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業務を変えるkintoneユーザー事例 第331回

アプリを作ってどんどん自慢し会話を作る

開くだけで5分かかるExcelからの脱却 社長に直談判したパートスタッフがチャレンジしたアプリ開発

2026年09月16日 13時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水 写真提供●サイボウズ

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株式会社セラヴィ 総務 宮本陽子さん

 とにかく縦に長いExcelへの入力。どこに入力すればいいのかわからず、必要な入力項目は足りない。10年分のデータが詰まったExcelは開くだけで5分かかる。この重いExcelをなんとかしたいと考えた事務部門のパートは、ずっと放置されていたkintoneを改めて開いてみた。

 kintone hive 2026 tokyoのトップバッターとして登壇したのは、医療用ウィッグ「アンベリール」を手がける通販会社「セラヴィ」の宮本陽子さん。プレゼンでは、業務効率の妨げになっていたExcelをkintoneに置き換えるため社長に直談判してアプリを構築。時短を実現した事例について語られた。

税理士が作ったアプリは使われず、10年分358シートのExcelだけが重くなっていった

 セラヴィは、東京都八王子市で医療用ウィッグ「アンベリール」を手がける通販会社だ。顧客の自宅に試着用のウィッグを送り、実際に商品を見てから購入できるようにしている。従業員は15人で、技術部門が試着用と購入用のウィッグのカットやセットを担い、事務部門が電話対応や書類作成など、それ以外の業務全般を受け持っている。宮本さんは、その事務部門でパートとして9年ほど働いてきた。

 kintoneの導入は、あっさり決まったという。

kintone hive 2026 tokyoのトップバッターは株式会社セラヴィ

「税理士さんが、書類管理や売上管理が簡単になりますよ、僕がアプリを作りますよと言ってくれて、社長もいいですねとサクッと導入が決まりました。その時は、なんていい人だろうと思ったんです。ただ正直に言うと、そのアプリはとても使いにくかった」(宮本さん)

 画面はとにかく縦に長く、どこに入力すればいいのかわからない。それでいて必要な入力項目は足りず、Excelへの入力もやめられない。結果として、入力の手間が増えただけに終わってしまった。その作業は宮本さんも担当することになり、作業を進めるほど、データの重さと無駄の多さを感じるようになった。やがて、同じ内容を二重に入力しなければならないkintoneは、使われなくなってしまった。

 Excelのほうにも問題があった。10年分のデータがたまったファイルは358シートに膨れ上がり、開くだけで5分以上かかるようになっていた。誰かが入力していると作業ができず、順番待ちも発生する。同じ納品書が何種類もあり、誰が作ったのかもわからず、後から見返すのも最新の状態に保つのも大変だった。いろいろな人が何度も同じ内容を手入力するため時間がかかりすぎ、入力ミスも多かった。他の人に元データのExcelファイルを持っていかれて入力できないこともあったという。

10年分で358シートに膨らんだExcelは、開くだけで5分以上かかっていた

5年間放置していたkintoneでアプリ開発にチャレンジした

 重いExcelを何とかしたいと考えた宮本さんは、ずっと放置していたkintoneをあらためて開いてみることにする。名前や日付など必要なフィールドを配置し、Excelを読み込める形に整えて、巨大なファイルを20回に分けて取り込んだ。こうして初めてのアプリが完成。簡単なものだったが、5分も待たずに内容を確認でき、誰かが使い終わるのを待たなくてよくなった。当たり前のことが、ようやくできるようになったのだ。

 もっとも、反省もあった。何でも大きいほうがいいと考えて、すべてのフィールドを「文字列(複数行)」で作ってしまい、後からつなげたり参照したりするのに苦労した。フィールド名を変えたらフィールドコードも合わせて直しておかないと、後で苦労することも学んだ

 それでも、ほかの課題も解決できそうだという手応えが得られた。伝票の入力は1回で済むかもしれない。売上を入力したら納品書と領収書も作れるかもしれない。誰かアプリを作ってくれないものかと考えた宮本さんは、社長と事務のベテラン社員に相談する。しかし社長からは、前に導入したけれど結局使っていないだろう、変化を嫌う人もいるからExcelでいいのではないか、という反応が返ってきた。ベテラン社員からも、新しいことは難しいから無理をしなくてもいい、と言われてしまう。

 そこで、kintoneに詳しい人を紹介してもらおうと、あの税理士さんに相談してみる。返ってきたのは、「アプリを一つ作れたのなら他のアプリも作れる、Excelよりミスが減る、宮本さんが作ればいい」という言葉だった。おだてられた宮本さんは、自分で作ってみようと決意し、今度は社長を説得しにいく。

「Excelのことは、すごく無駄だと感じています。kintoneを使わないともったいないですし、みんなが協力してくれたら、ものすごい時短になります。本当に何とかしたいので、私がアプリを作ってみてもいいですか」(宮本さん)

 社長は、できそうならやってみてくれないか、と言ってくれたという。

巨大なExcelを20回に分けて読み込み、初めてのアプリを作り上げた

入り口を1つのアプリにまとめ、ほぼマウスだけで進める形に作り込んだ

 まず宮本さんが決めたのは、顧客情報リストのアプリを入り口にして、ここからすべてを始められるようにすることだった。アクションボタンで次のアプリへ進めるようにし、わかりにくいところにはラベルで説明を書き添えた。上から順番に入力していくつくりにして、ラジオボタンやドロップダウン、ルックアップを使い、ほぼマウスだけで操作できる形に仕上げた。発送先はボタン1つで変更でき、入力そのものも減らしている。

 日割りの計算にも挑戦した。日付の計算には少し癖があり、1つのフィールドに日付と曜日をまとめて入れようとしたところ、とても長い計算式になってしまったという。商品番号を入れると写真が表示される仕組みも作り、問い合わせにスムーズに対応できるようになった。運送会社の検索ページへ飛ぶボタンも用意した。kintoneに伝票番号を入れておけば、番号が入力された状態でWebページが開く。どちらもJavaScriptで動かしており、写真の表示にはプラグインも組み合わせている。

入り口となる顧客情報リストのアプリから、アクションボタンで次のアプリへ進む

 アプリが増えても迷子にならないよう、入り口のアプリからはすべてのアプリへ移動でき、どこからでも入り口へ戻れるようにした。ポータルも見やすさを重視し、すぐに確認したいアプリはお知らせに貼り付け、入り口のアプリを一番上に表示している。アプリ名の頭に番号を振ってよく使う順に並べ、アイコンも用途ごとに色を変えた。

 ポータルを複数作れることを知ってからは、2つ目のポータルにも同じような内容を置いて、どちらが使いやすいかを検証している。今のところは、新しく作ったほうが配置の自由度が高いと感じているそうだ。

 ブックマークはこれまで使っていなかったが、絞り込んだ条件のまま登録できると新しく入った社員が気づいてくれた。試してみるととても便利で、もっと早く使えばよかったと悔やんだという。

ポータルは番号順とアイコンの色分けで、よく使うアプリから並べた

30人分の試着入力は180分から60分になり、社内の会話まで増えた

 効果は数字にはっきり表れた。試着の入力は30人分で180分かかっていたものが60分になり、購入の入力は1人分23分かかっていたものが5分になった。書類の出力も1分かからずに終わる。元データの取り込みでは、メールで届いたデータをExcelに貼り付けていたが、これもボタン1つで済むようになった。帳票作成にはトヨクモが提供するkintone連携サービス「プリントクリエイター」を使っており、画像も載せられるため仕上がりもきれいだ。

 宮本さんがアプリを作るうえで心がけていたことは、シンプルだ。

「パソコンが苦手でも使いやすいようにしよう、何でも提案してもらおう、要望をすぐに取り入れよう。そう思いながら作っていました」(宮本さん)

 もちろん失敗もあった。フィールドの種類を揃えていなかったために、アクションでうまく飛ばなかったこと。どのフィールドを参照したのか覚えていないこと。壮大なIF関数より細切れの関数にしたほうがうまく表示される場合があるものの、その分フィールドが増えてしまうこと。あれこれ試したフィールドやテーブル、アプリの残骸が、怖くて消せないこと。実際に使っているのは、作ったアプリの半分ほどだという。

試着の入力は30人分180分から60分に、購入の入力は1人分23分から5分になった

 kintoneのスペースには、印刷するだけで使える書類をまとめて置いた。すると、どこにあるかわからないので印刷してほしいと言っていたベテラン社員の反応が変わる。こんな書類も作ってあったのかと驚き、自分で印刷してくれるようになったのだ。メールの送受信をkintone上で行える有償オプション「メール共有オプション」も導入した。1台のパソコンからしかできなかった作業が、どの端末からでもできるようになっている。

 入力がスムーズになってミスが減り、情報はすぐに見つかる。仕事を翌日に回すこともなくなり、書類が迷子になることもない。どんな業務にも進んで取り組む空気が生まれ、相談が増えたことで会話も弾むようになった。社内はとてもいい雰囲気になったという。

「ダンボールを開けたり閉めたりしていた私ですが、いろいろなことを任されるようになりました。基本的なPC操作しかできず、一人でkintoneに立ち向かうのは不安でいっぱいでしたが、ヒントを得たり、ホームページで調べたりしたことが形になる、kintoneでしか味わえない感動がありました。本当にアプリ作成が楽しかったんです」(宮本さん)

 最後に宮本さんは、kintoneに出会い、一緒に働く仲間に喜んでもらえたこと、そしてkintone hiveの舞台に立てたことが本当に嬉しいと語り、セッションを締めくくった。

一緒に働く仲間に喜んでもらえたことが嬉しかったと語り、セッションを締めくくった

質疑応答

セッション後、サイボウズの蒲原大輔さんから宮本さんに質問が投げかけられた

サイボウズ 蒲原大輔さん:アプリを作ったものの、入力の負荷が上がって現場に使われないというのは、kintoneのあるあるだと思います。新しいツールは嫌だなというモードから、これなら使ってみようとなったターニングポイントは何かありましたか。

宮本さん:やはり、アクションボタンで飛ばせるようにしたことですね。1枚にたくさんの項目があるのではなく、1つが終わったらこちら、これが終わったらこちらと順番に進められるようになったので、とっつきやすくなったのかなと思います。

蒲原さん:kintoneを導入しただけでは会話は生まれないと思うのですが、雰囲気を良くするポイントはありますか。

宮本さん:アプリを作ったら、どんどんみんなに自慢しました。まず、「これを作りました。すごく使いやすいので、使ってください」と言いました。そのあとに、「ここがわかりにくい」「使いにくい」「もっとこうしたい」ということがあったら教えてください、と伝えました。とにかく自慢しました。

蒲原さん:新しいツールに身構えてしまう方も少なからずいますが、そうした方にはどう接しましたか。

宮本さん:最初は、入力してもらうのではなく、入力済みのものを見てもらう形にしました。「これをこうすると、この内容を調べられるから、ここを押してみて」という形で案内していくうちに、だんだん入力もできるようになっていきました。

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