80年代を代表するSF映画のひとつ「トロン」シリーズ第3弾となる『トロン:アレス』がRakuten TVにて配信スタート。シリーズごとにCGの最前線を担い、多くの映画ファンをうならせてきた、その魅力とは?
1982年に劇場公開された『トロン:オリジナル』は、映画史上初めてコンピューターグラフィックスを導入した長編映画として、革新的なビジュアルで話題をさらった。ディズニー傘下のピクサーの創始者、ジョン・ラセターが「『トロン』がなければ『トイ・ストーリー』は生まれなかった」と発言しているほか、ジェームズ・キャメロンやジョージ・ルーカスなど今や巨匠となった監督や世界中のクリエイターたちにも影響を与えたといわれ、伝説的存在だ。
開発データを盗まれてソフトウェアメーカーのエンコム社を退職し、ゲームセンターを営む天才コンピューター・プログラマーのケヴィン・フリン(ジェフ・ブリッジス)が、デジタル世界に送り込まれて生死をかけたゲームに挑むことになる。人間がデジタルの世界に入るという、ワクワクするSF展開のオリジナルストーリー。“トロン”とは、人間の世界をも支配しようとするコンピューター総合制御システム=MCPを打ち砕くためのプログラム戦士の名前だ。
それから28年後の2010年、続編となる『トロン:レガシー』が誕生した。主人公となるのはケヴィン・フリンの息子、サム(ギャレット・ヘドランド)。20年前に失踪した父から謎のメッセージを受け、消息を追って偶然コンピューターの世界へ。そこで恐るべき秘密を知り、戦いに身を投じていく。28年という年月で技術が格段に進化。“グリッド”と呼ばれるデジタルの世界は、3D表現でより鮮やかに、よりクリアになって、戦いシーンの迫力も増した。
そして2025年の『トロン:アレス』。第1作で、ケヴィンは「いつかコンピューターが考える時代が来る」という考えを持っていて、実際にMCPという存在に立ち向かうことになったのだが、当時はそれを未知のものというSFとして受け取るほうが大きかっただろう。そこから時を経てAIが身近になった現代。この『トロン:アレス』は、AIと人間が共存できるのかと問いかける。
常に最先端のCG技術でシリーズを作り上げ、ストーリーも1歩先を行く。最新作では、デジタルの世界ではなく、AIが兵士という形になって人間の暮らす街に出てくる。つまり、デジタル世界が現実世界を“浸食”しようとするのだ。
エンコム社のライバルであるデリンジャー社が、AIプログラムを実体化したAI兵士のアレス(ジャレッド・レト)を開発する。圧倒的な力とスピード、優れた知能を持ち、倒されても何度も再生できる史上最強の兵士だが、現実世界で生存できるのはわずか29分間。そんななか、エンコム社のCEOのイヴ・キム(グレタ・リー)が29分以上生存できる“永続コード”を見つけ、デリンジャー社はアレスやほかのAI兵士たちを送り込んで奪おうとする。やがて人間を知ったアレスに異変が起きる。
AI兵士たちが着用するスーツは、ケヴィンやサムが着ていたものよりスタイリッシュに。そして第1作目からおなじみとなっているライトサイクルというバイクに似た乗り物のチェイスシーンは、デジタルの世界で輝いた光の軌跡が街の夜景の中で美しさを増して、かっこよすぎる疾走に胸が高鳴る。しかも、その光の軌跡はぶつかったものを切り裂くという危険な迫力。同様にデジタル世界で繰り広げられたアイデンティティ・ディスクと呼ばれる発光する円形の装置を使った“ディスクバトル”では、アレスのディスクは角ばっていて、より鋭利な武器になった。
現代だからこそ可能になった圧倒的スケール感で物語が繰り広げられる。シリーズ共通のものは往年のファンにはうれしいポイントであるが、本作から入っても十分にその世界観を楽しめる。ただ、時代を先取ってきた映画の歴史、CGの変遷を、この機会に一気にたどるのもおすすめしたい。伝説的存在として始まったSF体験をぜひ。
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