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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第349回

ドローン宅配、アメリカで急拡大へ 日本との差鮮明に

2025年08月19日 07時00分更新

文● 小島寛明

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 米政府は、ドローンを使った商用の配達を一気に加速させる考えのようだ。

 米連邦航空局が2025年8月5日、人間の目で確認できない範囲をドローンが飛行できるよう規制を緩和する政策を発表した。これまで、操縦者の目に見える範囲の外でドローンを飛ばすには、航空局から個別に「特別承認」を受ける必要があり、手続きに時間がかかっていた。

 しかし、機体と荷物を合わせた重量が110ポンド(約50kg)以下の場合は、「小規模」の配送として、手続きを簡略化する。この規制緩和は2026年以降に施行される見通しだ。ドローン配送は米国でも、規制緩和の遅れから足踏み状態にあると指摘されていたが、今回の規制緩和をきっかけに、とくに人口密度の低い郊外の都市で、ドローン配送が一気に拡大する可能性がある。

 ドローン配送で先行するウォルマートは18店舗でドローン配送を提供しているが、2026年に約100店舗に拡大する計画だ。一方、日本のドローン配送の現状を見ると、まだ実証実験段階のサービスが多く、実装に至っているサービスは限定的だ。

ウォルマートは100店舗にドローン配送拡大

 ウォルマートは現在、テキサス州のダラス・フォートワース地域とアーカンソー州北西部でドローン配送を提供している。規制緩和前の制度で、同地域におけるドローン配送の「特別承認」を受けているため、時間と手間のかかる手続きを乗り越えて、サービスの提供にこぎつけたことになる。

 ウォルマートは、配送にかかる時間はオーダーから配達まで「最短で30分」と説明している。費用は、ウォルマートの会員の場合は無料、非会員の場合は1オーダーあたり19.99ドル(約3000円)がかかる。

 ドローン配送の運用を担うのは、アルファベット(グーグルの親会社)傘下のWingという企業だ。YouTubeに公開されているWingの動画を確認すると、ウォルマートの店舗脇にドローンの駐機場が設置されている。オーダーが入ると、ドローンは商品の入った箱をぶら下げて飛んでいく。配達先に到着すると、ドローンは空中に浮かんだまま、箱をぶら下げたひもをゆっくり下ろし、注文者の自宅の庭や玄関先に商品を届けてくれる。

 ウォルマートの公表資料によれば、同社は2021年以降、15万件以上のドローン配送を実施してきたという。2025年6月5日には、ドローン配送のサービスを、ジョージア州アトランタ、テキサス州ヒューストンなどの地域の約100店舗に拡大する計画を発表している。

 ウォルマートのドローン配送の事故の発生状況について調べてみると、機体のトラブルでドローンが木の上に緊急着陸したといった事故は起こっているようだが、人身事故については見つからなかった。

 むしろ、フロリダ州で、ウォルマートのドローンが住人の男の拳銃で撃ち落とされた事件が出てきた。騒音については、ウォルマートは「平均的な配送用のトラックより静かだ」と説明している。

都市部のドローン配送実現は困難

 アマゾンはドローン配送に対してより慎重な立ち位置に見える。テキサス州とアリゾナ州の一部地域で、ドローン配送を実施しているが、現時点では、実証実験に近い。このため、米国でのドローン配送は、まだまだ一部の企業が一部の地域で実施しているサービスにとどまっている。

 今回の規制緩和は、ドローン配送の普及を一気に進める狙いがあると考えられる。ただし、人口密度に応じて規制が厳しくなる制度で、都市部については、ドローン配送の実現は引き続き、難しそうだ。

 若干疑問なのはドローン配送の現実的な需要だ。ウォルマートのサービスを見る限り、基本的には、少量の買い物を想定しているようだ。今、どうしてもマヨネーズが必要という場合は、とてもありがたいサービスだろう。しかし、買い物に行く時間がないので、1週間分の食料をネットスーパーに注文するといったサービスにはドローンは使われない。配送する荷物が重すぎるのだ。あくまでも、メインの需要はまとまった買い物であって、急ぎの配送需要はどのくらいあるのだろうか。

日本では人口減少地域で静かに導入

 日本では、人口減少地域でドローン配送の利用が静かに進んでいる。例えば、山梨県小菅村の事例だ。小菅村の人口は2024年4月末の時点で619人と、人口減少と高齢化が目立つ。山間部に高齢者が暮らすとなると、買い物が大変そうだ。内閣府が公表している2022年の資料によれば、村内に商店が2店舗あるという。

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