「AppleTV」のような製品は一般的にはメディアプレーヤーと呼ばれ、『ARM7』や『ARM9』といった組込用プロセッサーにDSPエンジンを組み合わせた“メディアプロセッサー”と呼ばれるチップを使って、専用機として開発されることが多い。
だが驚くべきことに、AppleTVの内部構造はそれとは大きく異なっていた。CPUにはインテル製の『IA32』プロセッサーを搭載し、MacBookやiMacと同シリーズのチップセットやノートパソコン向けのGPUを組み合わせている。つまり、AppleTVのアーキテクチャーはまさしく規模の小さなインテルMacそのものである。
Macと同じチップセット構成
CPUには未公開のインテルプロセッサーを使っている。ダイ形状や組み合わされているチップセットなどから判断すると、このCPUは後期型“Pentium M”のコアを用いたUMPC向けのプロセッサーと推測される。市販のCPUと異なりソケットなどによる交換の必要がないため、CPUのパッケージ(コアなどの回路収めたICチップ)は大幅に小型化されている。
MCH(メモリーコントローラハブ)にはMacBookシリーズやiMac、Mac miniにも採用されている『945G Express』チップセットの『82945GUXL』を採用しているが、パッケージはデュアルチャンネルメモリーに対応しない945GMSとひと回り小さいタイプのものだ。
ICH(I/Oコントローラハブ)は『82801GUX/ICH7』で、こちらはMacBookシリーズに使われているものの小型パッケージ版になる。メインメモリーには、256MBのDDR2-SDRAMを搭載する。AppleTVにはMac OS Xが載っているとされているが、OSカーネルであるDarwinと10フィートUIのFront Rowだけであれば、HDDを使った仮想記憶領域と合わせてこの程度の実メモリで充分と言うことなのだろう。
GPUは『GeFoerce GO 7300』
一方、ハイビジョン映像をスムーズに再生可能にするために、AppleTVはMacBookやMac miniですら搭載していないGPUを標準装備している。米エヌビディア(nVIDIA)社のモバイル向けGPU『GeFoerce GO 7300』で、64MBのGDDR3-SDRAMをビデオメモリとして確保している。
また、映像系ではアップルとしては初めて採用したHDMI出力のために、米シリコンイメージ(SiliconImage)社のHDMIトランスミッター『Sil1930』が組み合わされている。
そのほか10/100base-T対応のイーサネットコントローラーに『REALTEK RTL8100C』、サウンドコントローラーに『REALTEK ALC885』、ファームウェアブートおよびシステム管理用にフラッシュ内蔵MPU、AirMac ExtremeカードのためのExpressCardスロットなどを備えている。
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