英国の投資ファンドが東芝への買収を提案したのをきっかけに、米英の機関投資家などが次々に名乗りを上げている。
英国の投資会社CVCキャピタル・パートナーズが、東芝に対して買収を提案したのは2021年4月6日のことだ。以降、機関投資家の名前が次々に報じられている。日本と海外の報道を確認すると、少なくとも7つの勢力の名前が上がっている。
●CVCキャピタル・パートナーズ=英国
●KKR=米国
●ブルックフィールド=カナダ
●アポロ・グローバル・マネジメント=米国
●ベインキャピタル=米国
●産業革新投資機構=日本
●農林中央金庫=日本
今後こうした機関投資家がくっついたり離れたりして、どのような陣営を形成し、買収合戦を展開するかが注目だ。
ただ、今回の買収提案については最終的に日本政府がブロックするシナリオも想定しておく必要がある。東芝は半導体や原子力に関連する事業を実施しているからだ。
●ねらいはメモリ?
発端は、いまから20日ほど前にさかのぼる。
アメリカのウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が3月31日付で、マイクロン・テクノロジーとウェスタン・デジタルがキオクシアホールディングスの買収を検討していると報じた。
フラッシュメモリを製造するキオクシアホールディングスは、もともと東芝メモリだったが、2019年10月に社名変更した。
WSJは、米国の半導体大手2社による買収は、3兆円を上回る規模になるとも報じている。
東芝は、キオクシアホールディングスの株式40.64%(2020年8月時点の持株比率)を保有する筆頭株主という立場だ。
米国の半導体大手2社による買収の可能性が報じられてから1週間後に、CVCが東芝に対し、全株式を買収して、非公開化すると提案した。
コロナ禍の影響で半導体の供給不足が続いていることで、キオクシアの企業価値は上がっている。
そうした中で、米国の半導体大手が東芝の買収を通じてキオクシアを取りにきたと考えていいだろう。
●投資ファンドの合従連衡
今後、注目すべきは、各国のファンドがどのような陣営を形成するかだろう。
日本政府系の産業革新投資機構と農林中央金庫の名前が挙がったことで、
日本vs欧米
という構図が頭に浮かぶが、そう一筋縄ではいかないと考えられる。
●カギは日本政府の動向
今回カギを握るのは、おそらく日本政府の動向だ。
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