ASCII Power Review 第160回
6030万画素に電子シャッターも搭載しました
「ライカM11」実機レビュー = レンジファインダーの名機「M」の最新モデルは写りもすごかった!!
2022年01月27日 10時00分更新
カメラ好きなら一度は憧れるライカ。その最新モデルが今回紹介する「ライカM11」だ。現在では「ライカSL」や「ライカQ」などのシリーズもラインアップされているが、やはり本流は1954年に登場した「ライカM3」から受け継がれるレンジファインダー(距離連動式)のM型だろう。
前モデルの「ライカM10」ではシャッター音の静寂化やタッチ操作を追加した「ライカM10-P」、4000万に高画素された「ライカM10-R」などの派生モデルを展開していたが、今回のナンバリング変更はフルモデルチェンジを意味している。伝統を守りつつ、どのように進化を遂げたのかチェックしていこう。
レンジファインダーのMが、ついに6030万画素で電子シャッターも搭載!!
正面からみると「M3」から統一感のあるデザインで、クラシカルでありながら先鋭的にも感じる。背面の刻印など細部の造り込みは伝統工芸品のような美しさだ。
ボディーカラーはブラックのほかシルバーもあるが、シルバーのトップカバーが従来通り真鍮を採用しているのに対し、ブラックはアルミニウムに変更された。そのため、重量はブラックボディーの方が約110グラム軽く、その差は手にしたときに実感できる。アルミニウムでも決して質感が劣るものではないので、軽さ重視ならブラックがいいだろう。もちろん昔ながらの金属の感触を楽しむためにシルバーを選ぶのもありだ。
思えば初めてデジタル化された「M8」では、ボディーの厚みや重量が増加したことに不満の声もあった。その後「M10」でスリム化し、さらに今回「M11」の軽量化でついに銀塩時代と同等になった。ボディーも代を重ねることに着実に進化し続けている。
測光方式も「M6」以降採用されていた、シャッター幕の反射を測る方式は廃止され、撮像面の測光のみとなった。そのためシャッター幕は黒一色だ。
従来(といってもデジタル化されたM8以降)のグレー模様のシャッター幕が見られなくなるのは少し淋しく感じるが、撮像面測光のほうが精度の高さや測光方式の切り替えなどメリットが多いので、これも進化の一つといえる。
ダイヤルやボタン類は「M10」とほぼ同等で、いたってシンプル。デジタル化した初期はボタンや十字キーの形状で迷いがあったが、「M10」以降かなり洗練された。不要なものを徹底的に排した機能美には惚れ惚れする。
上面の「ファンクションボタン」、背面の「Fn」ボタン、そしてプッシュ式のサムダイヤルには割り当てる機能を変更できるが、設定はメニューの「カスタマイズ」からではなく、各ボタンを長押しして表示される項目から選択する。
最初はまったく気が付かず(以前「Q2」や「SL2」で体験済みだが、すっかり忘れていた)、このような独自操作も、覚えればとても便利で、ライカの魅力なのだ。
代々のしきたり「底蓋」は終了 Type-Cで充電はやはり便利なのだ
外観で最も変化があったのは底面だ。従来の底蓋を外してバッテリーやメディアを交換する方式から、「Q2」や「SL」シリーズと同様のレバー&プッシュ(この呼称が正確は不明)によるバッテリー着脱に変更された。銀塩時代からの「底蓋外し」がなくなるのは残念だが、レバー&プッシュの感触は無意味に着脱を繰り返すほど心地良いので個人的には歓迎したい。
また底面にはUSBタイプCを装備。初めは端子が剥き出しなのが気になったが、よく考えればスマホも剥き出しなので心配はいらないだろう。
この端子はバッテリー充電と給電、PCへのデータ転送にくわえ、付属の「Leica FOTOSケーブル」でiOS端末(端子はLightning)と接続し専用アプリ「Leica FOTOS」が使用できる。現状では画像の転送やリモート撮影、ファームアップデートがおこなえ、今年後半にはアップデートで更に機能が追加される予定だ。
JPEGもRAWもライカテイスト! 高感度のフイルム感がたまらない
撮像素子も6030万画素と現行のフルサイズ機では最高峰の解像度となった。またRAWでも最高画素数の6030万画素(9528×6328ドット)のほか3600万画素相当(5272×3498ドット)、1800画素相当(5272×3498ドット)が選択できる。使用用途やデータ容量によって記録サイズを変更できるのは便利かもしれない。
画素数を変えて撮影してみたが、階調再現や高感度ノイズなど画質差に大きな違いはなさそうである。となるとRAWでは最高解像度で撮影し、現像でJPEG変換する際に変更するのが合理的にも思える。この辺は人によって運用方法は異なりそうだ。
またメニュー項目を見渡して気になったのがデジタルズーム。実はこれ、画像の一部を切り出すクロップ機能で、1.3倍では3600万画素相当、1.8倍だと1800万画素相当で記録される。さらにRAWではクロップ前の画像も記録されるので、画角を元に戻すことができる。つまり「Q2」で採用しているクロップと同様だ。
当然ズームした画角はレンジファインダーでは確認できないので、ライブビューでの撮影なるが、そうなると欲しくなるのは専用の外部EVF「Visoflex 2」(9万9000円)だ。以前はレンジファインダーのM型ライカに外部EVFはミスマッチと思っていたが、クロップ機能のおかげで俄然興味が湧いてきた。
画質は6030万画素だけあって細部が精細に再現されている。ただ高解像度なので、拡大すると少しのピントのズレも気になる。
AFに慣れきった身としては、久々のレンジファインダーでのマニュアルフォーカスがたどたどしい。そのため初めは慎重にピントを合わせて撮影していたが、そうなるとレンジファインダーならではの速写性や軽快さも損なわれてしまう。
開き直ってピントを(ついでに露出やフレーミングも)気にしないようにすると、目に留まった景色に反射的にカメラを向けシャッターを切るようになった。これこそレンジファインダーの醍醐味だということを思い出した。やはりMはスナップショットのためにあるのだ。
撮影した写真を見て気が付いたのはJPEGの絵作りである。同時記録したRAWと比べると、シャープネスやコントラストが強めで露出は抑え気味、周辺光量低下もあえて残し、メリハリがありつつレトロ感もある描写になっている。
レンズによって違うだろうが(今回試用させてもらったのは「ズミルックス M f1.4/35mm ASPH.」でレンズ補正はオートで撮影)、絵作りが好みと異なるならRAWから調整してみてもいいだろう。
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