業務を変えるkintoneユーザー事例 第321回
三杉の悲願は変革の仕組みを全国に届け「ふたたび業界を花開かせる」こと
街の制服屋さんだってまだまだ戦える kintone×ECで「地獄の繁忙期」の残業ゼロ、売上も倍に
2026年07月24日 09時00分更新
制服業界が少子化という逆風に晒される中、昔ながらの「街の制服屋さん」であるミスギ学校服も苦しんでいた。情報共有の手段は、各店舗から車で運ばれる紙の伝票のみ。年間売上の3割が集中する「地獄の6日間」は忙しさのピークを極め、「もう限界」と社員が去っていく。
サイボウズは、kintoneユーザーの事例イベントである「kintone hive 2026 nagoya」を開催。5番手として登壇したのは、学生服専門店を手掛ける三杉の代表取締役・杉浦力さんと企画室 室長・杉浦成さんの親子である。2人が披露したのは、kintone×ECの仕組みによって「繁忙期の残業ゼロ」「売上倍」を達成した逆転ストーリーと、その先に見据える制服業界の未来だ。
紙伝票での情報共有、地獄の繁忙期が“当たり前”だった制服業界
創業100年の歴史を持つ三杉は、愛知県南部エリアに「ミスギ学校服」を6店舗展開する学生服専門店である。地元に密着した制服屋さんとして、学校制服や通園・通学用品の企画から製造、販売までを手掛けている。
「私たちの仕事は、ただ制服を売るだけではありません。入学前の採寸から在学中の買い替え、お直しに至るまで、卒業までの長い時間をかけてご家族に寄り添い続ける仕事です」(杉浦成さん)
しかし、少子化という逆風が吹き荒れる制服業界の中で、三杉もまた「アナログな昔ながらの小売店」として苦しんでいた。店舗間の情報共有は、車で運ばれる紙の伝票。それが唯一の手段では、タイムリーな経営判断など到底望めなかった。
最大の課題は、毎年3月に訪れる「超繁忙期」だ。わずか6日間の売上が年商の3分の1を占めるほどで、当然、現場は多忙を極める。「もう限界」と会社を離れた社員は一人や二人ではなかった。社長の杉浦力さんも、「これがこの業界の当たり前」と言い聞かされ、半ば諦めの境地にあったという。
もうひとつ、深刻な負担になっていたのが、刈谷市内の幼稚園16園、約1500名を対象とする制服販売だ。将来の顧客獲得のために始めたものの、リソースやコストを激しく圧迫していた。各園での採寸から注文受付、手書き入力、商品準備、現金の集金まですべて手作業で、約1か月かかり、毎日20名のアルバイトを投入するほどだった。
しかし、こうした窮地に転機が訪れる。2019年、地元商店街の仲間からkintoneを紹介されたのだ。「三杉さんでも絶対できるよ」と勧められたものの、IT経験がゼロだったため、最初は気後れしたという。それでもkintoneによる業務改善へ踏み出したのは、「このままではダメだ」という強い危機感からだった。
家族を見守る仕事だからこそ“家族データ”をすべての土台に
kintoneで最初に取り組んだのは、家族データの一元管理だった。
「入学式で緊張していたお子さんが、卒業式には晴れやかな表情で制服の袖を通してくれる。そして数年後、弟さんや妹さんがお店に来てくれる。一人ひとりのお子さんの成長をご家族と共に見守ることこそが、私たちの仕事です。だからこそ、保護者、お子さん、ごきょうだいの情報を温かく丁寧に管理することが、すべての基盤になると考えました」(杉浦成さん)
まずは、「保護者」アプリと「学生」アプリを作成。そして双方の情報を紐づけ、誰の何番目の子どもでサイズはいくつかを、一画面で把握できる「ご家族データベース」を構築した。
ただ最初は、「テーブル」「ルックアップ」「関連レコード」といったkintoneの基本的な標準機能でさえ、思い通りに動かせず、心が折れかけたこともあったという。それでも、「まずは小さく作って育てる」というアプローチを貫き、半年かけて業務に定着させていった。
次に作成したのは「受注情報」アプリだ。各店舗の社員が販売実績を入力するアプリで、長年続いていた「車で紙の伝票を運ぶ業務」が不要になった。「まさに革命です。今日どの店で何が何枚売れたかが、本店にいながらすぐに確認できる。当たり前が変わった瞬間を味わいました」(杉浦力さん)
しかし、この辺りから三杉のkintone活用は次なる壁にぶつかり始める。原因は、やはり紙だった。店頭で顧客とやりとりする“受注の入口”が紙のままなため、記入ミスやムダが残り続けていたのだ。「この入口からデジタル化しないと我々の未来は変わらないと実感し始めました」(杉浦成さん)
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