撮影:Marco Verch
仮想通貨(暗号資産)の交換所バイナンス(BINANCE)で、日本時間8日午前2時15分ごろ(UTC、協定世界時7日午後5時15分ごろ)、大規模なハッキング被害があった。同社がWebサイトを通じて発表した。
バイナンスといえば、百数十種類の仮想通貨を取り扱う、世界最大級の取引所のひとつだ。
同社の発表によれば、ハッカーが約7000BTC(日本円換算で約45億円相当)のビットコインを不正に引き出したという。
バイナンスのCEOジャオ・チャンポン(通称CZ)氏は、ツイッターの動画中継で、ハッキングの経緯や、同社の対応策などを説明し、対策には1週間ほどかかるとの見通しを示した。
CZ氏は中継の中で、「おそらく最も高度な方法を用い、ハッカーはとても辛抱強い」と述べている。
●ホットウォレットが狙われた
日本で起きたコインチェックやテックビューロの事件と同様に、バイナンスも、インターネットに接続した状態で仮想通貨を管理する「ホットウォレット」が狙われた。
CZ氏の説明によれば、ハッカーはフィッシングなどの手口で多数のユーザーアカウントを入手し、犯行時刻に、バイナンスのホットウォレットから、ハッカーが保有するビットコインのアカウントに送金したとされる。
送金の直後、システムが複数の警告を発したため、同社は仮想通貨の出金を停止する措置をとった。
●不正引き出し分は全額補償
バイナンスは150種類を超える仮想通貨を交換しているが、ハッキング被害を受けたのはビットコインのホットウォレットだけで、その他のウォレットには影響がないとしている。
今回盗み出されたビットコインは、バイナンスが保有するビットコインの2%にとどまったという。とすると今回盗まれた45億円の50倍、単純計算で2250億円相当のビットコインを保有していることになる。
世界最大級の交換所が大規模なハッキング被害を受けたことで、ビットコインを始めとした主要な仮想通貨は一時的に値を下げたが、その後持ち直している。
バイナンスは、不正に引き出されたビットコインについては、ハッキングの被害に備えるファンドを活用して全額を補償するとしている。
●「高い透明性の維持」を強調
今回注目すべきなのはバイナンス側の対応だろう。
事件発生後、すみやかに自社のブログで報告。CEOのCZ氏もツイッターで経緯を報告する形で「会見」をした。
CZ氏が強調していたのは「高い透明性の維持」だ。
ブロックチェーンは改ざんがほぼ不可能とされ、誰でも取引の流れを確認できる。透明性の高さは仮想通貨の大きな強みのひとつだ。
一部の大口保有者による価格操作疑惑など、いまだに透明性とはほど遠い話もあるが、仮想通貨が広く浸透するためには、CZ氏が強調する「高い透明性の維持」は、きわめて重要な要素だ。
●日本の取引所の対応と大差
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