2024年11月5日に投開票される米大統領選は、共和党のドナルド・トランプ前大統領と、民主党のカマラ・ハリス現副大統領の大接戦が繰り広げられている。
報道やシンクタンク各社が実施した情勢調査の結果をまとめている「リアル・クリア・ポリティクス」(RealClearPolitics)というサイトを確認すると、7月30日から8月14日までに結果が公開された情勢調査の平均では、ハリス氏が1.0ポイント先行している。ただ、このままハリス氏が大統領になると言えるほどのリードではないため、11月までほぼ横一線の大激戦が続くという見方が強そうだ。
こうした中で、米国時間の8月13日には、テスラのCEOなどを務める起業家イーロン・マスク氏が、Xでトランプ氏に電話でインタビューするライブイベントを開いた。世界一の富豪とされるマスク氏と、世界でもっとも影響力のある政治家の一人であるトランプ氏は何を話したのだろう。
7月16日には米ウォール・ストリート・ジャーナルが、マスク氏がトランプ氏を支持する団体に対して毎月約4500万ドル(約71億円)を寄付すると報じている。トランプ氏とマスク氏の親密な関係は、大統領選の行方を動かしうるインパクトがある。
議論は深まらなかった
マスク氏によるトランプ氏の電話インタビューは、予定より40分遅れて始まった。マスク氏は大規模なDDos攻撃が原因でリスナーがXにアクセスできなくなったと説明したが、この説明自体に疑問が示されている。
DDos攻撃は特定のサイトにアクセスを集中させ、サービスを提供できなくさせる攻撃だ。しかし、電話インタビューだけを特定して攻撃を実行することは難しいという。つまり、DDos攻撃が原因だった場合、X全体に障害が派生しているはずだという指摘だ。このため、電話インタビューに多くのリスナーのアクセスが集中して不具合が発生したとの見方が大勢のようだ。
マスク氏が主催するインタビューとなれば、電気自動車や宇宙ビジネス、AIといったテーマで踏み込んだ議論が交わされると期待してしまうが、実際のインタビューはトランプ氏が自らの主張を展開し、マスク氏が聞き役に回るという形で進んだ。
マスク氏はまず、7月13日に発生したトランプ氏の暗殺未遂事件について尋ね、トランプ氏が事件の詳細を語っている。
バイデン政権は気候変動対策の一貫として、2030年までに新車販売の50%を電気自動車にする目標を掲げ、電気自動車の購入者に対して税制優遇措置を提供するなど電気自動車への転換を促す政策に力を入れてきた。
これに対してトランプ氏は、電気自動車への転換は米国の自動車産業の労働者たちの雇用を奪うとして、批判的な立場を続けてきた。
それだけに、トランプ、マスク両氏の対話において、電気自動車についてどのようなやり取りが交わされるのか注目されたが、電気自動車をめぐる踏み込んだ議論はほぼなかった。限定的だが注目すべきやり取りとしては、トランプ氏が「みんなが電気自動車を持たなければならないというわけではないが、君の製品はすばらしい」と、テスラの電気自動車を持ち上げた場面ぐらいだろう。
マスク氏は政府の歳出を削減するための委員会を立ち上げ、マスク氏自身が委員会のメンバーになると提案し、トランプ氏が好意的な反応を示す場面もあった。
目下、勢いはハリス氏に
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