Gyges Labs(ジェイジス・ラボ)が開発したスマートAIリング「Vocci(ヴォッチ)」の日本上陸発表会が、8月25日に六本木蔦屋書店で開催された。
Vocciは録音機能を備えた指輪型のデバイスで、単に録音や文字起こしができるだけでなく、ユーザー自身のリアルな文脈(コンテキスト)を理解して、最適な提案や要約をができるライフログデバイスとして開発されている。
「全ての人をスーパーヒーローに」したい
発表会にはGyges Labの共同創業者でCOOを務めるDomingo Deng氏が登壇。同社の成り立ちと日本市場への期待を語った。
Gyges Labsはシンガポールに本社を構え、シリコンバレーにAIおよびソフトウェア開発拠点を置くグローバル企業だ。「全ての人をスーパーヒーローに」というミッションを掲げており、社名のGygesは、プラトンの著書『国家』に登場する、所有者に無限の力を与えると言われるアイテム「ギュゲスの指輪」に由来しているとのことだ。
経営陣にはスタンフォード大学で博士号を取得し東京大学での講義した経験もあるCEOのJY氏や、Apple Vision Proの開発に貢献したCPTOのFelix氏、元GoogleシニアリサーチサイエンティストのSiyuan氏など、極めて強力なバックグラウンドを持つメンバーが名を連ねる。Domingo氏自身も、コンシューマーエレクトロニクスやグローバルサプライチェーンの分野で20年の経験を持ち、これまでに世界中で1000万台以上のデバイスを世に送り出してきた実績を持つ人物とのこと。
同氏は「AIはパソコンやチャットボックスの裏側に限られた存在ではなく、我々の日常生活のコンテキストを真に理解し、必要に応じて手助けしてくれる存在であるべきだ」と強調する。アメリカ市場では直接販売(D2C)モデルで成功を収めたが、日本市場への参入にあたっては、日本の消費者が重視する品質、プライバシー、長期的なサポート体制を考慮し、37年の実績を持つフォーカルポイントをパートナー(販売代理店)に迎えたB2B2Cモデルを採用したことも明らかにした。
「あなた」を知らないAIに、リアルワールドの文脈を与える
製品については、国内市場への展開を担当するフォーカルポイントの田中氏が登壇して説明。Vocciがもたらす新たなAI体験について解説した。
近年、AIの進化は目覚ましく、世界中のあらゆる情報を瞬時に引き出し、文章作成やアイデア出しをサポートしてくれるようになった。しかし、そんな賢いAIにも一つだけ知らないことがある。それは「あなた=ユーザー自身」のリアルな日常だ。世界中の情報を参照して回答を返してくれるAIでも、「あなたが今日誰と話し、どこへ行き、何を感じたのか」というパーソナルな文脈(コンテキスト)をすぐ説明してくれるわけではない(Gygesはこれをリアルワールドコンテクストレイヤーと称しているが、要は入力しないとAIは何もできないということを示している)。
また、ユーザーの行動は、スマートフォンの写真やカレンダー、SNSなどで、デジタル化された記録として点在してはいるものの、それらは分断されている。Vocciは、まさにこの「現実世界(リアルワールド)」と「AI」をつなぐためのインフラストラクチャーとして機能するデバイスである。
指先に装着したVocciで日々の会話や出来事を記録しておけば、ユーザーのライフログがAIに共有される。
これにより、AIは単なる汎用的なアシスタントから、あなたの世界の文脈を深く理解する真のパーソナルエージェントへと進化するのだ。創業者JY氏のビデオメッセージでも語られた「We are the context looping real life.(現実世界をループするコンテキスト)」というスローガンは、現実で起きた出来事を記録し、AIを通して整理・要約され、再び次のアクションとして現実世界へ還元されるという、新たな生産性のループを意味している。
ジュエリーのような質感と、充実のハードウェア性能
Vocciは、常に身につけるデバイスとして、デザインと機能性の両立に徹底的にこだわっている。航空宇宙グレードのチタン素材を採用し、ジュエリーのような高級感を持たせるとともに、低刺激性も追求。IP67の高い防塵防水性能を備えており、手を洗う際も外す必要がなく、着用したままシャワーも浴びられる。
操作は非常にシンプルで、人差し指に装着し、親指でタップするだけで完結する。ダブルクリックで録音の開始・停止、録音中の1回クリックで重要なシーンの「ハイライト」記録、そして長押しでVocciのオリジナルのAIを呼び出すことができる。
小さな指輪でありながら、内蔵された高感度マイクの性能も高く、5m離れた場所からの音声もクリアに拾い上げるという。これなら大人数での会議でも問題なく使用できそうだ。また、リング単体にストレージを内蔵しており、スマートフォンと接続していなくても、最大8時間の連続録音が可能。飛行機の中など通信環境がない場所でも、ふと思いついたアイデアを即座に記録できるのが良い。充電ケースを併用すれば最大32時間の使用が可能で、急速充電にも対応している。
100以上の言語に対応し、様々なアプリとシームレスに連携
田中氏によるデモンストレーションでは、実際のアプリ画面が公開された。Vocciで録音された音声データはスマートフォンを介してクラウドへアップロードされ、スピーディーかつ高精度に文字起こしが行われる。対応言語は100言語以上だ。特筆すべきは、日本語、英語、中国語など複数の言語が飛び交うミーティングであっても、正確に言語を認識して文字起こしを行い、ユーザーのメイン言語(例えば日本語)で自動的に要約をしてくれる点だ。
要約機能も強力で、概要、トピック、チャプター、キーポイント、ToDo、未解決事項、決定事項などに自動で分類・整理される。Markdown形式でのエクスポートも可能だ。
さらに、MCP(Model Context Protocol)に対応しており、ChatGPTやClaudeなどの主要なLLMのチャット画面からVocciのログデータを読み込み、Googleカレンダー、Notion、EvernoteなどMCP対応の生産性向上アプリと連携させられる。
デモでは、ChatGPTからVocciのサーバーにアクセスし、過去の会議録を呼び出して質問に答えさせる様子や、Vocci AIに口頭で指示を出してGoogleカレンダーとの連携設定を自動で行わせる様子が披露され、その利便性の高さが示された。
もちろんセキュリティにも配慮しており、ローカルでの暗号化、ユーザーによる同期設定の管理、GDPRやSOC2(申請中)に準拠したセキュアなサーバーでの保存など、プライバシーに最大限の配慮がなされている。
質疑応答で見えた強みと今後の展望、クラウドファンディング情報
質疑応答では、製品名や機能に関する多くの質問が寄せられた。まずは「Vocci」という名前の由来について。これは「Voice(声)」から来ており、声を可視化するという意味が込められている。日本では親しみやすい響きとなっている点も言及された。なお、日本語で「ぼっち」というと「ひとりぼっち」を示す。商標は取得しているが、カナ表記としてはヴォッチを使っていくという。
また、Apple Watchなどの他デバイスとの差別化について問われると、「指輪という常に相手から見えるフォームファクターであることが重要」との回答があった。例えば、海外のビジネスパーソンと握手をする際、自然にリングが目に入り「今から録音してもいいですか?」とコミュニケーションのきっかけになるなど、社会的な受容性を考慮したデザインであることが強調された。
サブスクリプションプランに関する質問では、無料のスタータープラン(月5時間の文字起こし、ストレージ2GB)に加え、Plusプラン(月額3000円/年額2万2000円、ストレージ10GB)、Proプラン(月額6000円/年額4万5000円、ストレージ20GB)が用意されていることが明かされた。やや高価なサブスクではあるが、月額料金に見合うだけの強力なAI機能と複数会話の横断的検索などが提供されるとしている。
Vocciの日本先行販売は、クラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING」にて、2026年9月30日午前11時より開始される予定。一般発売時の価格は4万9990円を予定しているが、GREEN FUNDINGでは最大43%オフの2万9990円からの支援が可能だ。支援者には事前に指のサイズを測るサイジングキットが送付され、ピッタリのサイズを選べるほか、すべての支援者に無料で1ヶ月分のProプラン利用権を付与する。
日常のあらゆる会話やアイデアを漏らさず記録し、AIの力でアクションへと昇華させるVocci。
AI録音デバイスと言えば、これまでは文字起こしの正確さや議事録作成のしやすさが注目されがちだったが、ライフログのデバイスとして、日常のシーンや気づきを新しいアクションにつなげ、データの再活用ができる点を明確に打ち出している点に特徴がある。今後の展開が楽しみだ。
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります





















