今井翔太氏、宮田裕章氏と探るAI進化の最前線と、AI Companion 3.0の実力 「Zoom Experience Day」レポート
“DXのパラドックス”を解く鍵は「会話の統合」 Zoomが目指す「AIがタスクを完結させる」ビジネスの未来
提供: ZVC JAPAN(Zoom)
“人類史の転換点”に到達した最新AIと、AIビジネス実装のゆくえ
Zoom Experience Dayの最後を飾ったスペシャルセッションでは、「AI研究の最前線とビジネスへの実装」をテーマに、AI研究者である北陸先端科学技術大学院大学 客員教授の今井翔太氏、慶応義塾大学医学部教授の宮田裕章氏、ZVC JAPAN 日本事業戦略部長の坂井悠樹氏が登壇した。司会はPivotの野嶋紗己子氏が務めた。
セッションはまず、前週にAnthropicが発表した最新の基盤モデル「Claude Mythos」が社会に与えるインパクトとリスクの話題からスタートした。
Anthropicによると、Mythosは非常に強力なソフトウェア解析能力を備えており、既存のOSやソフトウェアに潜在していた数千件のゼロデイ脆弱性を短時間で特定したという。こうした高度な能力が、金融機関や各国政府機関、重要インフラなどへのサイバー攻撃に悪用されると社会に大きな混乱が起きかねないため、Anthropicが公開を見送った経緯がある(関連記事:Anthropic「Claude Mythos」凄すぎて一般公開見送り)。
Mythosが社会に与えるインパクトの大きさについて、AI研究者の2氏は「ほぼ“人類史の転換点”と言ってよいと思う」(今井氏)、「今のところ防ぐ手だてがなく、非常にリスクが大きい」(宮田氏)とコメントする。「大きな可能性の一方で、とてつもないリスクもあるAIの技術とどう向き合うのかが問われる、そんな状況だ」(宮田氏)。
今井氏は、現在一般的な基盤モデルが数百億パラメータ程度であるのに対し、Mythosは「5兆パラメータ」レベルに達している可能性があると説明した。今後は、OpenAIやGoogleといった競合他社も、Mythosに匹敵する基盤モデルを開発できるのかどうかに注目しているという。
「(学習データと計算資源、パラメータ数を増やせばAIの性能が向上するという)スケーリング則にのっとって他社もMythosに追いつけるのか、それともAnthropicだけが持つ“秘伝のタレ”のようなデータがなければ出来ないのか。OpenAIのSpud(次期モデル)やGoogleなどの動きを待ちたい」(今井氏)。
現在注目を集める「フィジカルAI」については、製造や医療といった「専門的な暗黙知」の多い領域では、日本企業にもまだ“勝ち筋”があるとする。ただし今井氏は、汎用的な基盤モデルが今後も進化を続ければ、専門特化したモデルの優位性をゆるがすことも十分に考えられると警告した。
「日本の製造業などが蓄積してきたデータは、GoogleもOpenAIもアクセスできない。そのデータを使い、なおかつ日本独自の手順で学習をさせるならば、おそらくビッグテックが作れないAIになる。ただし、人工知能の歴史は、ジェネラルなもの(汎用的なAI)が特化したものを踏み潰してきた歴史でもある。暗黙知がデータになった瞬間に、ジェネラルなモデルに吸収される可能性は常にある」(今井氏)
宮田氏も同様に、フィジカルAIの専門特化した領域でAIを開発しても「必ずどこかで先行優位はなくなる」「AI(のビジネス)において永劫の安全領域というものはない」と述べ、先行優位を保てている期間に、どう次の優位性につながるアクションを起こせるのかが重要だと語った。
OpenAIやGoogleを上回る精度を実現、Zoom AIのフェデレーテッドアプローチ
スペシャルセッションの後半では、Zoomの最新AI機能が、具体的なデモビデオを交えながら紹介された。
「AIアバター」の紹介では、会場のスクリーンには司会の野嶋氏のAIアバターが登場し、流暢なフランス語でスピーチを行った。「最初に日本語で30秒ほどしゃべったものを録画しただけで、日本語、英語、インドネシア語、フランス語など、どんな言語でもしゃべれるアバターができた。ZoomのAIのクオリティに驚いた」(野嶋氏)。
宮田氏は「国際的な場面で、日本人は言語コミュニケーションの逆境に置かれがち。こうしたツールがその逆境を跳ね返し、言語の壁を超えるコミュニケーションの可能性が生まれ始めている」と評価した。
ほかにも「Zoom Revenue Accelerator(ZRA)」や「Zoom Virtual Agent(ZVA)」など、すでに多くの企業で導入が始まっているAIソリューションを紹介した。
ZRAは、商談や顧客対応の音声を文字起こしするだけでなく、話すスピードや相手との会話バランスが適切かどうか、営業フレームワーク(BANTやMEDDICなど)に沿った商談ができているかといったことを、AIが採点し、フィードバックやアドバイスをくれる。またZVAは、コールセンターで簡単に音声自動応答が設定でき、人間へのエスカレーション時もそれまでの聞き取り内容を正確に要約して伝えてくれる。
Zoomがこうした高度なAI機能を実現できている背景として、坂井氏は「フェデレーテッドアプローチ」というZoomのAI戦略を紹介した。
これは、特定企業のAIモデルに依存することなく、Anthropic、OpenAI、Googleなど複数のモデルとZoom独自モデルを組み合わせ、適材適所で使い分ける(オーケストレーションする)ことで、高い精度と信頼性を持つAIシステムを構築するアプローチだ。このアプローチをとることで、ZoomのAIはベンチマークテスト(HLE:Humanity's Last Exam、DeepSearchQA)において、OpenAIやGoogleの単体モデルを上回る精度を達成している。
このアプローチについて、今井氏は「基盤モデルの開発は莫大なコストがかかり、ほとんど割に合わない。もともと(ビジネスの)エコシステムを持つ企業は、自ら基盤モデルを作るよりもZoomのように使いこなす、それぞれの処理を最適なモデルに割り振る(ルーティングする)システムを開発するほうが、正直、筋が良いと思っている」と評価した。
* * *
セッションのまとめとして、3氏それぞれがビジネスパーソンへの提言を行った。
坂井氏は「まず使ってみること」の重要性を強調し、実際に使用した体験から、将来のAIの動向が見極められるはずだと述べた。
今井氏は、人類史的視点で見て“人類を超える存在”が生まれる瞬間に立ち会えるというのは大きなチャンスであり、「自分が第一人者になるくらいのことをやってもいいし、実際に高い確率でそうなれる瞬間である」ことを意識しながら、AIを使いこなしてほしいと語った。
そして宮田氏は「文明の転換点の中で、人間が何をAIに手渡し、何をオリジナルとして保持するかが問われている」としたうえで、あらためていま「何が価値なのか」を問う力、そして「新しい価値を創造する生態系を自ら作っていく」ことが重要になると話した。
今回の記事でご紹介した2つのセッションは、以下のページからオンデマンド配信がご視聴いただけます。合わせてご覧ください。
■Zoom Experience Day 2026:オンデマンド配信中
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