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アジアでは初披露、Focal Professional20年のノウハウが詰まったスタジオモニター「Utopia Main」を聴いた!

2025年09月26日 16時00分更新

文● ASCII

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単価は金の30倍、振動板に理想的な素材ベリリウムとは?

 Utopia Mainは、FOCALならではの技術が積極的に取り入れられたシリーズだ。例えば、ツィーターに用いられたベリリウム振動板、その後部を解放して不要な振動を防ぐIAL(Infinity Acoustic Load)構造、特徴的なMシェイプの振動板形状、共振を制御するためにエッジの部分に採用したTMD(Tuned Mass Damper)、シミュレーションと計測によって実現した堅牢なキャビネット、周波数帯や気温など外部的な要因によって変化するインピーダンスの影響を受けにくいClass H/電流制御型のアンプなどだ。

1.5インチ口径のベリリウム振動板を採用したツィーター部。ベリリウムは地球上ではダイヤモンドについで2番目に硬い金属でアルミの7倍の剛性を持つ。価格は金の30〜50倍にもなる。これを21μmと薄く加工して使用している。中央がくぼんだMシェイプ(逆ドーム)形状も特徴的だ。外側に飛び出す通常のドーム型よりも指向性が広い。

裏側から見たところ。背後が伸びているほか、後ろを解放して不要な振動が前に出てこないようにするIALの仕組みが採用されている。また、Mシェイプの振動板はボイスコイルの口径を大きくできるというメリットも持つという。1ユニットで125dB SPLの音圧が出せる。

ミッドレンジユニット。Mシェイプの振動板となっているが、ここも開発に時間がかかったところだという。通常のコーンは深さが必要になるが、これを3つに折り曲げて剛性を確保。平面振動板のように指向性が広く、かつショートストロークの正確なピストンモーションが可能になるという。結果、ポイントソースのような理想的な広がりが得られる。ツィーターとのつながりも良好だという。

背面は開放してフラットな特性が得られるようにしている。

ミッドレンジのエッジ部分。振幅するドライバーの周囲で使うサスペンションの役割を果たすが、エッジに負荷をかけることで変形を抑え、ダンピング効果を出している。

写真のシミュレーションのように変形が少なく高いダンピング効果が得られる。安定した動作が可能だ。

TMDはツィーターにも用いられている。

MDFで作られたキャビネットは剛性が非常に高く、フロントバッフルの厚さは50mmあるという(側面は30mm)。かつ268箇所にマーキングして状態を計測しているという。

キャビネットの内部にはプレーシング補強や共振を防止するための筒(レゾネーター)なども用意されている。

バスレフポートは先がふくらんだフレア形状で、気流の乱れ(ポートノイズ)が発生しにくい。高い音圧で動作させた際に効果的だ。なお、ポートは閉じることもでき、その場合もアンプ側の調整で適切な特性に追い込める。

アンプのトップパネル。アナログで非常に細かな設定が可能となっている。2系統のパラメトリックEQ、全ドライバーのボリューム調整、ローシェルフ/ハイシェルフの調整、ソフィット補正フィルター、ポート補正フィルター(バスレフ/密閉の切り替え)など、細かな調整にも対応している。

 いずれも物理的な特性やアナログ的な素性の良さにこだわるFOCALの思想が色濃く盛り込まれた技術となっている。歪みや共振などスピーカーの音を曇らせる要素を徹底的に排除したいという意志を感じさせるものだ。

 さらにUtopia Mainではプロトタイプの完成後、すぐに市場投入はせず、制作現場において2年と長期の検証を経て投入された製品だという。Blackbirdスタジオで、グラミー賞などを受賞した著名エンジニア11名が評価し、最終調整のうえ完成した製品だ。

様々な技術要素が盛り込まれて、モニターに必要な正確な音、聴きやすい音が実現できた。

 ミキサー卓の前に座って、実際にサウンドを聞いてみたが、ラージモニターらしい深い低域の再現に加えて、中域の解像感が高く抜けのいいサウンド、聞き疲れしにくそうなナチュラルで付帯音のない高域の表現など、モニタースピーカーに求められる様々な要素が高い水準で調和したものに感じられた。

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