発売日を迎えたiPhone
その裏側には当然それを製造している工場がある
今年も新しいiPhoneが発売された。
iPhoneはアップルが開発・販売しているのは言わずもがなだが、iPhoneの製造拠点としてよく知られているのが中国・河南省の省都、鄭州の空港近くにあるフォックスコン(ホンハイ)の工場だ。
最盛期には、世界のiPhone生産量のほぼ半分がこの鄭州工場で生産されていたという。鄭州という都市は日本ではさほどなじみがないかもしれないが、三国志にも出てくる「中原」と呼ばれるところで、中国の歴史では紀元前16世紀にできた王朝「殷」の都があった。
話は戻って、TechInsightsのアナリストによると、中国で1台のiPhoneを組み立てる際の人件費は30ドル程度と試算される一方、米国では10倍の300ドルはかかるのだとされる。インドでもiPhoneの量産は進められているが、サプライチェーンが未熟だったり全体的な技術が成熟していなかったりで、諸コストを含めると中国・鄭州製の方がトータルでは安上がりだとの計算もある。
ガジェット系メディアでは各種リーク情報やスマホケースから次期iPhoneの姿が噂されるが、フォックスコンの求人からも予想ができる。iPhone 17でも鄭州工場では大量の人員を集める大きな動きがあった。今年もさまざまな報道があったのでまとめて紹介したい。
普段はラインが縮小されており
iPhoneの発売日に向けて10万人単位の労働者が集められる
フォックスコンではAppleからの依頼があるまでは、大量生産できる体制は持たず、発売時期に合わせて構築していく。鄭州工場では最新モデルの前は旧モデルを量産しているが、徐々にラインを小規模化。そして、新機種発売のタイミングに合わせて生産ラインを段階的に増やすために、10万人単位の人海戦術で労働者を集める。
報道によると、5月にフォックスコンの深セン工場がiPhone 17シリーズの量産テストを実施したという。そして7月に入り、鄭州工場が5つの生産ラインで、9月には28ライン体制で量産。この「テスト」「量産立ち上げ」「量産の急速な拡張」という3段階のプロセスは、Appleの厳格な「エンジニアリング検証」「設計検証」「量産確認」のプロセスとシームレスに連携しているとのこと。
ライン長の黄氏は、資材管理だけでも200社以上のサプライヤーとの調整が必要であり、在庫管理と動的調整から、部品の在庫回転率は7日以内に維持されているとコメントしている。
猛烈な勢いで稼働しているのはフォックスコンだけではない。サプライチェーンを構成する他メーカーも、全力を尽くしている。東莞のある工場は、近隣の工場よりも高い賃金を支払い、労働者に食事や宿泊も提供し、フル稼働で新型iPhoneの部品を生産する。
発売1ヵ月前あたりから、生産ラインを突如何倍にもするということは、それ相応の労働者が必要となる。この人海戦術ができるのがさすがは中国で、相当に高い工賃を出すことで何十万人もの工場労働者を呼び寄せているのだ。
「The Dilemma of Foxconn Moms: Social Reproduction and the Rise of ‘Gig Manufacturing’ in China(フォックスコンで働く子育て母のジレンマ)」という2022年の論文では、そうした労働者は中国全土からではなく、河南省内だけで集めるのだという。河南省政府が工場を招致し、労働者を集める手段も提供しているということもあるが、魅力的な工賃がチャイニーズドリームとなって労働者を引き寄せる。

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