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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第368回

ITの中心地サンフランシスコで大停電、ロボタクシーが路上で立ち往生

2025年12月30日 07時00分更新

文● 小島寛明

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 ITの中心地、米国のサンフランシスコで大停電が起きた。

 電力会社PG&E(Pacific Gas & Electric Company)の発表によれば、12月20日土曜日の午後1時9分、カリフォルニア州サンフランシスコで大規模な停電が始まった。ブロックごとに停電は広がり、約2時間で最大13万戸への電力供給が失われた。サンフランシスコのほぼ3分の1に停電の影響が及んだことになる。

 翌21日までに、停電が起きた地域のうち大部分で電力供給が復旧したが、サンフランシスコ市役所を含む地域では停電が続いた。このため、週明けの22日には、サンフランシスコ市の行政サービスがストップした。全戸への電力供給が復旧したのは23日未明だった。

 この大停電で、一時的に信号が機能しなくなり、Waymoのロボタクシーが車道で立ち往生した。ロボタクシーが機能しなくなったことで、サンフランシスコでは大渋滞が起きた。レストランの冷蔵庫の温度は上がり、キャッシュレスを中心とする支払いも止まったため、クリスマス直前の街では、多くの商店やレストランが営業を見合わせた。

 サンフランシスコは、XやOpenAI、Uberなどが本社を置くITの中心地だ。車で1時間ほど走ると、シリコンバレーもある。IT先進地だけに都市のインフラには、いちはやく先端テクノロジーが導入されている。今回の大停電であらためて見えてきたのは、デジタル化と自動化が進む都市は、電力への依存度が高く、大規模停電のような事象には強くないということだ。

多数のロボタクシーが立ち往生

 大停電下のサンフランシスコでは、何が起きていたのだろうか。

 20日土曜日の午後1時すぎ以降、サンフランシスコ市内で次々に信号が止まった。この結果、無人で乗客を運ぶWaymoのロボタクシーは、交差点内に進むべきか、一時停止して待つべきなのかを自律的に判断できず、立ち往生した。20日から21日にかけて、Xには、ハザードランプを点灯させて路上で止まっているロボタクシーの画像や動画が多数ポストされた。ロボタクシーが道をふさいだため、救急車などの緊急車両に支障も生じたという。

 ロボタクシーを運行する会社の名前はWaymoだが、耳慣れない人もいるかもしれない。Waymoは、Googleの親会社Alphabet傘下の企業だが、もとはGoogleの自動運転の開発部門で、分社化して独立した会社になった。2025年5月5日のWaymoの公式ブログによれば、サンフランシスコ、ロサンゼルス、オースティン、フェニックスの4都市でロボタクシーを運営し、1500台以上の自動運転車を保有している。

 Waymoは、12月20日午後に多数の立ち往生が発生した事態を受け、一時的にロボタクシーの運行を停止したが、翌21日に運行を再開している。

人間への安全確認が追いつかず

 Waymoは23日、「PG&Eの停電からの教訓」と題したブログを発表し、ロボタクシーの立ち往生がなぜ発生したかを説明している。

 このブログによれば、信号が動いていない時、Waymoのロボタクシーは、四方向を停止として扱うように設計されている。その際、「最も安全な選択をするため、たまに確認をリクエストすることがある」と説明している。

 信号が機能していない場合、Waymoのロボタクシーはその交差点を、そもそも信号が設置されていない十字路のように扱う。この場合、ロボタクシーは遠隔で運行を支援する担当者(人間)に対して、交差点に進んで問題がないか確認するリクエストを出す。しかし、大停電で多くの信号の機能が停止していたため、支援担当者の処理が追いつかず「バックログが発生した」という。このバックログという言葉は、日本のIT業界でも使われるが、「積み残しの仕事」のことだ。

 つまり、Waymoは、電源が落ちている信号を「四方向停止」とする処理は正常で、停電で多くの信号が機能しなくなったため、人間とロボタクシーの間で安全確認が処理しきれなくなったと説明していると理解できる。

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