MWC Barcelona 2026のKDDIブースは「AIデータセンターと通信が変える未来の暮らし」がテーマだ。ブースにはAIリテールやヒューマノイドロボットの展示もあるが、本稿ではスマートシティとモビリティの展示を紹介する。KDDI プロダクト本部 副本部長の野口一宙氏に展示の狙いを聞いた。
「花屋」で見せる都市OSの実力
スマートシティの展示は、花屋を模したコーナーで構成されている。
来場者が8種類のペルソナから1つを選び、改札を模したゲートにタッチすると、志向に合ったクーポンが表示され、ペルソナに紐づいた花がプレゼントされる。
音楽好きのペルソナを選ぶと、花言葉が「共感」を意味するデイジーが選ばれるといった具合だ。初日から花が足りなくなるほど好評で、MWC公式メディアが口コミで取材に訪れるほどだったという。
このデモの原型は、高輪ゲートウェイで運用中のアプリである。JRのSuicaデータと連携し、改札通過をトリガーに利用者の志向を統計的に解析してクーポンを配信している。野口氏はこの仕組みを「都市OS」と呼ぶ。「都市をデータで動かす。街のお店やロボットにデータを還元して、人に対するアクションを変えていく」という考え方だ。
ブースにはAIカメラで来場者の表情や骨格から満足度を推定するデモもある。イベント開催前後の感情変化を統計的に把握できれば、従来のアンケートに代わる効果測定の手段になる。高輪ゲートウェイの広場で実証を予定しているという。
海外のスマートシティは、プライバシーの壁に突き当たる事例が少なくない。野口氏は「調べてみると、ヘルスケアデータや住民票に紐づく情報にダイレクトに立ち入っているケースが多い」と指摘する。KDDIのアプローチはあくまで統計処理ベースで、個人を直接特定しない。日本のプライバシー規制の中で磨いた手法を、東南アジアなど海外のスマートシティ需要に展開する狙いだ。野口氏はこのアプローチを「日本らしいおもてなし」と表現した。
3700万回線の運用が自動運転を支える
モビリティの展示では、自動運転車両の遠隔監視プロトタイプを公開した。
バルセロナ市内を約30台が走行する想定で、車内のAIカメラが乗客の異常を検知するとオペレーターにアラートが届く。映像で状況を確認し、救急車の手配や現場への作業員派遣を判断する流れだ。
この遠隔監視の土台にあるのが、コネクティッドカーの運用実績だ。KDDIは約83の国と地域で約3700万回線を提供し、IoTデバイスを含めると約1億回線を運用している。
7年間にわたるサービス運用で、ログのリアルタイム監視やAIチャットボットによる障害対応、設備の自動復旧といったノウハウを蓄積してきた。コネクティッドカーの分野では世界トップ5に肉薄する規模だと野口氏は話す。「カメラと通信だけでは役に立たない。オペレーションとセットで価値が出る」と語る。
自動運転社会の本格化は2030年頃とされている。「商用化してから参加するのはなかなか難しい」と野口氏は語る。KDDIは2025年10月にモビリティコントロールセンターを設立し、すでに準備を進めている。この車両監視のオペレーションを土台に、自動運転向けの機能を段階的に載せていく構えだ。
2026年3月には高輪で自動運転バスの実証実験にも参加し、遠隔監視システムの商用化は2026年度以降を予定している。遠隔監視ではレイテンシーを約2秒に抑え、再送処理で映像の欠損を減らすといった通信品質の工夫も盛り込んでいる。
モビリティの対象はクルマだけではない。ドローンではドックの整備が進み、完全自律飛行が実現段階に入った。野口氏は「どこでも10分以内に飛べるように1000ヵ所くらい作ればインフラになる」と構想を語る。セルラー通信に加えてStarlinkの活用も進めており、フィジカルAI時代を見据えた通信インフラの整備が着々と進んでいる。
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