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あの「ネコ配膳ロボ」のPudu、次は「犬」で屋外へ──悪路も階段も走破する産業用4足歩行ロボ「PUDU D5」

2025年12月04日 08時00分更新

文● サクラダ 編集●飯島恵里子/ASCII

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車輪と脚を組み合わせたハイブリッドモデル「PUDU D5-W」

 Pudu Roboticsは12月3日、東京ビッグサイトで開催された「国際ロボット展」にて産業向けに設計された自律型4足歩行ロボット「PUDU D5」シリーズを披露した。同社といえば、ファミリーレストランなどで見かけるネコ型配膳ロボット「BellaBot」でおなじみだが、今回の新製品は打って変わって無骨でタフな産業用モデルだ。複雑な地形や過酷な環境下での業務自動化を目指し、純粋な4足歩行モデル「PUDU D5」と、車輪と脚を組み合わせたハイブリッドモデル「PUDU D5-W」の2種を展開する。

左からPudu Robotics 日本ゼネラルマネージャー 楊 嘉祥氏、Pudu Robotics 創設者兼CEOの張 涛氏

Pudu Roboticsの歩みとマイルストーン

最大30kgを背負って悪路や階段を走破
IP67の防塵防水で全天候に対応する「現場の相棒」

 PUDU D5シリーズの最大の特徴は、従来の車輪型ロボットでは立ち入れなかった場所へ踏み込める走破性にある。不整地、急な傾斜、階段、そして段差のある環境でも、4本の脚を駆使して移動が可能だ。特にハイブリッドモデルのD5-Wは、平坦な場所では車輪を使って最高秒速5mで高速移動しつつ、最大30度の傾斜や高さ25cmの段差も乗り越えることができる。

 特筆すべきは、その環境耐性の高さだ。IP67規格の防塵・防水性能を備えており、雨や雪、粉塵が舞うような過酷な屋外環境でも稼働できる。マイナス20度から55度までの広温度帯設計を採用しており、寒冷地ではマイナス10度からのコールドスタートも可能だという。本体は高強度のアルミニウム構造を採用しており、最大30kgの荷物や機材を積載した状態で2時間以上の連続稼働を実現する。1回の充電での走行可能距離は14kmに達する。電力プラントや化学工場での点検業務、建設現場での資材運搬、あるいは災害時の緊急対応など、人が立ち入るには危険あるいは過酷な現場での活躍が期待される。

 また、少子化や高齢化による労働力不足を補うための配送員の代わりとして、運送・配達業での活用も見込まれている。さらに、盲導犬の代わりに視覚が不自由な人に向けた歩行補助など、社会課題の解決に向けた応用も視野に入れているという。

 SoCには、自動車グレードのコンピューティングシステムを搭載しており、NVIDIA OrinとRK3588を組み合わせたデュアルプロセッサアーキテクチャを採用。最大275 TOPSの演算性能を発揮し、リアルタイムでの自己位置推定と環境地図作成(SLAM)、3D再構築、障害物の認識と回避、物体認識、経路最適化などのマルチタスクを低遅延で処理する。これにより、人が監督しない状況でも周囲の状況を判断しながら安定した稼働が可能となり、最大100万平方メートルという広大な施設内でも、完全に自律したパトロールや業務遂行が可能となる。

 認識能力については、4基の120度魚眼カメラによる360度の視界に加え、前後に配置された2基の192ラインLiDARセンサーにより、高密度な3D点群データを生成する。遠隔可視化ツールも用意されており、必要に応じてオペレーターがミッションを監督することも可能だ。

 また、人間との協働をスムーズにするためのインターフェースも強化された。10種類以上のハンドジェスチャーを認識し、手を振って呼び寄せたり、掌を見せて停止させたりといった直感的な操作ができる。さらにAIノイズリダクションを搭載したマイクアレイにより、騒音の多い工場内でも正確な音声コマンドを聞き分けることが可能だ。ユーザーが声をかけることで音声認識と独自の予測アルゴリズムにより、狭い場所や混雑した環境でも適切な距離を保ちながらスムーズに追従走行をするという。

自社開発モーターで高性能化を実現
来春、600万円台〜で日本上陸へ

 D5シリーズにおいて、関節モジュールやモーターを自社開発することで、コストを抑えつつ高い運動性能を実現したという。D5シリーズには高い強度が求められるため、モーターから自社で開発する必要があったという。今回のフルラインアップ展示とD5シリーズの発表は、モーターやモーション制御から、知覚、ナビゲーションにいたるまで、同社のフルスタックの自社開発能力を示すものだ。

強い強度のモーターを自社開発し、搭載。バク転も可能だ

 気になる日本国内での展開だが、電波法や電源周りの認証を取得した上で、2026年4月頃の発売を目指しているという。想定価格はエンドユーザー価格で600万〜700万円程度になる見込みだ。まずは代理店経由での販売となり、そこからリースやレンタルといった形で現場に導入されるケースが多くなると予想される。

 D5シリーズは、専門型ロボットとヒューマノイドロボットの重要な橋渡しとなる存在であり、同社が掲げる「マルチフォーム・エンボディードインテリジェンス」戦略の中核となる製品。なお、同社は今後、日本市場向けに小型の清掃ロボットをリリースする予定もあるという。

会場では階段や坂の上り下りを披露

 飲食業界で培った「安定的かつ大量にロボットを供給するノウハウ」と「人混みでも安全に動くナビゲーション技術」を武器に、今度は屋外や産業現場という新たなフロンティアの開拓に乗り出す構えだ。

名称 PUDU D5 PUDU D5-W
寸法 900×543×572mm
重量(バッテリー含む) 61kg 62kg
制御・認識演算能力 NVIDIA Jetson Orin AGX 64GB + RK3588
感知センサー 3D LiDAR×2 + 魚眼カメラ×4
最大関節トルク 165Nm
バッテリー容量 1000Wh
稼働時間 2~2.5時間 2~3時間
連続歩行負荷 20~30kg
登坂能力 80cm
連続階段乗越え高さ 30cm 25cm
斜面走行能力 上り坂25°、下り坂45° 上り坂30°、下り坂45°
動作温度 -20℃~55℃
低温冷起動 < -10℃
保護等級 IP67
自律ナビゲーション
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