ファストテック
〜まだ使えるデジタル機器が古いというだけで捨てられる
私たちが普段、仕事にプライベートに活用しているPCだが、その裏側では「ファストテック」と呼ばれる深刻な問題が進行している。次々と新しいモデルが登場し、短いサイクルでデバイスが買い替えられて、廃棄されてしまうのだ。まだ十分に使えるはずの製品が「古い」と見なされ、大量の電子廃棄物やCO2排出を生み出し、環境に大きな負荷をかけている。
直近では2025年10月14日に迫るWindows 10のサポート終了がある。この日を境に世界で4億台以上のPCがセキュリティ更新プログラムを受けられなくなるため、旧式のPCを安全に利用することが困難になるというわけだ。
米国の消費者擁護団体PIRGの調査によると、Windows 11にアップデートできないPCを持っている3人に1人以上が買い替えを選択するという結果となっている。見方を変えれば、多くのPCが「使えないもの」として廃棄され、電子廃棄物がさらに増大する事態が発生する可能性があるということだ。
この課題に対し、PCをできるだけ長く活用する、ということを目指しているのが、2014年にフランスで設立された「Back Market(バックマーケット)」だ。スマートフォンやPCなどのリファービッシュ品(整備済製品)を専門に扱う、世界最大級のマーケットプレイスである。
リファービッシュ品という選択肢
リファービッシュ品とは、中古品や初期不良で返品された製品を専門家が検査・修理・クリーニングし、すべての機能が正常に動作することを確認した製品のこと。Back Marketでは独自の厳格な品質基準を設けており、1年間の動作保証と30日間の返金保証を付けて販売することで、一般的な中古品以上の品質と安心を提供している。もちろん、価格も新品よりも大幅に安い。
このリファービッシュ品には「環境負荷が低い」というメリットもある。フランス環境エネルギー管理庁の調査によれば、リファービッシュ品は新品と比較して、製造に必要な資源や水の消費量、CO2排出量、電子廃棄物の発生量を9割以上も削減できるそうだ。ひとつの製品を長く使い続けることが、いかに環境保護に貢献するかが分かるだろう。
旧式PCの逆襲(Obsolete Computer)という提案
Back Marketは、来るWindows 10サポート終了によるPCの大量廃棄に対し、「旧式PCの逆襲(Obsolete Computer)」と名付けた解決策を提案している。それは、OSのサポートが終了してしまったWindows PCを廃棄するのではなく、「Linux」やGoogleが提供する「ChromeOS Flex」など、別のOSに変えて再活用しようという提案だ。
特にChromeOS Flexはシンプルな操作性と軽快な動作が特徴だ。比較的性能の低い古いPCでも快適に動作するように設計されているが、ウェブの閲覧や書類作成、動画視聴といった日常的な作業であれば、問題なくこなすことができる。つまり、本来捨てられるはずだったPCに新しい命を吹き込み、再び活躍の場を与えることができるわけだ。














