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Qobuzを聴くならこだわりたい、再生機器と再生環境 第2回

ネットワークのノイズ対策がマニアの間で話題になっているらしい

2025年08月02日 17時01分更新

文● ASCII 試聴コメント●麻倉怜士

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トップウィングの「OPT ISO BOX」

 ノイズフィルターにはEE1とはまた異なる方式の製品も存在する。トップウィングが販売している「OPT ISO BOX」は途中で光信号に変換することで、LANで入力した信号と同じくLANに出力する信号をアイソレート。ネットワークから混入するノイズの悪影響を排除する仕組みのアクセサリーだ。

OPT ISO BOX

麻倉 「ハブとプレーヤーの間に入れるノイズフィルターという働きは同じですが、音は全く違いますね。EE1ははっきりくっきりの元気系。OPT ISO BOXは質感を付与し、より粒だちが細かくなる印象です。Cheek to Cheekの再現も音の透明感が上がって緻密になります。エッジとか低音がはっきりとして元気なEE1の音に対して、中音の質感が心地好くなります。『パワーというよりも質感でいく』という感じの傾向です。この雰囲気は「道化師の朝の歌」には寄り添っていると思います。音場の雰囲気、緻密な質感はありますが、でも爆発的なエネルギー感はいまひとつ。その意味では、対照的な2製品と言えますが、室内学的な優しさを求めるのならOPT ISO BOX、ロックならEE1になるでしょう。ここではEE1を採用していくことにします」

写真のようにネットワークケーブルの間に挟んで使用する。

DELA S100+光接続オプション

 ノイズフィルターに加え、ハブの変更による音の変化についても試してみた。8 SwitchをDELAの「S100」に変更。さらにオプションを追加してSFP接続などに変換、信号に乗るノイズをアイソレートする効果を聴いてみる。

DELA S100

麻倉 「まずハブをDELA S100に替えます。低音がしっかりして、ピラミッドバランス的なしっかりとした低音を感じ取れますね。Cheek to Cheekはベースとピアノから始まりますが、ベースの輪郭感が増して、しっかりとリズムを刻みながら前に進む進行力、前進するパワーがあります。音の剛性感が高く、粒子がくっきりとして、力のある音の粒子が連発銃のように前に打ち出されてくるかのようです。明確で明瞭な音だと思います。「道化師の朝の歌」もピラミッド的な安定感という意味では同様です。最初のピチカートの低音が安定していますし、オーボエの音のくっきりさ、明確さもいいです。Tuttiではマッシブな感じで塊というよりは、中身が見える解像感がありました。お化粧で綺麗にするというよりは素肌から若々しくなったようなビビッドさです」

 これに光接続オプションを追加するとどうなるか。

SFP端子などを利用してノイズをアイソレートする光接続オプション。

麻倉 「これにオプションを追加することでさらに質感が細やかになり、より感情がついてき、ニュアンス感がより細かく出てくるようになりました。ベースも一様に音が鳴るのではなく、膨らみがあってタイトになる、時間の経過による変化を感じ取れるようになります。ピアノの音も高級感を持ちますね。「道化師の朝の歌」では、臨場感に関する音情報がよく出てきて、音場の見晴らしが透明です。質感も透き通り、清涼感が出る印象です。力を持ちながら、より細かい音になりましたね」

組み合わせたところ。

EDISCREATION「SILENT SWITCH SWITCH OCXO 2 JPSM」

 オーディオ専用ハブとしてはもう1ブランド。タクトシュタットが取り扱うEDISCREATIONの「SILENT SWITCH OCXO 2 JPSM」と「SILENT SWITCH OCXO 2 JPEM」が人気だ。評価はスタンダード型(JPSM)で実施した。この製品が面白いのは、LANのアースを切るか入れるかの設定ができる点だ。入力と出力にスイッチがあり、それぞれのオン/オフが可能であるため、入力/出力の違いで4パターン変化を楽しむことができる。

SILENT SWITCH OCXO 2 JPSM(右)とFiber box 3(左)

 ①入/入(普通のハブの動作)、②入/切、③切/入、④切/切のそれぞれの設定で試聴してもらった。

麻倉 「アースをオン/オフするスイッチがそれぞれの端子に付いています。入切は入口と出口でそれぞれ指定できるので、合計で4種類の設定が選べることになります。総合的に見るとどれもいいのですが、ニュアンスの違いが出てきます。

①は、くっきり感があり、解像感があって、ボーカルの力感もあって艶がある。これはこれでいいと思える音です。

②は、すっきりとして力感があります。少し粗いが、元気につながる。決して、悪くはない音です。

③は、とてもすっきりとして音の表面の質感がスムーズに感じます。ボーカルは明確だけど若干硬さもあります。明瞭なくっきり感がいいです。

④も、良かったですね。前奏は少し粗いが、ボーカルが美しくて生々しい。Heavenという発音がいいです。

 ここでは最後の設定を採用したいと思います。Cheek to Cheekでは解像感が高く、明瞭で、力感も備わっていて、音楽的なエネルギーも備わっており、素晴らしいと思いました。この分野の開拓者ならではの自信を持った表現ですね。剛性があって、パワーもあるけど、細かいところの質感も優れています。ピアノの立ち方がクリアでシャープ。ベースののびのびとした迫力感や進行力。ボーカルの表現力も抜群に良かったです。「道化師の朝の歌」は、音場の中での抜け感がいいですね。音が際立っています。天井が高く、角度が急ですし、粒立ち感なども良い。Tuttiも塊感がありつつ分解能が優れています」

 これに光変換を使ったノイズフィルターを追加し、同期を取る。上流を光でアイソレート、ルーターとハブの間にFiber BOX 3を追加している。

麻倉 「ルーターとハブの間にFiber box 3を追加しました。ハブ自身の性能が高いので、その音楽性を上げたというか、より細かいところに耳がいくようになります。一般に同じデジタル信号でも間に光を入れると、音が優しくなるというイメージを持っている人が多いかもしれませんが、実際に聴いてみると、元気注入棒で叩いたみたいに、解像度が上がるし、元気も上がるし、表現力が緻密になりました。一言で言うと音楽的な力をつけたというか、音がゴージャスになった感じですね。「道化師の朝の歌」では、ダイナミックレンジが拡大し、細かなディテールが際立つようになりました。急な音の盛り上がりも鋭角に音が強弱を伴って出ます。Tuttiでの彩度感やくっきり感が上がる。音楽に生命力が加わったと言ってもいいでしょう」

 さらにクロックシンクを追加。Fiberboxのクロックをマスターにする。クロック同期(光のアイソレーションボックスとスイッチのクロックが同期)することでさらに音の正確性が上がる効果が出るようだ。

麻倉 「今までもすごく良かったが、Cheek to Cheekではベールがまた剥がれたようなクリアさというか、見渡しの良さ、透明感がありました。音楽を進行させるパワーがあります。『時間軸パワー』があるというか、全てのエッジとディティールに生命感が与えられる感覚ですね。ピアノも重音が透明で、1音1音が手に取るようにわかります。ボーカルも自信を持って朗々と歌っています。道化師の朝の歌も色彩感がありました。楽曲そのものがスペインの色彩感をテーマにしたものですが、音の彩度が上がり、カスタネットも明瞭に前に出てきました。ここまでくると少し次元の違う音になったと感じますね」

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