専門家に聞く「やっぱり賃貸!」派のミドル世代が確認すべき6つのポイント
ミドル世代の中には転勤、離婚、死別、両親との同居予定、地元に戻る予定があるなど、様々な事情で賃貸住まいをしている、またはこれから賃貸を選択する方がいます。その一方で、「賃貸で良いのだろうか」そう漠然と悩んでいる人も少なくありません。
1999年創業、東京・麻布十番で地域に根差した不動産サービスを提供し続けている株式会社パシ・コム代表取締役の渡邉仁見さんに、ミドル世代に知ってほしい賃貸のメリット・デメリットや注意点を伺いました。(シリーズ2/2)
「環境を変えたい」と思ったらすぐに動ける。賃貸住まいのメリット
相続問題の回避、自己管理の負担軽減、介護施設等への移行のしやすさなど、賃貸ならではのメリットは、意外と多くあります。中でも大きな魅力は、「環境を変えたい」と考えた際の身軽さです。
持ち家の場合、同じことをしようとするとローンの返済をしながら賃貸の家賃も発生するケースがあるため、思い立ったらすぐ行動できる賃貸の方が性格に合っている人も多くいます。中には引っ越し自体を楽しんでいる人も。
「私の知り合いには、70代で長野に移住し、現在80代で賃貸に住んでいる方がいます。その方の願いは『どうしても施設には入りたくない』ということ。定期的に訪問介護を受けながら自立した生活を続けていらっしゃいます。いくつになっても自由な発想で人生を選択できる。これは賃貸の大きなメリットです」(株式会社パシ・コム代表取締役の渡邉仁見さん、以下同)
高齢になるほど高いハードル。賃貸住まいのデメリット
一方で、70代を超えた高齢者の場合、賃貸契約のハードルが上がりやすく、近くに家族がいるか、万が一の際にすぐに駆けつけてもらえるかなどを確認されることも多いそう。
「高齢者向けのURなど新しい暮らしの選択肢が増えてきているとはいえ、ミドル世代のうちに『シニア世代になっても賃貸で問題がないか』をしっかり考えておく必要があります。行政のサービスも要チェックです」
また、昨今の情勢により最近は人気のエリアなどで「定期借家契約」という契約も増えてきています。主流である「普通借家契約」では、更新時期に入居者が「解約」か「更新」か、を判断できます。しかし「定期借家契約」では、定められた期間を過ぎて入居を続けたい場合でも、一度契約は終了し「再契約」を結ぶことになります。この時、オーナーは家賃の値上げ交渉がしやすくなり、再契約をしないという選択肢も持てるのです。
「どんなに今のオーナーや管理会社と信頼関係が築けていても、突然オーナーが変わる(売却される)こともあります。高齢者が『定期借家契約』で賃貸に住み続ける場合は、この点に注意が必要です」
また「普通借家契約」を結んでいても、建物の老朽化で建て替え工事が必要になるケースがあり、その際にオーナーから「定期借家契約」への変更を求められることも。その時は、フリーレントや引っ越し費用の負担など、オーナーと入居者間で交渉を行うことになります。
「『よくわからないけれど、言われた通りにサインしてしまった』『引っ越し先が見つからず、住み慣れた街を出なければならない』ということがないよう、十分注意してください。契約書はよく読み、分からない点はその場で担当者に質問することが、後々のトラブル防止につながります」
内見〜契約まで 押さえておきたい6つの注意点
実際に家探しに動き出す際の参考として、把握してほしい注意点を渡邉さんに伺いました。
<1.必要書類の事前準備>
「良い物件の契約をスムーズに進めるために、『必要書類を事前に準備しておくこと』をおすすめします。仲介を担当する不動産会社に質問すれば、必要書類は概ね事前に把握できます。よくあるのは、せっかく良い物件に出会えたのに、忙しさを理由に必要書類の準備が間に合わず、他の方に決まってしまうケース。特に仕事、子育て、介護など多忙を極めるミドル世代こそ、早めの準備が肝心です」
<2.内見時の環境チェック>
「マンション・アパートの場合は、管理が行き届いているかを内見時に必ずチェックしましょう。重視すべきはゴミ捨て場。ゴミ捨て場が整理整頓されていない物件は、管理が行き届いていない可能性が高くなります。その他にも郵便受けの安全性、宅配ボックスの機能性、自転車の整理状況なども確認しましょう。
また、できれば内見は2回行うことをおすすめします。1回目は昼間に部屋の中を見るため、2回目はご自身だけで夕方に周辺環境やご近所の様子を確認してください。人の出入りが多い時間帯の様子を知ることは、引っ越し後のトラブル回避にもつながります」
<3.家賃保証>
「現在は連帯保証人ではなく家賃保証会社への加入が必須の物件が多くなっています。クレジットカードの支払い滞納などの記録があると、家賃保証会社の審査が通らないことがあるので注意が必要です。連帯保証人が不要でも『緊急連絡先(一般的には近親者)』が必要になる為、早めに依頼をしておきましょう」
<4.担当者とのコミュニケーション>
「不動産会社の担当者とのコミュニケーションをしっかり取ることも大切です。引っ越しを前にやることが山積みで、精神的にも疲弊し、担当者からの連絡を避けてしまうパターンがよくあります。その背景には、信頼関係がうまく築けていない、何らかのコミュニケーションミスが起きているといった要因が考えられます。
前回の記事でもお伝えしましたが、ご自身の幸せな暮らしに寄り添ってくれる信頼できる不動産会社を見つけることで、困りごとを相談しやすい関係性が構築できるはずです。時間に余裕がある方は、物件探しの前に信頼できる不動産会社探しから始めてみてください」
<5.ペット事情>
「ペットを飼育される方が増えている一方で、ペット可の物件は全体数から考えるとまだまだ少ないのが現状です。特に多頭飼いができる賃貸はさらに限られています。敷金の追加支払いや条件交渉により、初期費用が想定より高くなることも覚えておきましょう」
<6.おまけ:DIY>
「現在の物件にDIYを施している場合は、退去時に原状回復が必要なことを忘れないでください。壁に開けた穴やシミをつけてしまった箇所があれば、退去時清掃費用を徴収される可能性があります。退去時まで金額がわからず、想定以上の額を請求されるケースもよくあります。賃貸物件でDIYを楽しむ際には十分注意してください」
多くの方にとって、1日で最も長く過ごすのが”家”。だからこそ居心地の良い、自分だけの安全な空間として機能してほしいところ。その結果として幸せな暮らしが実現できるのではないでしょうか。
賃貸だからこそ広がる、人生の選択肢
今回はミドル世代のための賃貸住まいについて、渡邉さんにお話を伺いました。
オーナーの所有物を借りる以上、どうしても制約はありますが、賃貸だからこそ得られるメリットも数多く存在します。
身軽に環境を変えられる自由、相続問題からの解放、将来の介護施設への移行のしやすさなど、賃貸という選択肢は、ミドル世代のその先にある様々な人生設計を可能にしてくれます。
住まいの選択には、これからの人生をどう歩むかという根本的な問いが込められています。そうした大切な選択だからこそ、慎重に判断したいもの。ご自身のライフプランとともに、これからの暮らしかたについて、今一度考えてみてはいかがでしょうか。
Profile:渡邉仁見
わたなべ・ひとみ/株式会社パシ・コム代表取締役。公益社団法人 東京都宅地建物取引業協会 第六ブロック 副ブロック長・麻布地区長・レディス部会会長。
1999年、麻布十番にて株式会社パシ・コム設立。不動産の管理、賃貸、売買、仲介、企画事業など幅広くビジネスを展開する。2019年には海外不動産事業を開始。規模の大きな案件も得意とする一方で、「クライアントに満足してもらうこと」=「会社としての最大の利益」と考え、地域に根ざした不動産サービスを提供している。
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