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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第51回

漫画スクショ数コマはOK ダウンロード違法化案、来春までに国会通過か

2019年12月02日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 著作権侵害コンテンツのダウンロード違法化をめぐる議論が再び始まった。

 文化庁は、違法にアップロードされたマンガであっても、数コマをダウンロードして保存する行為であれば、違法にはならないとする法改正の素案を有識者会議に示した。

 一方で同庁は、雑誌に掲載されたマンガの1話の半分程度を、著作権を侵害するものと知りながらダウンロードするのは違法との考えを示している。

 文化庁はもともと、侵害コンテンツのダウンロードを全面的に違法とする法改正を目指していたが、マンガ家を含む関係者からの強い反発で断念していた。

 同庁は、有識者会議の議論がまとまり次第、年明け以降の通常国会に著作権法の改正案を提出するとみられる。

●新しい有識者会議で素案示す

 文化庁が新たな方針を示したのは、2019年11月27日に開いた有識者会議「侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会」でのことだ。

 今回の素案で、侵害コンテンツのスクリーンショットそのものが、全面的にOKとされたわけではない。同庁が適法とする考えを示しているのは、次のような「軽微」なダウンロードだ。

・数十ページで構成されるマンガの1コマ〜数コマ
・長文の論文の数行

 一方、次のような行為については、「軽微とは言えない」として、違法になるとの考え方を示している。

・マンガの1話の半分程度
・論文1本の半分程度

●「素案」はそのまま「法案」になるか

 まだ「素案」を有識者に示した段階で、手続き的には法案の姿は変わる可能性がある。しかし、霞が関で法律をつくる手続きで、担当の省庁が作成し、有識者会議に示した素案はよほどの反発が生じない限り、大きな変更はなされずに法案になる。

 とくに、ダウンロード違法化は一度は法案をつくったものの、3月に国会提出を見送ったため、今回は二度目の挑戦にあたる。文化庁としては、是が非でもすんなり法改正にこぎ着けたいだろう。

 とすれば、現在の「素案」のままで、法案になる可能性が極めて高いと考えられる。

●ジャンプの最新号で考える、なにが違法か

 老若男女を問わず、マンガを読む方は多いだろう。最近はスマホ、タブレット、PCでマンガを読む機会も増えてきた。

 では、日常的な行為で、何が違法で何が違法にならないかは、整理しておく必要がある。具体的に考えてみたい。

 首都圏では、11月25日月曜前後に最新の『週刊少年ジャンプ』(52号)が発売された。最近の少年ジャンプは、スマホアプリ「少年ジャンプ+」でも閲覧が可能だ。

 日本でもっとも読まれているマンガ「ONE PIECE」の第963話も掲載されている。第963話の分量は17ページある。

●アップロードはすでに違法

 このアプリは機能上、ジャンプの各号や個別のマンガをファイルとしてダウンロードすることはできないことになっている。

 そこで、ONE PIECE最新話の17ページ分をすべてスクリーンショットで保存して、自分のブログにアップロードした場合はどうか。これは、違法アップロードにあたる。

 注意がいるのは、アップロードはすでに違法とされている点だ。いま議論になっているのは、違法にアップロードされたコンテンツをダウンロードする行為を法的にどう扱うかだ。

●数コマはOK、数ページはNG?

 最新話で印象的な場面を、だれかがスクショして3コマ切り取り、ツイッターにアップしていた。この3コマをダウンロードして、自分のPCやスマホに保存するのは、現行の文化庁の素案からは「適法」と判断されそうだ。

 このツイッターの投稿自体を資料として残しておきたくて、表示されているページ全体をスクショして、この3コマが結果として「写り込んでしまった」場合も適法と判断される。

 一方で素案から考えると、17ページ全てを海賊版サイトからダウンロードするのは違法になる。ただし、一応、「違法と知っていて」という要件も付けられているため、知らずにダウンロードした場合はOKということになる。

 ただし、「知りませんでした」で通るかというとこれも難しい判断になるだろう。

 一方で、素案では「半分程度」も違法になると想定している。17ページのうち9ページは違法、8ページは適法ということになるのだろうか。

 「半分」という条件設定から思い出すのは、図書館でのコピーだ。埼玉県立図書館のウェブサイトには「調査研究」が目的であれば、目次などを除いて「本文の半分まで」複写ができるという条件が掲載されている。

 おそらく日本中の図書館が同様の条件でコピーを認めている。文化庁のダウンロード違法化の素案も、こうした運用を念頭に置いてのことだろう。

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