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プラットフォーム学~先端事例から学ぶ、社会実装の現在点 第4回

日本におけるスタートアップの発展に向け、起業家とそれを取り巻く環境、知識や意識を強化する「Startup Business School」のインパクト

2026年03月05日 17時00分更新

文● ASCII

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グローバル展開を前提に学ぶ
「Startup Business School」の挑戦

 名倉氏が現在取り組んでいるのは、冒頭でも紹介したStartup Business Schoolの立ち上げだ。その背景には、日本においてグローバルに展開できるスタートアップがまだ少なく、「どこに向かえばいいのか」「何をどう進めればいいのか」が分からないまま成長機会を逃しているケースが多いという問題意識がある。

スタートアップがスケールアップするまでの課題の例

 スタートアップは成長する過程で、戦略策定、ファイナンス、知財の権利化、法務、労務、採用など、数多くの経営課題に直面する。こうしたスタートアップの経営課題を体系的に学ぶ機会を提供することが、ビジネススクール設立の第一の目的となる。しかし、このスクールはスタートアップ(起業家)のみを対象とするものではない。対象は三分類されており、スタートアップ当事者、スタートアップ支援者、そしてこれからスタートアップに飛び込む人材が含まれる。これはスタートアップの成長には、起業家だけでなく、それを取り巻く支援者や環境を整える政策立案者の理解も不可欠だという考え方に基づいているためだ。

 スタートアップを支えるメンターの育成は特に重視しているポイントだ。日本ではスタートアップを経験した人材が限られており、「メンターの数が足りない」ことが課題だと名倉氏は言う。その背景には、メンターに求められる資質が可視化・体系化されていないこと、業界専門性とスタートアップに関する知識をともに持つ人材が育成されていないこと、実際には十分なメンタリング能力がないにもかかわらず、メンターとしてスタートアップに関与する人材が存在し、誤った指摘によってスタートアップの時間を奪うといった悪影響を与えている可能性があることなどが挙げられる。

 Startup Business Schoolが目指すのは、単なる知識提供ではない。海外のことを学べ、経営課題についてあらかじめ知ることができるプログラムだ。支援者や政策決定者もまたスタートアップの成長プロセスを理解することで、スタートアップをめぐる日本全体の地盤を強化していくことが目的だ。

「日本のスタートアップを取り巻く方々がスタートアップや、グローバルに成長することについて学び、日本のスタートアップがどんどん海外に出ていくような地盤作りをするのがStartup Business Schoolの役割です」(名倉氏)

 Startup Business Schoolは2026年の4月に開講。初年度は東京都との協定により実施され、入門編として30名を対象に無料で受講可能になる。スタートアップが海外でスケールアップしていくまでに出会う経営課題を一通り理解することが、1年目の主要なアウトカムだ。その過程で、スタートアップの経営者や支援者が「グローバルに成長するとはどういうことか」を理解し、適切なタイミングで適切な支援を与え/受け入れられる状態を目指す。教育研究機関に所属する人はそこに在籍したままスタートアップの経営課題についての知識を得られる。

 さらに今後1~2年をかけて、海外MBAで学べるような科目を充実させ、グローバルスタンダードでスタートアップ経営を体系的に学べるプログラムへと拡張していく計画だ。単発の講義ではなく、経営全体を俯瞰できる構造化された学びを提供することを志向している。

 名倉氏は「日本ではこれまで、グローバル目線で体系的にスタートアップ経営を学べる場がなかった」と話す。こうした取り組みを待っていた人も多かったのだろう。実際、受講者募集では定員を大きく上回る応募が集まり、ニーズの高さが示された。名倉氏も「Startup Business Schoolによって、日本の社会が確実に変わっていくし、スタートアップエコシステムの発展もある。そして、スタートアップの成功例がいま以上に増えてくると信じています」とコメントしていた。

 Startup Business Schoolが目指す、起業家や支援者、政策決定者が共に学び成長するエコシステムの構築。これは、リアル社会において人的ネットワークを内包した基盤を形成する取り組みと捉えることもできる。

 情報学、農学、防災、医学など多様な専門性を持つ学生が、自らの基礎研究(シーズ)を社会実装していくためには、こうした基盤の上で様々なステークホルダーとの関わりを維持し、深めていくことも求められる。学生たちが研究の先にあるビジネスという領域に飛び込み、自らの力でキャリアパスを切り開いていくための道標のひとつになるだろう。

 書籍『プラットフォーム学Ⅱ』では「新たなプラットフォームを構築するためには、新たな技術・ユースケースが必要であり、これらを創出するためにはスタートアップ企業が必要であり、プラットフォームはスタートアップ企業で加速する」と書かれている。プラットフォームとスタートアップは両軸で進化するものだ、スタートアップビジネススクールのような取り組みは、その加速を導く要因になり得る。

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