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個人のデータを預かって管理し、本人の希望に沿って他の事業者にデータを提供する「情報銀行」。2019年3月末までに最初の認定企業が誕生する予定だったが、認定のための手続きは少し遅れているようだ。
認定を担う日本IT団体連盟(IT連)の情報銀行推進委員会によれば、2018年12月21日に認定申請の受付を始めた。当初は、3月中に最初の認定をする計画で進めていたが、現時点では2019年の「春ごろ」にスケジュール感を変更した。
●前例のなさが課題
他人の個人情報を一元的に預かる以上、高度なセキュリティや会社内部の管理体制が求められる。
認定のスケジュールについて、IT連の担当者は「申請事業者という相手があるプロセスであることから、スケジュールは確定的には決められず、柔軟に対応することになる」と説明する。
推進委員会側が、書類審査と聞き取り、認定を希望する企業の現地審査などを経て、認定の要件を満たしているかを判断する。認定の手続きを通じて、情報銀行への参入を目指す事業者にはどんな共通の課題があるのだろうか。IT連に質問したところ、次のような回答があった。
「情報銀行そのものが前例のない事業であり、IT連の認定を受けるというのは、申請事業者にとって、これまでに例のない取組みとなるので、その点が課題になっていると考えられる」
認定を受ける企業にとっても、認定をするIT連にとっても、初めての取り組みだ。時間がかかるのは、理解できる。前のめりで認定を出して、あとで問題が続出するよりは、慎重なプロセスが優先されたと受け止めていいだろう。
●説明会に参加したのは約200社
情報銀行への注目度は高い。
顧客に関するデータが貯まるビジネスを展開している、さまざまな業態の企業が参入を目指しているようだ。
三菱UFJ信託銀行や電通などが参入の準備を進めているが、銀行や広告会社だけでなく、イオングループ、日立製作所、富士通、大日本印刷などの名前が挙がっている。
IT連が2018年10月に開いた説明会に参加した企業数は約200社にのぼる。実際、12月に認定を申請した企業はどんな分野で、何社ぐらいあるのか。
その点についてIT連は「ノーコメント」と回答した。
情報銀行をめぐって、もうひとつ新しい動きがある。IT連が認定対象に追加した「P認定」という仕組みだ。
●準備段階でも認定が出る「P認定」
Pは、「可能(Possible)」、「計画(Plan)」、「準備(Preparation)」の意味だという。
サービスを始める準備ができている企業にも、あらかじめ認定を出しておく仕組みのようだ。
先に認定は取っておき、サービス開始のタイミングについては、利用者の反応や、他社の動きなどを見て判断するといった使い方ができそうな制度だ。
「スーパー大辞林」で「春」を調べたところ、現在使われている太陽暦では、3月から5月が春にあたるようだ。
遅くとも5月末までには、最初の認定情報銀行が誕生すると考えられる。
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