自動翻訳シンポジウム事務局(株式会社アイシーエム内)
総務省・国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)・グローバルコミュニケーション開発推進協議会 主催
2026年2月20日(金)、総務省、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)及びグローバルコミュニケーション開発推進協議会は、「AIによる翻訳でジャパンを世界へ」をテーマに、9回目となる自動翻訳シンポジウムを品川インターシティホールにて開催しました。当日は439名が参加し、エンタメや文化の分野でのAI翻訳の利用や、「日本の価値」を伝える自動翻訳・通訳への今後の期待について、有識者による講演やパネルディスカッションが行われました。また、24者の企業・団体による最新の自動翻訳製品・サービス等の展示も行われました。
第9回 自動翻訳シンポジウム 概要
日 時 2026年2月20日(金)12:45~18:00
開催場所 品川インターシティホール
※最新の同時通訳・自動翻訳システム等の展示会を併せて実施。
参 加 者 439人
主 催 総務省、国立研究開発法人情報通信研究機構 (NICT)、
グローバルコミュニケーション開発推進協議会
後 援 内閣府 デジタル庁 法務省 外務省 文部科学省 厚生労働省 農林水産省
経済産業省 特許庁 国土交通省 観光庁 環境省
一般社団法人アジア太平洋機械翻訳協会 一般社団法人人工知能学会
一般社団法人日本データベース学会 人工知能研究開発ネットワーク
挨拶・講演の要旨
開会挨拶
グローバルコミュニケーション開発推進協議会 須藤 修会長より開会の挨拶を行いました。
要旨
●大阪・関西万博の成功や訪日外国人4,200万人突破を背景に、日本文化への関心が世界的に高まっている。特に漫画・アニメ・ゲームを中心とするコンテンツ産業はこの10年で海外売上を大きく伸ばし日本の主要輸出産業の一つとなっており、今後は自動車産業に匹敵する規模への成長が期待されている。
●欧州ではフランスやスペインに加え、ドイツでも日本の漫画・アニメへの関心が高まっている。漫画の自動翻訳など新たな技術への期待も強く、今回シンポジウムの意義は大きい。
●コンテンツ輸出拡大には多言語対応が不可欠であり、AIによる漫画翻訳や生成AIの活用など最新の自動翻訳技術が重要な鍵となる。本シンポジウムでは、AI翻訳の活用事例や将来展望について議論・紹介が行われる。
●グローバルコミュニケーション開発推進協議会は、総務省の計画に沿って言語の壁を越える社会の実現を目指し活動している。200を超える団体や自治体が参加しており、技術高度化と社会実装を進めながら、さらなる連携拡大を目指している。
主催者挨拶

主催者を代表し、総務省 国際戦略局 布施田 英生局長より主催者挨拶を行いました。
要旨
● 訪日外国人旅行客は増加傾向にあり、特に欧州新興国からの来訪が増加している。観光だけでなく高付加価値な体験を求める傾向が強まっており、質の高いサービス提供のためにも言語の壁の解消が重要となっている。
●総務省は2014年にグローバルコミュニケーション計画を策定し、多言語翻訳技術の研究開発と社会実装を推進してきた。大阪・関西万博では同時通訳を含む翻訳技術を実装し、多くの来場者が体験する機会を得た。
●グローバルコミュニケーション開発推進協議会を中心に産官学が連携し、多言語翻訳サービスの実用化が進展している。本日の展示でも紹介しているように、言葉の壁のない社会の実現が着実に進みつつある。
●生成AIの活用により、文脈や文化・歴史的背景を踏まえた高度な翻訳が可能となりつつある。今後は翻訳技術のさらなる発展と幅広い分野への社会実装を進め、言語の壁のない世界の実現を目指していく。

基調講演
マンガ機械翻訳の現在地
Mantra株式会社 代表取締役 石渡 祥之佑氏
要旨
●コロナ禍以降、アニメ人気の拡大とともに漫画の海外需要が急増し、北米やフランスでは売上が大幅に伸長している。一方で、従来の翻訳は複数人による非効率な工程が必要で時間とコストがかかり、9割の作品が未翻訳のままとなっている。その結果、海賊版被害(約8,000億円規模)や作家への還元不足が課題となっている。
●漫画画像からテキスト抽出・翻訳・組み込みまでを行うAIツールを開発。特にマルチモーダルLLMの活用により、画像内容や話者情報を踏まえた文脈理解型の翻訳が可能になり、翻訳精度は大幅に向上した。ただし、LLM単体ではシリーズ全体の一貫性維持などの課題が残る。
●キャラクターの口調や呼称など作品固有のルールをAIで抽出・生成し、翻訳時に反映させることで一貫性を確保する手法を導入。ガイドラインは人による修正が可能で効率化にも寄与する。一方で、AI特有の癖の混入や組版制約への対応など、なお改善すべき課題が残されている。

講演1
自動通訳の実装と応用の最新状況と可能性
マインドワード株式会社 代表取締役CEO 菅谷 史昭氏
要旨
●屋久島のウミガメ観察や茶道体験、工場見学、寺院ガイドなど、多様な観光・体験現場で活用可能な多言語同時通訳システムを開発。ネット環境が不安定な地域でも利用できる「スタンドアローン型」で、バッテリー駆動・リアルタイム翻訳・多言語同時出力や切替が可能。専門用語は事前に辞書登録し、正確性を高めている。
●リアルタイム性が最重要であり、音声認識・翻訳・音声合成を高速処理できる計算資源が必要。現状は高性能ノートPCを使用しており、小型化・省電力化が課題。生成AIは文脈理解に優れるが、計算コスト・遅延・消費電力の面でフィールド通訳への全面導入はまだ難しく、当面は従来型機械翻訳(MT)が主力。
●訪日客の増加とともに、自然・文化・宗教など「深い体験」への需要が拡大。国立公園等で実証実験を重ねながら、より高精度・軽量・低消費電力な通訳システムへの進化を目指す。生成AIの活用拡大とデバイス小型化が今後の鍵となる。

講演2
生成AIのメリットを取り込んだ自動翻訳
国立研究開発法人情報通信研究機構 フェロー 隅田 英一郎
要旨
●クールジャパン戦略やインバウンド拡大により、翻訳ニーズは量・質ともに拡大。教育・医療・行政・労働環境整備など社会的課題にも対応が必要。これに対し、・巨大LLM、・軽量LLM、・従来型NMTを組み合わせ、適材適所で提供する方針。巨大LLMの知識を軽量モデルへ移植し、専門特化型高精度翻訳の実現も進展。
●日本では年間約7万冊が出版される一方、翻訳出版は極めて少なく、市場拡大余地は大きい。AI活用により、新人翻訳者の育成促進・既存翻訳者の効率向上が可能となり、翻訳能力の飛躍的増強が期待される。AI単独翻訳作品でも海外読者の半数以上が高評価を示すなど、実用段階に到達。
●著作権切れ作品の大量公開や、多言語への高精度翻訳により、従来届かなかった市場への展開が可能。漫画分野では海賊版対策として「全自動・同時公開」も有効な選択肢。AI単独活用と人間との協働の両面から、日本コンテンツの世界展開加速が現実的段階に入っている。

パネルディスカッション
「日本の価値(コンテンツ・文化・自然)」を伝える自動翻訳・通訳に対する期待
ファシリテーター:
ヤマハ株式会社 新規事業開発部 SoundUD室 室長 瀬戸 優樹氏
パネリスト:
Mantra株式会社 代表取締役 石渡 祥之佑氏
マインドワード株式会社 代表取締役CEO 菅谷 史昭氏
国立研究開発法人情報通信研究機構 フェロー 隅田 英一郎
要旨
●漫画・アニメなどのコンテンツ翻訳と、観光・聖地巡礼における体験通訳は「世界観や文脈理解」が共通課題。高性能LLMで事前に作品理解を深め、軽量モデルでリアルタイム対応するなど、重層的な技術連携が有効。IP横断で翻訳資産を共有することで、観光・ゲーム・アニメへ展開可能。
●個別最適ではなく、漫画・観光・文化体験などに共通する基盤を共有すれば、日本全体の発信力向上につながる。画像・テキストなどマルチモーダル情報を統合し、クールジャパンを支える横断的インフラへ発展していく可能性がある。
●翻訳ツールはプロ翻訳者の生産性向上に加え、ファン参加型活用や海賊版対策にも応用可能。ただし無秩序な公開ではなく、正規流通と収益還元の仕組みが前提。観光現場では遅延や学習ループの課題がある一方、人と機械の協働モデルへの期待が高い。
●生成AIの急速な進歩により、翻訳は空気や水のようなインフラになる可能性がある。エンターテインメントを通じた相互理解の促進、少量データでの深い体験対応、さらには五感情報まで統合した発信基盤へと進化し得る。自動翻訳は利便性向上を超え、日本の価値と国力を世界に届ける基盤技術として期待されている。

閉会挨拶
最後に、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT) 徳田 英幸理事長より閉会の挨拶を行いました。
要旨
●基調講演、講演では講師の方より、大変有益なお話をいただいた。基調講演では現在の漫画翻訳の課題とガイドラインを元に効率的に漫画の自動翻訳を行う技術についてご紹介いただき、講演では現場で求められる翻訳の形と、AI翻訳を活用した海外市場への発展の可能性をお示しいただいた。パネルディスカッションでは「日本の価値を伝える自動翻訳」をテーマとし、自動翻訳の現状・課題・将来展望を多角的に議論していただいた。
●生成AI活用が進む一方、国産・自律性を備え、透明性やデータ管理が担保された国内基盤が重要である。日本独自の生成AIを社会実装し、信頼性ある技術基盤を強化していく必要がある。
●大阪・関西万博での実証やインバウンド拡大、コンテンツ輸出拡大を背景に、多言語化需要は一層拡大した。生成AI等を活用し、「言葉の壁を越えた自由な交流」「ビジネス力強化」「共生社会の実現」「日本のプレゼンス向上」を目指し、文化の壁も越える新たなコミュニケーション技術の研究開発を推進していく。


会場の様子
会場展示
当日は同会場にて、翻訳事業に携わる国内企業・団体(24者)によって、最先端の同時通訳技術の研究開発や最新の製品・サービス等が紹介されました。

展示ブースを視察する総務省国際戦略局布施田局長
パネルディスカッションの様子

会場展示光景
講演会場光景

展示内容詳細(1)
展示内容詳細(2)













