このページの本文へ

柳谷智宣の「簡単すぎて驚く生成AIの使い方」 第53回

生成AIで12万文字の小説執筆に挑戦! ChatGPT、Claude、Geminiの実力と限界

2026年04月03日 15時30分更新

文● 柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 本連載は生成AIをこれから活用しようとしている方たちのために、生成AIの基本やコピペしてそのまま使えるプロンプトなどを紹介。兎にも角にも生成AIに触り始めることで、AIに対する理解を深め、AIスキルを身に着けて欲しい。第53回は生成AIで小説のプロットを作成し、実際に執筆してみる。

 本連載では記事で取り上げる課題などのリクエストをXのハッシュタグ「 #ASCIIAI連載ネタ 」で受け付けており、先日「小説を書くためのAI活用事例」というビジネス切り口ではない要望をいただいた。生成AIを駆使して、大規模な出力を生成するという意味では、色々なシーンで活用できると思うので、今回は小説をAIで書く方法について解説する。ただし、筆者は小説家ではないので、小説執筆のノウハウというよりも生成AIの活用にフォーカスしている点はご了承いただきたい。

AIで12万文字の小説を書く方法

まずは小説のプロットと舞台を生成AIに考えさせる

 ChatGPTが登場した時点から、筆者は日々、小説の執筆にチャレンジしてきたが、最初の数年はプロンプトを工夫しても物語が破綻したり、薄っぺらくなって無理だった。しかし、生成AIの性能向上と、扱えるトークン数の増大に伴い、どんどんクオリティがアップ。出力できる文字数も増え、実際に楽しめるレベルになってきている。

 とはいえ、シンプルな指示で面白い小説を出力するのは無理。読みたいストーリーの骨子や舞台をあらかじめ作り込んでおく必要がある。生成AIの仕組み上、指示の内容が薄いと、その分どこかで読んだようなありきたりの文章を出力してくるためだ。

 ジャンルやテーマ、分量、内容について思いつくまま書き出せばいい。箇条書きでもいいし、音声入力でつらつらと話してもいい。とにかく、望む小説を言語化し、まずはプロットと舞台を考えてもらおう。ここの情報量がオリジナリティにつながる。出力するボリュームも指定しておいたほうがいい。1万文字と指示すると、概要だけでなく少し突っ込んだ内容も考えてくれるようになる。

 今回は、用意した以下のプロンプトを使った。SNSの「いいね!」を病的に欲しがる現状を皮肉るような物語、というアイディアが核となっている。

 ちなみに、映画「マトリックス」に似せないように、という指示は、何度かテストするうちにそっくりの物語が出たために入れてある。この人間の目によるチェックと、何度もトライ&エラーを重ねるのもいい出力を得るために必要な作業だ。

●プロンプト
小説を執筆するので、まずは、要望を参考に1万文字で舞台設定を考え、大枠のプロットを考えてください。できるだけリアリティを追求し、論理的整合性を保ってください。

#内容
ジャンル:ハードSF小説 / ノワール・ミステリ / 群像劇
テーマ:アテンションエコノミーの物理化
メッセージ:虚構からのログアウトと、等身大の現実の受容
プロット:探偵もの、ボーイミーツガール&少年の成長、復讐もの、の3軸同時進行
視点: 三人称限定視点を章ごとに切り替え(3人の主人公)
世界構造: 垂直統合された階層社会(上層・中層・下層)、全人類が脳内にARデバイスを持つ
トーン: 日常の細部がじわじわ狂っていく不穏さ。現実だと思っていたものが足元から崩れる恐怖。
禁止事項: 能力バトル、感傷的なセリフ回し、説明ゼリフ
分量: 単行本1冊(約12万字、10章構成)
対象読者: 複雑な社会風刺、ハードボイルドな疲労感、哲学的余韻を好む大人

#要望
ARデバイスを全人類が脳内に持ち、アテンションエコノミーが構築されたという舞台のリアリティをとことん練り上げてください。ご都合主義なところや、ツッコミどころはなくし、何でそんな世界になったのか、という裏設定がポイントとなります。

クライマックスは復讐劇で盛り上げてカタルシスを得て、次に少年少女の価値観が変わるようなどんでん返しのハッピーエンドに。そして、最後に探偵のさらなるどんでん返しで世界の見方がひっくり返るようなエンディングにする。

既存の小説や漫画などのストーリーを剽窃しないでください。特に「マトリックス」の物語には似せないように注意して。


 有料契約しているChatGPT ThinkingとGemini Pro、Claude Opus 4.6拡張それぞれに同じプロンプトを入力。速攻で出力を返してきたのが、Gemini。しかし、1万文字という指示に反して約4300文字しか出してこなかった。ChatGPTは1万1576文字、Claudeは1万3277文字となった。

●出力、共有リンク
ChatGPT 1万1576文字
https://chatgpt.com/share/69c782bc-d6b8-83a6-959e-36f02652fc5c

Gemini 4298文字
https://gemini.google.com/share/6e9f11621b6c

Claude 1万3277文字
https://claude.ai/public/artifacts/01709087-9f51-4652-9401-7739736f0b06

 Geminiは明らかに薄い内容だったが、ChatGPTとClaudeはがっつりと作り込んできた。どちらも、内容は異なるもののいい感じで、大好物。「いいね!」が通貨になるという無茶振りにも何とか対応してくれている。筆者としては、Claudeの案が気に入ったが、これも生成AIに判定してもらおう。

 先ほどのプロンプトで生成されたそれぞれの出力をまとめて渡し、スコアを付けてもらった。すると、満場一致で、ChatGPTの出力がトップ、次点がClaude、Geminiが不合格、という結果となった。

●判定
ChatGPTの判定 ChatGPT 92、Gemini 41、Claude 84
Geminiの判定 ChatGPT 95、Gemini 30、Claude 80
Claudeの判定 ChatGPT 91、Gemini 35、Claude 86

 そこで、ChatGPTの出力をベースにClaudeのいいところをマージさせたプロンプトを作成。文字数は例のごとく、Gemini 6079文字、ChatGPT 1万2428文字、Claude 1万7943文字という順だった。

●プロンプト
では、#1をベースに、#3のよいところを吸収させた、新たな舞台設定と大枠のプロットを1万文字以上で生成してください。

作り上げたプロンプトでいよいよ小説を執筆させる

 次に、Claudeで作り上げたプロンプトで小説の本文を執筆してみた。すると、Geminiは2413文字、ChatGPTは10章全部を出力し、1章分は1695文字。1冊12万文字で10章なら、1章当たり1万文字以上は必要だ。

 文字数を厳守するように再度指示し、1章だけを出力させると、Geminiは2シーンに分けて出力し、合計4028文字。2章目も4028文字で文字数を守るのは無理だった。そのまま、すべての章を書き出させ、合計で3万7388文字となった。

Geminiの執筆画面。1章ずつであれば12万文字書けるというものの……

 ChatGPTは再指示後は、1章が8728文字、2章が8277文字、3章が8255文字と善戦。そのまま執筆を続けてもらい、10章全体で8万6114文字となった。ちなみに、出力にかかった時間はClaudeよりもやや早かった。

ChatGPTの執筆画面。最近、長文プロンプトを貼るとファイルとして登録されるようになった。

 Claudeはアーティファクトが開き、執筆をスタート。時間がかかったが、10章5万7000文字を一発で書き上げた。自分で「加筆する形で拡張できる」と言ってきたのでお願いすると、「Claudeはこのターンのツール使用制限に達しました」と何度か止まったが、「続ける」ボタンをクリックすることで作業を続行することができた。最終的に、11万9772文字の原稿が完成した。

 そして、この出力はまとめて.mdファイル形式でダウンロードできたのも凄いところ。他のAIは、章ごとにテキストファイルにコピペし、「以上が7章です。8章を書きますか?」のような不要な文字列を削除する必要があった。

Claudeは一気に書き上げようと作業を開始した

10回近く、ツールの使用制限に達して「続ける」をクリックする必要があった

書き上がった小説を比較してみた

 文字数競争をしているのではないので、実際に読み込んでみた。通常の読書であれば、小説をそのまま受け入れるが、AIに書かせたものなので、粗が目立つと、プロンプトのブラッシュアップ案が浮かんでしまい、なかなか集中できなかった。とはいえ、自分の趣味丸出しの舞台で書いてもらったので、面白い。

 似たような文章を3回、計24万文字を読んだが、どれも楽しめた。特に、指示文字数の半分にも満たないGeminiの作品も十分に引き込まれた。時間のない時にちょうどいいボリュームともいえる。

 出力の体裁は指示しなかったが、ChatGPTがきちんとしていた。Claudeはノリで空白行を多数入れていたし、Geminiは行頭のスペースがないなど、まちまちだった。とはいえ、これはプロンプトで指定すれば、対応できるレベルだろう。

 今回は掲載向けのテストだったので、シンプルな手順で進めたが、本気で面白い小説にするなら、がっつり手を入れる必要がある。例えば、舞台とプロットを出力させたときに、徹底的に対話を続け、矛盾点やチープな部分を詰めると、AIはどんどん代案を出してくる。好みの候補を選んで設定に反映させ、さらにブラッシュアップしていくと、出力のクオリティを上げられる。

 自分好みの設定とストーリーで小説を読めるのはとても楽しいのでお勧めしたい。プロンプト構築スキルやトライ&エラーでブラッシュアップするスキルは、生成AIを使う際に大いに役立つのでいろいろとチャレンジしてほしい。

 ただし、完成した作品の面白さを「自分には小説の才能がある」と勘違いしないようにしよう。これは、能力の低い人ほど自己評価を高く見積もってしまう「ダニング・クルーガー効果」という認知バイアスである可能性が高い。AIが書いた優れた文章や構成は、AIの膨大な学習データと処理能力の賜物だ。AIの実力を自らの力と混同し過信してしまえば、創作者として成長できないと肝に銘じておこう。

AIで何とかしたい業務を大募集!

「簡単すぎて驚く生成AIの使い方」で取り上げてほしいAIの使い方を大募集。「この作業をAIで時短したい」「こういうことがしたいけどプロンプトはどう書けばいい?」など、お困りのことを解決します。

AIで何とかしたい業務を大募集!

応募はハッシュタグ「 #ASCIIAI連載ネタ 」を付けてXでポストするだけ。ハッシュタグ「 #ASCIIAI連載ネタ 」がついたポストは編集部で随時チェックし、連載記事で取り上げます。高度な内容である必要はないのでお気軽にどんどんポストしてください。

カテゴリートップへ

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事
ピックアップ