”→“ムービー”フォルダーにコピーしたファイルを一覧して、再生できるようになる。
ムービー自体の転送には、Apple TVからHDDを抜き出してコピーしてもいいし、以前の記事で組み込んだsshdを利用し、SFTPを使ってネットワーク経由でコピーする方法もある。いずれにせよiTunesを用いず、直接ファイルをコピーすることになるためやや面倒だ。
実は労多くして益少なし?
実際にPericanとATVfilesをApple TVに組み込んだところ、確かにDivXムービーを再生できるようになった。しかし、まずHDDを抜き出してコンポーネント(最低でもsshd)を組み込む必要があるうえ、ムービーもiTunesを使わずに管理することになる。標準フォーマットの動画や音楽とは別の管理となり、iTunesの利便性も享受できず、個別のムービーをいちいち転送する手間がかかるといったように、正直、使い勝手はあまりよろしくない。
画質や音質の劣化が気にならないなら、ムービーを変換してiTunesに取り込んだ方が、結局のところ手間がかからない。そうした意味では、この方法はあまりお奨めできない。
とはいえ、興味深いのはATVfiles.frapplianceの存在だ。このツールは、Front Row(AppleTVのFinder.app)の“PlugIns”フォルダーに組み込んで使うが、そもそもMac OS XのFront Rowには“PlugIns”フォルダーが用意されていない。前回のバージョン番号といい、Apple TVのFront Rowは、どうやらMac OS Xのものとは何か違うバージョンであることをうかがわせる。
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