ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」のZOZOを買収するため、株式公開買い付け(TOB)を実施すると発表して市場を騒がせたヤフー。2019年9月9日、同社は地味ではあるが、重要な施策を発表している。プライバシーポリシーの改定だ。
ヤフーは6月、ユーザーの消費行動、信用などを数値化する「Yahoo!スコア」を発表した。しかしこれはユーザーの意思に関わらず、拒否をしなければスコアを算出する仕様だったため、反発が起きていた。
●4つのカテゴリーで「採点」
6月にヤフーが発表したスコアの仕組みは次のような内容だ。まず、ユーザーを4つのカテゴリーで採点する。
・本人確認
・信用行動
・消費行動
・ヤフーの利用度
ヤフー側からはっきりとした説明はないが、本人確認(KYC)の度合いは、身分証明証などでの本人確認が完了しているかが、ひとつの基準となるだろう。
「Yahoo! JAPAN ID」をつくるには、メールアドレス、郵便番号、生年月日、氏名を登録する必要があるが、厳密な意味での本人確認は求められない。
一方で、通販を利用しているユーザーであれば、決済に使っているクレジットカードの番号が分かる。
ネット銀行を使っていたり、ヤフーのクレジットカードを利用していたりするユーザーの場合は、運転免許証や保険証のコピーなどを提出しているだろう。
年収や、会社名、勤続年数、役職などの情報を送信している可能性も高い。
名前とメルアド程度しか分からないユーザーよりも、本人確認が終わっているユーザーのほうが企業にとって価値は高いはずだ。
信用行動は、クレジットカードの料金をきちんと支払っているかや、勤務先などもスコアに影響しうる。
こうした情報から算出した4分野を合算する。
7月に「Yahoo!スコア」を導入した時点で、ユーザーのスコアを算出。外部の企業への開示に同意したユーザーについては、スコアを提携先の企業に提供する仕組みだった。
●仕事発注サイトがスコアを活用
当初、公表された提携先の企業のひとつは、仕事発注サイト「ランサーズ」。
フリーランスの人と発注者の企業や個人をマッチングする際に、スコアを活用するという。
「オレ/わたしは仕事ができる」と自信のある人はスコアの提供に同意をしたかもしれない。一方で、低いスコアをつけられたら、仕事に影響があるかもしれない。
このあたりは、スコアの提供に対して、反発と容認の意見が分かれるところだろう。
提携先の企業については、「A社はOKだけど、B社はイヤ」など個別に提供の可否をユーザー側が決めることができる。
主に反発が出たのは、同意がなくてもスコアを算出する点だった。Yahoo!のIDを保有している人はみんなが採点の対象だった。
強い反発を受け、ヤフーは、有識者らで構成するアドバイザリーボードを設置し、個人データの取り扱いについて経営陣と議論をはじめた。
この結果、スコアの提供に同意していない人については、スコアを消去することにした。
●ヤフーは「透明性の向上」強調
アドバイザリーボードで座長を務める東京大学大学院法学政治学研究科の宍戸常寿教授は、ヤフーのプレスリリースの中で次のようにコメントしている。
「残念なことに、国外の『スコアリング』の中には、ひとりの人間をトータルに格付けして、個人の自律を傷つけたり、社会統制に使われたりするものもあります。ヤフーは、それとは違い、ユーザー一人ひとりにメリットを提供するためのスコアサービスを目指しているはずです。今回の見直しを機会として、そのようなスコアサービスの新しい姿を提示してもらいたいと思います」
強い批判を受けて、ヤフーが強調するのは、透明性の向上だ。
同意がなければ採点はせず、スコアを外部にも提供しないヤフーの対応は、たしかに前進とは言えるだろう。今後、ユーザーが自分のスコアを確認できるようにもするという。
しかし、「優良なフリーランスは、仕事が増えるかも」との趣旨でメリットは強調されているが、自分のスコアがなぜ低いのか、あるいはなぜ高いのかについての情報は見えない。
●アメリカでは情報収集者に重い義務
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