ASCII Power Review 第300回
ミラーレスでは味わえない体験ができるカメラです
マニュアルレンズで激ボケと超解像写真を楽しむ「ライカM EV1」実写レビュー
2025年12月08日 01時00分更新
カメラ好きなら誰もが憧れるライカ。その象徴ともいえるM型がついにEVFを搭載し、新モデル「ライカM EV1」として発売された。
カメラマニアとしては従来の二重合致式レンジファインダーと、どう撮り心地が違うのか興味があるところだ。
ライカから試用機を借りて実写してみたので、その出来栄えを見ていこう。
レンジファインダがEVFになり軽量化
レバーは「ファーカスピーキング」と「デジタルズーム」
ボディーは従来モデル「M11」系がベースで、サイズもまったく同じ。ただ重量は約46g(バッテリー込み時)軽くなっている。この点がファインダーの光学系か電子式の違いだろうか。
なお「M11」ならびに「M11-P」は、トップカバー の素材がブラックボディーはアルミで530g、シルバーボディーは真鍮で640gと重量が異なっていたが、「M EV1」はアルミ製のブラックボディーのみとなっている。
外観の違いでは当然のごとく前面にはファインダー窓は無くなり、上面左のISOダイヤルも省かれている。デザイン的にはレンズ一体型の「ライカQ」シリーズに近く感じる。
前面には距離計窓のようなものが残されているが、ここはセルフタイマー時にランプが点灯する。レンジファインダーのデザインを利用したユニークなギミックだ。
従来のM型ライカではレンジファインダーのブライトフレームを変更する前面のレバーが、EV1では「FNレバー」となり、初期設定ではレンズ側に倒すと「ファーカスピーキング」、側面側に倒すと「デジタルズーム」が割り当てられている。
背面の接眼部はアイセンサーや視度補正ダイヤ ルが備えられ、こちらも「ライカQ」シリーズに近い形状。操作系のボタン類や固定式の背面液晶などは変わりない。
バッテリーも「M11」系と共通だが、公称撮影可能枚数は約700枚から約237枚に減少。実際の撮影ではRAW+JPEGで日をまたぎつつ288カット576枚撮影時で電池切れ。マニュアルフォーカス機としてはスタミナが少なく感じるが、小型ミラーレス機と同程度である。
メディアはSDにくわえ、内蔵メモリーも搭載。「M11-P」の256GBよりは減ったが、それでも初代「M11」と同じ64GBの容量がある。
撮像素子はM11と同じ
精細な解像感がうれしい
撮像素子も6030万画素と変わらず、RAWとJPEGのサイズを個別に変更することができる「トリプルレゾリューション」や、画像をクロップして拡大する「デジタルズーム」も引き続き搭載されている。
RAWでも6030万画素(9528×6328ドット)から3600万画素相当(5272×3498ドット)、1800画素相当(5272×3498ドット)にサイズダウンして記録ができる。データ容量を抑えたいときには有効だ。
画質も「M11」と同等で、高画素機らしく細部まで精細に解像されている。
遠景では時に精細感が際立つ。ぜひ拡大して細部をチェックして欲しい。使用レンズ「Summilux-M 50mm f/1.4 ASPH.」・絞りF8・シャッタースピード1/750秒・ISO100・ホワイトバランスオート。
またシャープネスやコントラストが強調され、濃厚な色乗りや絞りが開放気味ではあえて周辺光量を減光するなど、独特な雰囲気を持つJPEGの絵作りもそのままだ。
JPEG撮って出しとRAWからAdobeCameraRawでストレート現像した写真の比較。発色や周辺光量減光の違いに注目。使用レンズ「Summilux-M f1.4/28mm ASPH.」・絞りF1.4・シャッタースピード1/16000秒・ISO100・ホワイトバランスオート。
ISO感度も変わらずISO64から5万まで設定ができる。6400を超える高感度域ではRAWだと粒のそろったノイズ感なのに、JPEGでは色ノイズで荒れた描写を演出しているのも興味深い。
こちらも感度別に撮影したJPEG撮って出しとRAWからAdobeCameraRawでノイズ処理をせず現像した写真の一部を拡大して比較。画面左上からISO1600・3200・6400・12500・25000・50000。
今回試用したレンズその1、「Summilux-M 50mm f/1.4 ASPH.」のブラック。定番のズミクロン(開放F2)より明るい開放F1.4の標準レンズ。ダブルカムユニットの採用でレンジファインダーの測距範囲より短い45cmの近接撮影が可能。オンラインストアでの価格は79万2000円。
EVFでのマニュアルフォーカス
2つの「MFアシスト」を活用する
EVF化で一番気になるのはやはりマニュアルフォーカスのMマウントレンズによるピント合わせだろう。
EVFは576万ドットで撮影倍率0.76倍とスペック的には高精細なので、焦点距離50mmくらいのレンズなら十分にピントの山はつかめる。ただ28mmなどの広角では少し心許ないことも。
ピント合わせをアシストする機能としては「フォーカスピーキング」と「拡大表示」が搭載されている。
フォーカスピーキングではピントが合った部分の輪郭が強調表示されるので、よりピントの山がつかみやすくなる。初期設定では「FNレバー」でオンオフの切換ができる。
「拡大表示」は画面を拡大することでピント合わせやすくするもの。初期設定ではシャッターボタン横の「FN」ボタンに割り当てられ、拡大率は2段階で切り替えられる。
拡大する位置は背面液晶でのライブビュー撮影なら画面をタッチすることで即座に移動することができるが、ファインダー撮影時は背面の十字キーで移動することになるので、拡大率を最大にすると少し移動に手間取る感もある。欲を言えば背面液晶をなぞって移動させるタッチパット機能が欲しいところ。
なお拡大位置を中央に戻す機能もあるが、初期設定ではどのボタンにも割り当てられてなく、上面もしくは背面の「FN」ボタンに自分で設定する必要がある。
これらの「MFアシスト」をシーンに合わせ併用すれば、一般的なミラーレス機のマニュアルフォーカスでの撮影と遜色はなく、カメラマニアなら特に困ることは無いだろう。
ただライブビューは実際の絞り値での表示(一眼カメラでいうこところの絞り込み表示)になるので、絞り込んで被写界深度(ピントが合う範囲)が深い状態ではピントの山をつかみにくくなる。
そんなときは開放側でピントを合わせてから絞り値を変更するか、パンフォーカス(被写界深度が深い状態)を活かして目測でピント合わせるなど昔ながらのテクニックを応用するといいだろう。
さらにコツをあげるなら「MFアシスト」の操作系は好みの配置にカスタマイズするのがオススメ。自分の場合はいろいろ試した結果、前面の「FN」レバーに「フォーカスピーキング」と「拡大表示」をまとめて、上面「FN」ボタンに「フレームを中央に戻す」を割り当てるのが一番しっくりきた。
なお「MFアシスト」にはオートという機能もあり、ピントリングを操作すると自動で「拡大表示」される。電子接点を持たないMマウントレンズだが、距離連動機構を利用したM型ライカならではのギミックはお見事。ただいかんせん反応が鈍く、拡大表示されるまでワンテンポ待たされるため実用的には微妙だ。
今回試用したレンズその3、「Noctilux-M f1.25/75mm ASPH.」。大口径Mマントレンズに与えられる名称がノクティルックス。その浅いピントを正確に合わせるのにEVFは最適だ。オンラインストアでの価格は223万3000円。
単焦点のMレンズを味わう
マニュアルフォーカスで写真を撮る

この連載の記事
- 第299回 1kg切りなのにバッテリーで30時間超えのAIノートPC「VersaPro UltraLite タイプVY」実機レビュー
- 第298回 6万円台で速度もハプティックペンも気持ちいい=お買得の最新Androidタブレット「Lenovo Yoga Tab」実機レビュー
- 第297回 15型AMOLEDで厚み5mmは最強のゲーミングAndroidマシンだ!!=「Galaxy Tab S11 Ultra」実機レビュー
- 第296回 最強化した1憶画素の超絶ミラーレスカメラ=ハッセルブラッド「X2D II 100C」実写レビュー
- 第295回 本日発売!! 世界初の超広角10倍ズームSigma「20-200mm」実写レビュー=レンズ前2cmまで寄れた!!
- 第294回 RTX50に4KOLED搭載でゲームもお仕事も安心の最強16型ノートPCだ=「Dell 16 Premium」実機レビュー
- 第293回 6100万画素=究極のフルサイズコンデジ「RX1RIII」実写レビュー
- 第292回 次世代のXPSは未来デザインでやはり爆速だった=「Dell 14 Premium」実機レビュー
- 第291回 2億画素カメラを搭載しながら極薄化も実現した2つ折りスマホの完成形「Galaxy Z Fold7」実機レビュー
- この連載の一覧へ

























