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業務を変えるkintoneユーザー事例 第296回

物流大手ロジスティードが挑んだ“主体性を育む”市民開発者育成

わずか3名で5万6000人へのkintone展開 「作る」から「変える」マインド変革が突破口に

2025年10月20日 09時00分更新

文● 柳谷智宣 編集● 福澤/TECH.ASCII.jp 写真●サイボウズ

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ゲーム感覚で主体性を育む市民開発者育成の効果は?

 「変える」マインドを全社に広げていくためには、自ら業務改善に取り組む市民開発者の育成が不可欠だ。推進チームは、人材育成を最重要項目と位置づけ、独自の教育プログラムを構築。ビギナーから段階的にステップアップできるよう、レベルに応じた教育コンテンツを用意した。

 まず、kintoneに初めて触れる初心者向けには、楽しく基本操作を学べる「基本機能体験アプリ」を開発。主要機能を実際に体験できるため、安心して市民開発の第一歩を踏み出せるよう設計されている。

レベルに応じた教育コンテンツ体系を用意

 さらに、学びを継続してもらう動機付けになるよう、「クエスト方式」のプログラムを用意。「スキルセルフチェックアプリ」では、自身の理解度をゲーム感覚で確認でき、アプリの作成数や業務削減時間といった実績、kintoneに対する熱意も蓄積される。最終的にeラーニングでの社内テストに合格すると、メダルが授与される仕組みだ。

ゲーミフィケーションを取り入れたモチベーションを向上させる工夫

 座学や自習だけでなく、対面でのサポートも充実させている。その代表例が「対面型の体験会・相談会」だ。参加者は事前に自身の業務課題を整理し、当日は、全体講義からアプリ作成、発表までのステップで進められる。グループディスカッション方式を採用しているのがポイントだ。

「チームで課題を共有しながら、どんなアプリを作るかを議論することで、現場目線の改善アイデアが生まれます。完成度よりも、どう課題を捉え、どう解決しようとしたかを重視します。発表では、他チームの取り組みも共有され、参加者同士での学びや刺激につながってます」(辺氏)

 体験会・相談会は、これまでに20回を開催し、200人以上が受講している。参加者にも課題解決の場として好評で、ポジティブなフィードバックは、推進チームの原動力となっているという。

累計アプリ数は3倍、業務削減効果時間は2倍、ライセンス数も4倍に

 こうした取り組みの成果を可視化するために、「実績可視化アプリ」も運用している。作成されたアプリがどれだけの業務効率化につながったかを「改善効果時間」として記録。それぞれのアプリ開発者の貢献を見える化して、さらなる改善活動の促進につなげている。

 導入効果は、着実に数字として表れている。2021年度から2024年度にかけて、アプリ数は3倍以上、業務削減時間は2倍以上に増加した。ライセンス数も年々順調に伸びており、活動の成果が全社に広がっていることがわかる。

2021年度からのkintoneの導入効果

 今後について辺氏は、「市民開発、海外展開、AI活用の3つを柱に、現場とともにもっと楽しく、もっと前向きに挑戦を続けていきたいと」と力強く語り、セッションを締めくくった。

 セッション後、サイボウズの柴田祐吾氏から辺氏に質問が投げかけられた。

アフタートークの様子

柴田氏:相談会や体験会で参加者が事前に設定する課題は、推進チームが提供しているのでしょうか。

辺氏:現場の方が、普段の困りごとや悩みを自身で持ってきます。そして体験会の当日に、参加者同士でコミュニケーションしながら、アプリ作成につなげる流れです。

柴田氏:課題を自分で抱え込まずに、参加者と共有しながらアプリを作っていくのですね。5万6000人の社員にkintoneを広げるという目標に向けて、新たに取り組んでいきたいことはありますか。

辺氏:今はすでにインドネシアで市民開発を進めています。まずはアジア圏での展開に注力していきます。

関東・甲信越地区の代表者は…

 kintone hive tokyoの最後には、参加者の投票を経て、関東・甲信越地区の代表が発表された。7組の登壇者の中で最も支持を集めたのは……プロサスの小田凪波氏と黒田章太氏だ(参考記事:“Excel地獄”から始まった全社DX 若手女性社員の熱意が老舗企業の「ITなんて無理」を覆す)。

 小田氏らは、幕張メッセで開催されるCybozu Daysのkintone AWARDに出場予定だ。

関東・甲信越地区の代表者はプロサスの小田凪波氏と黒田章太氏に!

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