Credit Swisse Ank Kumar | Wikimedia Commons
スイスの金融大手クレディ・スイスが揺れている。
2022年10月3日、同行の株価が急落し、市場に緊張が走った。
2008年には米国の投資銀行リーマン・ブラザーズが経営破綻し、世界的な金融危機の引き金となった。
クレディ・スイスの経営不安は、14年前のリーマンショックの再来だとの声まで出てきた。
今回の経営不安説は、「アメリカの2ちゃんねる」と呼ばれる掲示板サイトRedditや、Twitterで一気に広がった。
現時点で、クレディ・スイスの経営不安が、破たんに至るほど深刻な状況にあるのかどうかは不明だ。
次の節目として注目されるのは10月27日に予定される経営計画の発表だが、しばらくSNSに振り回される形で、株価が乱高下する状況が続くかもしれない。
「大喜利状態」の掲示板
”震源地”のひとつは、米国の匿名掲示板サイトRedditだ。Redditに集う人たちは、「レディッター」と呼ばれる。日本で2ちゃんねるに集う人たちが「2ちゃんねらー」と呼ばれるのとよく似ている。
多数あるRedditのコミュニティの中でも、「ウォール・ストリート・ベッツ(wallstreetbets)」という、株を売買する人たちが集まるコミュニティの動向に注目が集まっている。
このコミュニティを確認すると、クレディ・スイスは「次のリーマン」だとして、ネタにする投稿であふれ、いわゆる「大喜利状態」になっている。
スイスの国旗は赤地に白い十字で知られるが、今後はプラスからマイナスになるとする画像もあった。
(Redditに投稿された元の画像は、4枚の写真を張り合わせたものだったが、うち2枚は「くまのプーさん」の画像が使われていたため、スイスの国旗の部分だけ切り抜いて転載した)
特定の出来事をめぐって掲示板やTwitterが「大喜利状態」になるのは、それほど珍しくないし、大喜利だけであれば世界の株式市場を揺るがすほどの影響はないようにも思える。
しかし、Reddit上の投稿が注目を集めるのは、実際に株価を大きく動かした前例があるからだ。
株価を動かした「レディッター」の結束
2021年1月、ゲームストップ社の株価が乱高下する出来事があった。
ゲームストップ事件として、記憶にある読者も少なくないだろう。
ゲームストップ社は、ゲームソフトの小売店チェーンを展開する企業だ。
近年、ゲームのデータをダウンロードする方法が広がったことで、パッケージの小売を軸とする同社の経営の先行きは明るくないと予想されている。
大手ヘッジファンドなど多くの機関投資家は、ゲームストップ社の株価が下落すれば儲かる「ショートポジション」を取っていた。
しかし、Redditのウォール・ストリート・ベットに集う人たちが、互いに情報交換し、結束して、ゲームストップ株を買い進めたことで、同社の株価は跳ね上がった。
この結果、「ショートポジション」を選択していた機関投資家は、大きな損失を受けた。
レディッターたちが株価を大きく動かしたこの事件は、個人投資家vs絶大な力を持つ機関投資家という構図で、さまざまなメディアで取り上げられた。
2022年8月15日のウォール・ストリート・ジャーナルによれば、ゲームストップは赤字が続いているが、時価総額は2年前の約40倍相当になっているという。
ゲームストップ事件を想起させる動き
最近のクレディ・スイスを巡るSNSの動きは、ゲームストップ事件を想起させるものだ。
SNSの動向による行内の動揺を打ち消すため、クレディ・スイスのCEOは社員向けにメモを流したが、このメモが流出したことで、かえって疑心暗鬼が膨れ上がる事態になっているようだ。
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