働き方・仕事についてのお悩み、募集しています!
「こんな働き方はもう嫌だ」「もっとこんな仕事がしたい」。
誰かに聞いてほしい、でも近しい人にこそ言いにくい仕事の悩み。この連載では、そんなお悩みの解決の糸口を一緒に考えていきます。
何か困っていることや考えていることがあれば、こちらまで気軽にメッセージください! 匿名のメッセージも、もちろん大丈夫です。
ASCII読者の皆さん、こんにちは!正能茉優です。
この連載「お仕事悩み、一緒に考えます。」では、今月も、読者の皆さまからいただいたお仕事に関するお悩みについて、一緒に考えていきます。
今回の連載は、「子どもを預けて働くとき、どうしても罪悪感が消えない」という30代女性からの相談です。
復職して1年。朝は8時半前に登園、夕方は18時半にお迎え。
仕事にも慣れてきた一方で、「せっかく一緒にいられる時間なのに」「ついイライラしてしまう」と、胸の奥に小さな引っ掛かりが残る日々が続いているといいます。
仕事は好きで続けたい。でも、子どもへの想いも本物。
その狭間で揺れる“母として、働く人として”の気持ちを、どう扱えばいいのか。
今回は、その葛藤に寄り添いながら考えていきます。
子を預ける罪悪感が消えない。でも仕事は続けたい
こんにちは。私は一児の母でもある36歳の女性の会社員です。
去年から、2歳の息子を保育園に預けながら働いています。
毎朝8時半前に登園させ、夕方は18時半ごろにお迎え。
復職して1年が経ち、仕事にも慣れてきましたが、毎晩のように、胸の奥に小さな引っ掛かりが残ります。
朝は支度でバタバタ、夕方はお迎えから寝かしつけまで慌ただしく、ついイライラしてしまう。
「ちょっと待っててね」を繰り返してしまう。
「せっかく一緒にいられる時間だったのに」と、後から落ち込む日もあります。
仕事は好きで、続けたい気持ちも本当です。
でも子のことは何より大事で、もしそれが本当ならば、かける時間や向ける気持ちが足りていない気がする。
いっそのこと仕事を辞めた方がいいのかもしれないと考える日も、月に何日かあります。
私は今後、この罪悪感をどう扱い、どうバランスをとりながら働くのがいいのでしょうか?
(36歳、会社員)
罪悪感の正体は、優しさ×決定感の欠如
想いの詰まったお便りをありがとうございます。
同じ母として、自分ならどう考えるだろうという気持ちで書かせていただきます。
まず、子どもを預けて働くときに感じる罪悪感は、「子どもを大切に思っている」優しさの証だと私は感じました。
だから、無理になくそうとする必要はないし、たとえ仕事を辞めたとて、別の種類の罪悪感が顔を出すんじゃないかと私は想像もしています。
ただ、今回のご相談の背景には、その優しさに相まって、“決めきれていない自分”が隠れているのかもしれないと思いました。
「仕事を頑張る」とも「子どもを優先する」とも「その間をとる」とも、明確に決めていない。
そして、そんなことを今さら考える時間もないくらい、どうにか日々を回している。
結果として残ったままになっている意思決定の曖昧さが、胸の奥の引っ掛かりとして残っているのかもしれません。
“今はこれでいい”と一旦区切る
決めるとは、未来を確定させることではなく、「今の優先順位に、意思と意図を持つ」ことです。
私は大学生の頃から、「子を望むなら、キャリアは短期決戦だ」と考えていました。
それゆえ子を産む前の20代で自分の1時間あたりの価値を最大化しようと、起業したり、副業したり。
兎にも角にも、自分の1時間あたりの価値を最大化し、子を産んでからは、子どもと家族を優先したいと考えて生きてきました。
それでも、いざ子を持つと、仕事も頑張りたい自分が顔を出し、産後3ヶ月からフルタイムで働き始めました。(苦笑)
フルタイムで楽しく働く中、産後1年1ヵ月のタイミングで希少疾患を発症。
10ヵ月の傷病休暇を経て、今は時短勤務で働いています。
私が今この働き方を選択した背景には、傷病休暇中にあった死産や4ヶ月の入院を経て、「家族との時間が何より大事」という人生の軸を再び立て直したことがあります。
この気持ちはいつか変わるかもしれません。
でもICUで「今は、絶対にそうしたい」と決めました。
その“今は”という言葉が、私をずっと自由にしてくれています。
一方で、今の私にとって仕事は、自分の精神衛生を守る行為でもあり、仕事をしないという選択もありませんでした。
社会の不条理を理由に、人を傷つけるような大人を減らしたい。
そんな思いも、働く理由のひとつになっています。
「今はこういう理由でこうしている」と言葉にできた瞬間、罪悪感は少しだけ軽くなるのかもしれません。
「どちらも大事」が、見える仕組みに変える
仕事と子供の両立に葛藤が生まれ続けるのは、自分が足りないからではなく、“現状”と“その現状の解釈”が、自分の望む生き方にまだ合っていないだけ。
気持ちだけで解消しようとせず、仕組みを作ることでバランスを取り戻せます。
例えば、私は東京出張のたびに、必ず何かを買って帰ります。
「働く=お金を稼ぐ=子の好きな食べ物が買える」というつながりを、子どもにも自分にも可視化するためです。
なおこの数ヵ月、子のマイブームは、白い苺。
正直、稼いだ額以上に苺代がかかる日もあります(笑)。
でもその白苺が、“働く=家族を大事にしない行為”から、“働く=家族を大事にする行為”に変換してくれるので、私にとってはうれしくてありがたいリクエストです。
優しさを「決める力」に変える
私たち働く親にできるのは、優しさに伴う「罪悪感」を消そうとすることよりも、その優しさを「選ぶ力」に変えること。
「子どもにも自分にも、誇れる理由で選んでいる」と思える状態が、働き方の安定軸になります。
優しさは、あなたが人を大切に思う力。
決めることで、その力は自分を責めるものではなく、日々を支えるエネルギーに変わります。
働くことも、子どもを抱きしめることも、どちらも“人生の使い方を選ぶ”という点では同じだし、裏にあるのは同じ“子を想う気持ち”です。
その選択のひとつひとつを、少しずつ自分の意思で取り戻していけば、罪悪感は、きっと形を変えた優しさに思えてくるはずです。
筆者紹介──正能茉優
ハピキラFACTORY 代表取締役
パーソルキャリア 企画職
1991年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部 卒業。
大学在学中に始めたハピキラFACTORYの代表取締役を務める傍ら、2014年博報堂に入社。会社員としてはその後ソニーを経て、現在はパーソルキャリアにて、HR領域における新規事業の事業責任者を務める。ベンチャー社長・会社員として事業を生み出す傍ら2018年度より現在に至るまで、内閣官房「まち・ひと・しごと創生会議」「デジタル田園都市国家構想実現会議」などの内閣の最年少委員を歴任し、上場企業を含む数社の社外取締役としても、地域や若者といったテーマの事業に携わる。
また、それらの現場で接した「組織における感情」に強い興味を持ち、事業の傍ら、慶應義塾大学大学院にて「組織における感情や涙が、組織に与える影響」について研究。専門は経営学で、2023年慶應義塾大学院 修士課程修了。

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