「適応型リーダーシップ」と「チームワークマネジメント」が一致するポイント

【本日発売】「Backlog活用大全」出版記念イベントで“新しいリーダーシップ”を議論

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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チームをワークさせるためにあるべき「リーダーシップ」の姿を議論

ヌーラボ 代表取締役の橋本正徳氏(左)、こっから 代表社員/Learner's Learner 代表取締役の黒川公晴氏

 トークセッションでは、ゲストに合同会社こっから 代表の黒川公晴氏を招き、ヌーラボ代表の橋本正徳氏と「リーダーシップ」と「チームワークマネジメント」をめぐる議論が行われた。黒川氏は、米国ミネルバ大学とのパートナーシップを通じて、日本の企業リーダー向けに「適応型リーダーシップ研修」を展開しており、橋本氏はその講師の一員を務めている。

 トークは4つのテーマ「リーダーシップの再定義」「チームにおける多様性と心理的安全性」「リーダーシップの実践」「チームを前進させる仕組みづくり」に沿って、およそ1時間にわたって行われた。以下、その概要をまとめる。

リーダーシップの再定義:変化に適応しながら、チームに前向きな影響力を及ぼす

 ミネルバ式研修が教える「適応型リーダーシップ」とは、刻々と変化する状況に合わせて自分の意識や行動を変化させながら(=適応型)、チームの前進に対して及ぼす前向きな影響力(=リーダーシップ)と定義されている。なお、ここでいうリーダーシップとは、チームのリーダー役だけではなく「チームの全員が発揮すべき影響力」とされている点も重要だ。

 リーダーシップの必要性は自明だが、なぜとりわけ「適応型の」リーダーシップが求められるのか。黒川氏はその背景を「ビジネスを取り巻く物事が複雑になっているから」と説明する。何らかの現象に対して1つの原因を特定できない複雑さ(動的複雑性)、関係を持つ人の考え方や属性が多様化する複雑さ(社会的複雑性)、結果が予測できる構造が失われる複雑さ(生成的複雑性)といった具合に、多方面で複雑さを増しているがゆえに、「自分のリーダーシップスタイルを変幻自在に変えてリーダーシップを発揮しなければならない」(黒川氏)という。

 橋本氏も、2004年にヌーラボを創業し、経営してきた自身の経験から「場面場面でリーダーシップの取り方を変えていかなければならない」という考え方はうなずけると語る。「経営者的には“性格のチェンジ”もしていかないといけない。創業時の僕と、いまの僕と、これからの僕は、おそらく全部性格が違うはず」(橋本氏)。

ヌーラボ 橋本氏

チームの多様性と心理的安全性:問題解決を早める「認知的多様性」の力

 ヌーラボでは企業としてメンバーの多様性を重視しているが、橋本氏によれば、それはまず「顧客側の多様性」から始まったものだという。創業当初、受託開発ビジネスを行っていたときの発注者は「40代、50代の男性ばかり」だったが、BacklogやCacooをリリースしたことで、顧客層が一気に女性や海外にも広がった。「急いでこっち(社内)も多様性を上げていかないと、お客さんに付いていけなくなる」と考え、多様性重視の方針をとるようになったのだという。

 黒川氏は、チームが多様性を持つことで「問題解決が早くなる」という調査結果があると応えた。なおここでは、人種やジェンダーといった属性の多様性よりむしろ、考え方や問題解決のアプローチといった「認知的多様性」が大事だという。したがって「自社には多様性がない」と考えている会社でも、実は「多様性は確実に存在している」(黒川氏)。

 この認知的多様性を維持するために必要なのが「心理的安全性」だ。黒川氏はまず、心理的安全性が損なわれるのは“4つの不安”(=無知と思われる不安、無能と思われる不安、邪魔していると思われる不安、ネガティブだと思われる不安)が原因だと説明する。そのうえで、不安を取り除くには、リーダー役が率先して失敗談を語る、ネガティブな批判をもらいにいくなど、「自らをさらけ出すことだ」とアドバイスする。この言葉に、橋本氏も「リーダーは自己開示がちゃんとできないといけない」と同意した。

こっから 黒川氏

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