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柳谷智宣の「簡単すぎて驚く生成AIの使い方」 第39回

素早く信頼性の高い検索やファクトチェックをするならChatGPTやGeminiよりPerplexityがオススメ

2025年12月19日 14時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水

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 本連載は生成AIをこれから活用しようとしている方たちのために、生成AIの基本やコピペしてそのまま使えるプロンプトなどを紹介。兎にも角にも生成AIに触り始めることで、AIに対する理解を深め、AIスキルを身に着けて欲しい。第39回は検索特化型AI「Perplexity(パープレキシティ)」について解説する。

 日本で生成AIを利用したことがある人は着実に増えており、その利用用途はトップが検索で、2位が文章の作成となる。そして、生成AIサービスのシェアは1位がChatGPTで、2位がGeminiだ。つまり、検索用途で、ChatGPTやGeminiが利用されているというわけだ。

 もちろん、現在ではChatGPTやGeminiもウェブ検索機能を搭載しており、「~について、検索して教えて」と明記すれば検索してくれる。とはいえ、微妙に古い情報を引っ張ってきたり、ハルシネーションが混じることもある。「正確に調べる」「事実を確認する」という一点に限れば、汎用的な生成AIよりも、検索特化型の生成AIの方が向いている。そこで今回紹介したいのが、「Perplexity(パープレキシティ)」だ。

検索特化型生成AIサービス「Perplexity」

検索特化型だからこそ信頼性が高い「Perplexity」

 Perplexityはユーザーのプロンプト(指示・質問)を受け取ると、まず内容を解釈し、リアルタイムでウェブ上の情報を探しにいく。そして信頼できる複数ソースを収集し、要点をまとめて回答に仕立てる。ここで重要なのは、回答ごとに「脚注」が付く点だ。学術論文のように、根拠が小さな注釈として示される。

 気になった箇所や怪しい数字があれば、リンクを辿って一次情報へ即アクセスできる。AIが捏造していないか、元記事の文脈を適切に読んだかを、人間の目で素早く検証できる。もしくは、元ネタが信用できるかどうかを判断できる。最初から「検索エンジン」として設計されたPerplexityは、創造性より事実の正確さを優先しており、信頼性が高い。

 従来のGoogle検索体験を思い出してみよう。キーワード入力後、上位に並ぶ広告を避け、SEOだけが効いた薄いアフィリエイト記事をかいくぐり、本当に欲しい情報のあるページを探し当てる必要があった。一つの答えに辿り着くためにタブを10個も20個も開き、行ったり来たりする作業。時間の浪費であり、集中力も削られる。

 Perplexityはこのプロセスを短縮してくれる。質問を投げるだけで、AIが代わりに多数のサイトを読み込み、必要情報を抽出し、まとまったレポートとして返す。広告ノイズもなく、スクロールを強いる長い前置きも少ない。欲しい答えが簡潔な文章として目の前に出てくる。単なる効率化に留まらず、情報収集のストレスを根から減らす体験となるだろう。

 情報の鮮度もいい。一般的なLLMには学習データのカットオフがあり、直近のニュースには弱くなりがち。ところがPerplexityはリアルタイム検索が前提なので、数分前のプレスリリースや今朝のニュース内容も反映されやすい。市場動向の把握や速報のファクトチェックでは、この即時性が武器になる。

一方的な答えを返すだけでない優秀なアシスタント

 Perplexityは「図書館司書」のようなものだ。ユーザーが求める情報を検証可能な形で提示してくれる。余計な装飾や情緒的な表現を削り、客観情報へ寄せる傾向にある。レポート作成や論文の資料集め、会議前の急ぎの下調べで活用できる。もちろん、ここから本番の原稿や資料を作成するならChatGPTやGeminiの方が優れている。

 使い方は、他の生成AIと同じ。プロンプトを入力すると、出力が表示される。画像や添付ファイルをアップロードしたり、音声入力することも可能。有料プランを契約すれば、より高度な機能を使えるようになる。

 ここでは、先日ニュースになったOpenAIとディズニーの提携について検索してみよう。あっという間に検索し、最新情報を教えてくれる。

■プロンプト
OpenAIとディズニーの提携および、その周辺のニュースを網羅的に調査してください。主にビジネス戦略についてフォーカスして、具体的な数字も正確に教えてください。

13のウェブページを調査し、包括的な調査結果を提示してくれた。

リンクをクリックするとソース元のウェブページが別タブで表示される。

 さらにPerplexityは、検索意図が曖昧だとAI側から逆質問を投げることがある。「それは○○のことか」「どの地域データが必要か」などと確認してくるので、対話によってユーザーの思考も整理され、より精度の高い検索結果へ近づけられる。一方的に答えを返すだけではなく、情報の解像度を上げる共同作業をしてくれる、優秀なアシスタントのようなものだ。

 一般ユーザーにとって嬉しいのがフリープランだ。上位機能は使えなかったり制限がかかるが、通常検索であれば無制限に利用できる。一般的な検索やファクトチェックであれば十分に使えるのがありがたいところ。

 筆者も普段はChatGPTとGeminiを活用しているが、出力のファクトチェックはすべてPerplexityで行っている。そのため、プロンプトを入力する回数だけで見れば、もっとも活用している生成AIとも言える。

 生成AIで検索するなら「Perplexity」の存在を頭に入れておこう。通常はChatGPTやGeminiを開いているため、そのまま検索したい、というのもいいだろう。しかし、少しでも情報の鮮度が低かったり、ハルシネーションの気配があったら、Perplexityで調べ直したい。情報の鮮度や正確性が欲しい情報ならなおさらだ。生成AIは適材適所で活用することをお勧めする。

 ただし、最後に一つ覚えておいてほしいことがある。最近、「LLM電話番号汚染」という詐欺の手口が流行っているのだ。AI向けに最適化されたテキストをネットのあちこちにばらまき、AI検索の結果に詐欺師の電話番号を表示するといったものだ。例えば、Perplexityにエミレーツ航空の予約電話番号を聞くと、間違った番号を返してきた事例がある。今のところ、電話番号をAIに聞くのは避けておいた方がよいだろう。また、他の生成AIと同様、出力を鵜呑みにするのはNG。ハルシネーション少な目とはいえ、ファクトチェックは別途必要であることは肝に銘じておこう。

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