このページの本文へ

MCデジタル・リアルティが考えるAIと液冷の課題に向けた現実解

液冷技術の最先端が集うイノベーションラボ「DRIL」、印西のデータセンターに現わる

2026年04月13日 10時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 MCデジタル・リアルティが4月8日にオープンした「MCデジタル・リアルティ イノベーションラボ(通称:DRIL in Japan)のラックには、今注目度の高いAIサーバーとそれらを冷却する液冷設備が用意されており、パートナーは実環境で運用することができる。高発熱で電力食いのAIインフラをどのように手なづけるのか? DRILと同日オープンした新データセンター「NRT14」とともに見学会の模様をお伝えする。

NRT12データセンターに設置されたMCデジタル・リアルティの「DRIL」

発熱するAIサーバーを効率的に冷却 液冷を実地で試せる施設

 AIの学習や推論に用いるインフラの需要が急増する現在、データセンターにおいてはAIサーバーを効率的に冷却する液冷技術に注目が集まっている。高発熱・高電力消費のAIサーバーを高い密度で実装するためには、既存の空冷ではすでに間に合わず、熱伝導率の高い液体による液冷はもはや不可欠だ。

 この液冷技術やハイブリッドクラウドを試行錯誤できるスペースとして2026年4月8日に千葉県印西市に設立されたのが、MCデジタル・リアルティの「MCデジタル・リアルティ イノベーションラボ(通称:DRIL in Japan)になる。MCデジタル・リアルティ 代表取締役社長 山下 康平氏は、「AIやハイブリッドクラウドの環境を、実際のITインフラで試せるPoCの実証現場を提供させていただく」とアピールする。

MCデジタル・リアルティ 代表取締役社長 山下 康平氏

 MCデジタル・リアルティは、三菱商事と米Digital Realty Trustとの合弁会社として2017年9月に設立されている。Digital Realty Trustはグローバルの50都市、300を越えるデータセンターを運営するデータセンター事業者。MCデジタル・リアルティは、首都圏の三鷹地区、千葉県印西市に位置する「NRTキャンパス」、大阪府茨木市・箕面市に位置する「KIXキャンパス」でデータセンターを運営している。

 米国バージニア州に続いて2拠点目となる日本のDRILは、NRTキャンパス内のNRT12データセンターに設置されている。5トンの耐荷重を持つ60人乗りのエレベーターで5階に上がると、最大150kW/ラックを備えたコロケーションスペースが用意されており、AI/HPC(高性能コンピューティングワークロード)のテスト、エネルギーや冷却設計の事前検証、AI特有の要件の検証・最適化、ハイブリッドクラウドの検証を実現する。米Digital Realty Trustのセリーナ・ナー氏は、「われわれは単にデータセンターを作るだけではなく、DRILで未来の基盤を築く。お客さま、スタートアップ、パートナーとの共同イノベーションを加速します」とアピールする。

米Digital Realty Trustのセリーナ・ナー氏

 DRILでは液冷の検証をサポートすべく、直接液冷対応のラックに20社以上のパートナーの製品が並ぶ。サーバーとしてはOEM保守を提供する富士通のGPUサーバー、シンガポールのKAYTUSのAIサーバー、RunSunのGPUクラウド・ベアメタルなどが勢揃い。また、64基の400Gbpsポートを搭載したアリスタネットワークスの「Etherlink AI Platform」、液冷に対応するジュニパーネットワークスの「QFX5250」などのネットワーク機器も提供されていた。その他、次世代光インターコネクトを提供するMicasのCPO SwitchやGPUを超える演算能力を提供するCelebrasのサーバーなど、普段なかなか見られない機器も用意されていた。

NVIDIAのリードで注目を集めるようになったOCP対応ラックにジュニパーの水冷スイッチやRuSunのGPUクラウドなどが用意されている

スイッチと光エンジンを混載する「Micas TH6 CPO(Co-Packaged Optics) Switch」

北米のAI企業Cerebrasの専用AIチップ搭載サーバー「Cerabras CS-3」

ラック背面に液冷のための配管が並ぶ

 パートナーとしては、日本製線やニデック、日東工業、河村電器産業など国産メーカーも多く、日本特有のアライアンスという観点でも興味深い。米Digital Realty Trust CTOのクリス・シャープ氏は、「国内外のさまざまなベンダーとの連携で液冷を実現している。特にクーラント(冷却液)の分配技術は日本のメーカーがリードしていると考えている」と語る。

米Digital Realty Trust CTOのクリス・シャープ氏

NRT14は25MWの電力を確保 コンテナとは「ユースケースが異なる」

 同日開業となったのは、MCデジタル・リアルティの「NRT14データセンター」だ。2021年開業のNRT10データセンター、2024年開業でDRILの設置されたNRT12データセンターにつぐ、NRTキャンパスで3棟目のデータセンターだ。同一敷地内のキャンパスに複数のデータセンターを設置することで、低遅延な接続性と拡張性を確保している。

同日開業となったNRTキャンパスで3棟目のNRT14データセンター(提供:MCデジタル・リアルティ)

 MCデジタル・リアルティのデータセンターのアピールポイントは、急増するAIのニーズに答えられるインフラを提供できる点だ。NRT12やNRT10、KIX13は、電源容量や冷却能力、耐荷重、ネットワークの冗長性など、総合的に高いキャパシティを持つデータセンターとして「NVIDIA DGX-Ready Data Center」の認定を受けている。

 今回オープンしたNRT14データセンターも地上6階建ての免震構造ビルで、最新GPUに適した高電力・高密度対応の液冷・空冷のハイブリッド環境を備える。データセンター全体でのサーバー用電源容量は25MWで、NRTキャンパスのサーバー電源容量は約100MWに拡大するという。延べ床面積は2万2867㎡で、収容ラック数は約2800を超える。「ハイパースケーラーだけではなく、エンタープライズのお客さまも想定している」とシャープ氏は語る。

6階建ての免震構造ビルにパイプが巻き付いている

液冷のみならず、空冷用のホールも用意。顧客のニーズに柔軟に対応する

 ラックあたりの最大電力容量は150kWを実現し、高密度なAIインフラ需要に対応できる。現状、データセンターが集積している印西地区は電力事情もひっ迫しているが、MCデジタル・リアルティ 山下氏は、「25MWは東京電力から安定供給の確約を得ている。今後も安定供給に向けて調整を続けていく」と説明する。

屋上に設置されたNRT14データセンターのチラー群

 迅速性の需要を満たすためのコンテナ型データセンターに関しては、フォーカスからは外れているという。セリーナ・ナー氏は、「コンテナはあくまでエッジの用途で、フットプリントの小ささが求められている。一方で、デジタル・リアルティのお客さまはアップタイムの高さに価値を感じてくれている」と説明。既存のデータセンターにおいても、技術の進化や顧客のニーズに合わせて、柔軟に仕様を変更してきたことをアピールした。

カテゴリートップへ

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

  • 角川アスキー総合研究所