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三井住友ファイナンス&リースが「assetforceリース会計パッケージ」

大手リース会社が発売した“AI入り会計パッケージ”がすごいぞー!

2025年11月10日 12時00分更新

文● 貝塚/TECH.ASCII.jp

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assetforceリース会計パッケージの主な機能

 こうした高まる業務負荷に対応するため、三井住友ファイナンス&リースが開発したのが、今回のassetforceリース会計パッケージだ。

 特徴は、リース会社として培った専門知識と、事業会社としての会計実務ノウハウを、AIとユーザーインターフェースに融合させた点にある。

 なかでも注目は、AIによる契約書の自動読み取り機能だ。新リース会計基準に必要な情報を正確かつ効率的に抽出するため、AI-OCR(光学文字認識)と生成AIを組み合わせた独自の仕組みを搭載。PDFビューワー上ではAIが抽出した箇所をハイライト表示し、また入力欄から該当箇所を即座に参照できるため、確認・レビュー作業をスムーズに進められる。

 また契約情報からリース期間を推定する「リース期間推定機能」も業務効率化に大きく役立つ仕組みだ。リース期間の判定作業をAIが補助することで、判断のばらつきを抑えつつ、作業を効率化できる。判定ロジックは企業のニーズに応じてカスタマイズできるため、たとえば「関東エリアと関西エリアで、デフォルトの契約期間を変える」「特定の契約条件が入った場合には、契約期間を短く推定させる」といった運用も可能になる。

「企業の規模や業務の量によっても変わるため一概には言えないものの、私たちのリース会社としての業務をサンプルとして考えた場合で、assetforceリース会計パッケージの導入によって、新リース会計基準の適用によって増える会計担当者の作業負荷は、およそ半分程度にまで削減されるという試算もあります」(DX推進部 副部長 assetforce営業企画責任者 縄野雄大氏)

 さらに、ワークフロー機能によって部署間連携にも配慮している。具体的には、支部の現場担当者が入力した情報を、本社の経理部門や責任者が段階的にチェックする仕組みを構築でき、親会社・子会社間をまたぐ承認フローにも対応しやすくしている。

 契約期間中の変更に関する対応も万全だ。契約変更時に発生するリース負債や使用権資産の再測定といった煩雑な計算を実行した上で、契約更新日などの重要日程にはアラートを設定可能。期中対応の抜け漏れを防ぐことにも役立つだろう。

 会計計算結果や仕訳情報をAPI経由で後続システムへ連携することもでき、新基準適用後の会計業務にまつわる一連の業務を「専門的な知見を持つAI」の力を借りて、ワンストップで管理できるパッケージに仕上がっている。

「AIは有用ですが、限界もあります。大量の情報の中から規則性を見つけ出して、同一の処理をするといったAIの特徴を、契約や会計という分野に掛け合わせる際に、どのようなAIに設計すればいいのか。どのように契約書を取り込み、どこを優先度の高い情報として扱えばいいのか。どうすればAIに微妙で有機的な動きを与えられるのか。こうした調整を重ねながら開発しました」(理事 ICT開発部 デジタルラボ所長 兼 ICT開発部 部付部長の藤原雄氏)

リース会社が“自らの知見”を開放した理由

 取材を通じて率直に思ったのは、自社の知見をここまで惜しみなく体系化し、ソフトウェアとして外部に提供するというのは、リース会社として相当な決断だろうということだ。それは、自社の強みを他社にも開放することになりかねないからだ。

「実は、私たちはこういったシステムをもともと内製して、社内の業務で使っていました。その様子を見ていた社長(橘 正喜氏・現三井住友銀行取締役会長)が『これはすごい!』と声を上げ、パッケージとしての開発がスタートしています。私たちはソフトウェアベンダーではなく、リース会社です。リース会社が自分たちで作り、リース会社ならではの知見を結集している点が『assetforceリース会計パッケージ』にしかない、大きな魅力だと思っています」(専務執行役員の有馬高司氏、理事 企画部・関連事業部担当役員補佐 戸谷仁氏)

 それでも「業界全体の生産性を左右する課題」の解消に向け、同社はあえて一歩を踏み出したようだ。「まるでリース契約を知り尽くした熟練者が、隣でサポートしてくれるような会計パッケージ」が生まれた。

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