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KDDIとローソンがAIとロボットを使って人手不足解消と業務効率化を目指す!

2025年10月28日 11時30分更新

文● スピーディー末岡 編集●ASCII

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 KDDIとローソンは、深刻化する人手不足への対応と、グローバル展開におけるオペレーションの最適化を目指し、AIおよびロボット技術を駆使した複数の実証実験を、国内外の店舗で集中的に展開しています。今回発表された3つの実証実験を紹介します。

 なお、これらのデモンストレーションは28~29日に高輪ゲートウェイで開催中の「KDDI SUMMIT 2025」にて見ることができます。

AIグラスを活用した業務効率化実証
作業の可視化と支援

 KDDIとローソンは、AIグラスを活用した業務効率化実証を2025年10月28日~12月26日までの期間で実施しています。このAIグラスは、カメラやマイク、無線通信機能を内蔵した装着負荷の少ないデバイスであり、ネットワークを通じてAIと連携することが特長です。

 本実験の背景には、リテール業界の人手不足に加え、ギグワーカーやグローバル人材といった多様な人材の活用が進む中で、作業習得に時間を要するという課題があります。

 具体的な実証内容は2つです。1つは「作業内容の可視化」です。従業員がAIグラスを着用して業務を撮影し、AIが作業内容や作業時間を詳細に分析・可視化します。これにより、熟練者の作業が可視化され知見の継承に寄与するほか、定点カメラでは難しい手元や従業員の目線を捉えた撮影が可能となります。この可視化された内容をもとに、作業効率化に向けた施策の立案が可能になります。

 2つ目は「作業支援」です。食品調理などの業務マニュアルをAIに取り込み、従業員がAIと音声で対話しながら手順などを確認できます。これにより、ハンズフリーでマニュアルが確認でき、作業の中断を防ぎ効率的な作業が可能となります。また、指導者側の教育負担が軽減されるほか、多言語対応によりグローバル人材の育成にも活用できることが期待されています。

 なお、実証にあたっては、来店者のプライバシーやセキュリティーに配慮し、映像はマスキング処理をして、個人情報が含まれない分析データとして取り扱われます。また、国内管理下のAIデータセンターや閉域網を活用し、データの機密性を担保しています。本実証の成果は、リテール業界に留まらず、物流業やサービス業など他分野への利用拡大も見据えられています。

AI×ロボットによる店舗DXの実証
欠品検知と品出しの自動化

 KDDIとローソンのもう1つの取り組みが、「ローソン S KDDI 高輪本社店」にて11月8日から開始される、AIとロボット技術を組み合わせた新たな店舗DXの実証実験です。これは、ローソンが掲げる2030年度の店舗オペレーション30%削減の目標達成に向けた取り組みの一環になります。

 小売業界では人手不足が課題となっており、特に商品数が多いお菓子類やインスタント食品などの品出し業務の効率化が求められています。

 本実証では、以下の2種類のロボットが活用されます。

1. 売場の欠品を検知するロボット 自律走行ロボットに4Kカメラなどの撮影機材を搭載し、画像解析AIを用いて商品陳列棚の欠品検知をします。これにより、人による目視確認が不要となり、売場から離れた場所でも最新の状況を把握できます。AIの解析結果は、店舗運営支援システムと連携させ、人流と欠品状況の分析から最適な棚割りの検証に活用されます。

2. 商品を品出しするロボット アームを搭載し、棚の奥への商品補充をする品出し業務の自動化を実現します。VLA(Vision-Language-Action)モデルのAIを活用し、事前に店舗業務を学習させることで、ロボット自身が環境に応じて業務を遂行します。

 品出しロボットには、基本的な動作に対応する「2指グリッパーモデル」と、あらゆる人の手の動きを再現できる「5指ハンドモデル」という特徴の異なる2種類のアームを使用し、作業の適性を見極めます。また、アームが取り出した商品の種別や個数を記録することで、バックルームの在庫数把握も可能となります。

 実店舗での実証にあたっては、来店者のプライバシーやセキュリティーへの配慮が重要であり、店内映像の高度な匿名化、および国内管理下のAIデータセンターとセキュアな通信インフラを活用することで、高信頼かつ安全な環境を確保しています。

フィリピンでの実証実験:海外市場におけるオペレーション最適化

 KDDIとローソンの3つめの実証実験は海外です。フィリピン国内の一部ローソン店舗において、AIを活用した店舗オペレーションの効率化と、売上向上に向けた実証実験を9月3日から順次開始しました。ローソンは2015年にフィリピンに進出し、2025年9月末時点で221店舗を展開しています。

 本実験の目的は、海外市場の特性に合わせてデジタル技術を活用し、店舗運営を最適化することです。

 主な取り組みは以下の3点です。

1. 商品陳列計画の高度化 立地条件が同様の店舗の販売実績や購買傾向をAIが分析し、店舗の立地条件に合った最適な品揃えを推奨します。これにより、都市開発に伴う周辺環境の変化にも迅速かつ柔軟に対応できます。

2. AI発注システムの導入 販売実績や在庫データなど多様なデータをAIが分析し、店舗ごとの販売力に応じた商品発注数を推奨します。このシステム導入により、発注作業時間の短縮、過剰在庫や廃棄ロスのリスク低減、在庫管理時間の短縮が期待されます。

3. 店内防犯カメラの活用高度化 店内防犯カメラの映像をAIが解析し、売場の陳列状況やレジの混雑状況を可視化します。異常が検知された映像のみをAIが自動で切り取る機能により、スタッフによる映像確認時間が短縮されます。

 ローソンは、フィリピンをはじめとするアジアでの店舗オペレーション効率化と売上向上に本実験の結果を活用し、2030年度までに海外店舗数を約1万4000店舗に拡大することを目指しています。KDDIは、各国の市場特性に合わせてシステムをカスタマイズすることで、ローソンの持続的な成長に貢献する方針とのこと。

【まとめ】店舗オペレーションの効率化は
AIとロボットとデータセンターで実現する

 KDDIとローソンが同時に発表したこれら3つの実証実験は、店舗オペレーションの課題解決に向けたDX戦略を、国内と海外の両輪で加速させていることを示しています。

 国内においては、深刻な人手不足に対応するため、AIグラスによる「作業の高度な可視化とリアルタイム支援」およびAIロボットによる「欠品検知や品出しといった重労働・ルーティンワークの自動化」を推進し、店舗従業員の負担軽減と業務効率化を追求。特にAIグラスやAIロボットは、熟練者の知見継承や多様な人材の即戦力化に貢献することが期待されています。

 一方、フィリピンでの実証は、ローソンが目指すグローバル展開を支えるための重要なステップです。AI発注システムやカメラ解析を市場特性に合わせて活用することで、オペレーションの効率化と売上向上を実現し、海外における企業価値向上を目指しています。

 これらすべての取り組みは、国内管理下のAIデータセンターや高速・セキュアな通信インフラを基盤としており、最新技術の導入と、プライバシー・セキュリティへの配慮の両立が図られています。ローソンはこれらのDXを通じて、店舗オペレーションの目標削減(2030年度に30%削減)の実現に向けた道筋を描いています。

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