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違法でも続く命がけの下水道作業、インドはロボットで解決できるか

2025年08月28日 06時49分更新

文● Hamaad Habibullah

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COURTESY of GENROBOTICS

画像クレジット:COURTESY of GENROBOTICS

法律で禁止されているにもかかわらず、インドでは下水道での危険な人力作業が続いている。ロボットによる置き換えで問題は解決できるだろうか。

ニューデリーで暮らすジテンダーがまだ幼い頃、彼の両親は衛生作業員として働いていた。都市の下水道から固形廃棄物を手作業で取り除く仕事である。現在、ジテンダーは、デリー政府がこの人力作業からより安全な機械的手法へと転換する取り組みに関与する、約200人の請負業者の一人として働く。

トイレや下水道、浄化槽から人間の排泄物を手作業で除去する「マニュアル・スカベンジング(manual scavenging)」は、1993年から法律で禁止されているにもかかわらず、インド全土で依然として広く行なわれている。この作業は、指定カースト(Scheduled Castes)またはダリット(Dalits)として知られる、最下層のカーストに属するとされる人々によって担われるのが一般的だ。尊厳を損なうだけでなく、極めて危険な仕事でもある。詰まった下水道に入って清掃する衛生作業員は、アンモニアやメタンなどの有毒ガスへの曝露により窒息するリスクに直面する。インド議会で提示されたデータによれば、マニュアル・スカベンジングによって2018年から2023年の間に500人以上が死亡している。

技術の難しさや仕組みに違いはあるが、手作業に代わる新しい方法を提案する企業がいくつか現れてきている。例えば、ケーララ州に拠点を置くジェンロボティクス(Genrobotics)は、「バンディクート・ロボット(Bandicoot Robot)」という、ロボット脚、暗視カメラ、有毒ガス検知機能を備えた機械式清掃ロボットを開発した(上の写真)。チェンナイのインド工科大学の研究者たちは、汚泥を吸引する機構を備えた浄化槽用ロボットを開発している。

ジェンロボティクスのマーケティング・コミュニケーション責任者であるビピン・ゴビンドによると、インド国内で220台以上のバンディクート・ロボットが配備されているという。同社の展開により、「資源に制約のある自治体でも」この技術を効果的に導入できるようになったとゴビンドは説明する。

これらの技術的選択肢があるにもかかわらず、インドの社会正義エンパワーメント省による2021年の報告書では、インド全土には依然として5万8000人以上の手作業の衛生作業員が存在することが示されている。独立系の観測筋によれば、実際の数はさらに多いという。

ジテンダーが使用している機械はピックアップ・トラックに搭載されており、回転棒、高圧水流、機械式クローを使って詰まりを破砕し、ゴミを除去する。「以前は清掃員が下水道に入り、何らかの機器を使ってドレンを清掃していましたが、今ではこの機械のノズルをドレンに挿入してポンプを作動させるだけで済みます」とジテンダーは言う。だが、同じデリーの取り組みに参加しているビジャイ・シェフリヤールは、これらの機械が市内の手作業による清掃を完全に置き換えたわけではないと話す。「特に狭い路地では、多くの場所で依然として手作業による処理がされています」。

手作業による汚物処理の根絶を長年訴えてきた活動家のベズワダ・ウィルソンは、全国の排水・下水システムの大部分が十分な計画や工学的監督なしに建設されてきたと指摘する。いかなる解決策もこうしたインフラの違いをすべて考慮に入れる必要があるといい、「その構造の特性を理解することなく、代替案を作って排水システムに無理に押し付けるべきではありません」と話す。

ハマード・ハビブラーはニューデリーを拠点とするフリーランス・ジャーナリスト。

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