働き方・仕事についてのお悩み、募集しています!
「こんな働き方はもう嫌だ」「もっとこんな仕事がしたい」。
誰かに聞いてほしい、でも近しい人にこそ言いにくい仕事の悩み。この連載では、そんなお悩みの解決の糸口を一緒に考えていきます。
何か困っていることや考えていることがあれば、こちらまで気軽にメッセージください! 匿名のメッセージも、もちろん大丈夫です。
ASCII読者の皆さん、こんにちは!正能茉優です。
この連載「お仕事悩み、一緒に考えます。」では、今月も、読者の皆さまからいただいたお仕事に関するお悩みについて、一緒に紐解いていきます。
ふとした瞬間に出会う、「この先、どう働きたいんだろう?」という問い。それまで迷いなく走れていたのに、急に目指したい未来がぼんやりしてくる。
私自身の年齢やライフステージもあってか、そんな声を最近よく耳にします。
今回のご相談はまさに、“年収アップ=正解”というわかりやすいゲームの先にある、キャリアの意味の揺らぎについて。
不満があるわけではないのに、これまでの価値観が、急にしっくりこなくなる。
そんな時、どんなふうにその揺らぎを受け止めればいいのか。
一緒に考えていきたいと思います。
「“大企業でそこそこ稼ぐおじさん”になるのが正解なのか」わかりません
正能さん、こんにちは。いつも連載を読んでいて、今回思い切って相談します。
私は36歳で、日本の大企業や外資メガベンチャーを渡り歩きながら、“市場価値=年収”を上げることを軸にキャリアを歩んできました。
社会人になってからずっと、「年収を上げる=自分の価値が上がる」と考え、働いてきたタイプです。
30代前半まではその考え方に違和感を持つことなくやれていて、転職も昇進も、自分の成果につながるプロセスとして捉えてきました。
ただ、ここ1〜2年、「本当にそうなんだっけ?」と少し足が止まるような感覚があります。
年収が上がれば税金も増える。。瑣末なことでありますが、例えば、子どもの保育園の費用負担も増える。こうしたことが重なり、ふと、「この年収アップゲームを続けて、自分はどこに向かうんだ?」と考えるようになりました。
周りを見ると、大企業でそこそこの給料を取りつつ落ち着いたポジションで働く同世代や先輩も多く、それはそれで良い生き方だと思いますが、自分も今の延長線上にあるであろう“そこそこ稼ぐおじさん”になっていきたいのかと言われると、どうも腹落ちしません。
そう思った途端に目指す未来がぼんやりし、この先どう働いていたいのかがわからなくなりました。
かといって強い「別の道に行きたい」もありません。
これまで何の疑いもなくやってきた“年収アップゲーム”が、急にしっくり来なくなっただけだと思います。
このモヤモヤ、どう整理すればいいのでしょうか。
(36歳・男性)
“年収アップ=価値アップ”というゲームは、確かにわかりやすかった
「この迷いが出てくること、とてもわかる」と頷きながら、ご相談文を読みました。
特に大企業や外資、メガベンチャーなど、評価制度が整っていて、成果や価値が社内相対でわかりやすく可視化される環境では、20代〜30代前半は “評価・年収・職位を上げるゲーム”がキャリアの中心になりやすい時期です。
・結果を出せば評価される
・転職で年収が上がる
・スキルを積めば次の会社でも武器になる
このゲーム構造はとてもシンプルで、努力がそのままリターンになる明快さがあります。
だからこそ迷わず走れるし、手応えもわかりやすい。
そして、30代後半になると、この「明快だったはずのゲーム」が急に霧がかかったように見え始める。
これは同年代の方から本当によく聞きますし、私自身も30代前半にまったく同じ感覚を経験しました。
相談者さんがこの感覚を抱いているのは、決して特殊なことではなく、むしろ自然なよくあることなのかもしれません。
30代で訪れる“価値の書き換わり”
今の延長線では走れなくなる感覚、それはきっと、 “価値の優先順位が静かに書き換わり始めている”ことに気づきつつあるサインです。
背景には、20代の頃には人生の脇役だったはずの、
・家族との時間
・心身の健康
・精神的な余裕
・働くリズム
・職場環境の安心感
といった“人生側の価値”が、30半ばに差し掛かるにつれて、人生のど真ん中に近づいてきた、ということがおそらくあります。
すると、20代の頃から当たり前にあった「価値=成果や年収、職位」という価値観が、今の自分と噛み合わなくなっていく。
そのズレが、“年収アップゲーム”へのモヤつきの背景のひとつなのだと思います。
私自身も、病気で10ヵ月離れたとき“ゲーム選択”の重要性に気づいた
私は去年、希少疾患で10ヵ月ほど仕事を離れた時期がありました。
社会復帰を考えたとき、最初にぶつかったのは、「これまでと同じ、年収アップゲームで走る意味が私には見出せない」という感覚でした。
その背景には、価値観の変化がありました。
家族との時間が、何より大切になった。
でも同時に、家族と自分が安心して暮らせる未来を、自分の手でつくりたいとも、考えた。
だからこそ、20代の延長線上の価値観で働くのではなく、「次はどんなゲームに参加したいのか?」を考え直す必要がありました。
価値観が変われば、選ぶゲームも変わる。
これは、人生でよくある自然なプロセスのひとつなのかもしれません。
第一分岐は、“今のゲームに意味を置き直せるかどうか”
迷いが生まれたとき、最初の分岐点は「今のゲームに、自分なりの意味を置き直せるかどうか」です。
意味を置き直すことで、ゲームは変えずに、走り方を更新できるか。たとえば、
・家族の安心のために働く
・50代以降の選択肢をつくるために稼ぐ
・若手育成に力を入れる
・安定という価値を再評価する
といった新しい意味を、今の仕事に再設定できれば、ゲームを変えずとも、しっくりする度合いは高まります。
ただ、ゲームを変えないことには、どうしても意味が置けない場合もあると思います。
そのときは、今とは違うゲームという、新しい選択肢を考えてみてもいい時期なのかもしれません。
これは決して大きな決断を急ぐという意味ではありません。
むしろ、「今の自分にとって心地よい働き方って何だろう?」とじっくり自分を見直すような、そんなイメージです。
そして“ゲームを変える”とは、転職のような劇的な変化だけではありません。
・働く時間配分を変える
・役割を変える
・評価軸を変える
・組織外の活動のボリュームを少し増やす
こうした小さな調整も立派なゲームチェンジであり、キャリアの選択肢を増やすこと。
焦る必要はまったくなく、そのプロセスそのものも、自分の変化を知る機会として楽しんでみたいなと私自身は考えています。
迷いは“止まる”サインではなく、“始まる”サイン
今回のご相談には、「しっくり来なくなった」というご本人にしか感じられない感覚がありました。
これは、今までの価値観が役目を終え、新しい価値観が立ち上がる前に訪れる感覚なのだと思います。
大切なのは、この違和感を逃さずに、今の自分にとっての価値とは何かを丁寧に正直に紐解き、アップデートすること。
そこから、
・今のゲームに意味を置き直して続ける
・別のゲームへ静かに進む
という分岐は、自然に見えてきます。
その違和感こそが、新しいゲームの入口に立ったサインです。
どうか焦らず、そして楽しみながら、今の変化を大切にしてみてください。
筆者紹介──正能茉優
ハピキラFACTORY 代表取締役
パーソルキャリア 企画職
1991年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部 卒業。
大学在学中に始めたハピキラFACTORYの代表取締役を務める傍ら、2014年博報堂に入社。会社員としてはその後ソニーを経て、現在はパーソルキャリアにて、HR領域における新規事業の事業責任者を務める。ベンチャー社長・会社員として事業を生み出す傍ら2018年度より現在に至るまで、内閣官房「まち・ひと・しごと創生会議」「デジタル田園都市国家構想実現会議」などの内閣の最年少委員を歴任し、上場企業を含む数社の社外取締役としても、地域や若者といったテーマの事業に携わる。
また、それらの現場で接した「組織における感情」に強い興味を持ち、事業の傍ら、慶應義塾大学大学院にて「組織における感情や涙が、組織に与える影響」について研究。専門は経営学で、2023年慶應義塾大学院 修士課程修了。
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